第19話 vs音毒竜

 ここは龍治院4F、1の部屋の前にいる、紫色の竜、音毒おんどく竜シオンと火龍ひりゅうラヴァは対峙していた。


 シオンは手に紫色の鋭い刃が付いている音弓おんきゅうの様なものを持ち。不気味な音を放っている。


「"毒"? 何のこと言ってんだてめぇ……」


 ラヴァは顔をしかめて言った。


「まぁ"毒"といってもはないわ、あなた『時炎怒ジエンド』」の使い手ね?


 ラヴァは驚いた。

「何でてめぇ知ってんだ? 」


 シオンは微笑し言葉を返す。


「森で見たわ、あなたと少女が使


 ラヴァはパッと閃いたような顔をした。


「あっ、そうか、てめぇも時炎怒ジエンドを教えてもらいたいってことか? 」


 シオンは再び微笑する。


「そうね、教えてもらいたいわね……あなた面白いわね、名前は? 」


「ラヴァだ.......よろしく! 」


 ラヴァは右手を差し出した。

 シオンは差し出されたラヴァの右手を少し不思議そうにみて言った。


「あぁ……ーーいいわよ。」


 シオンは右手に握っていた紫色の鋭い刃の音弓で右手目掛けて斬りかかる。

 ラヴァはそれに反応して後ろ5歩程度の距離を跳び避ける。


「何だよ、やる気かぁ? 」


 ラヴァは少しシオンを睨みつけた。ラヴァの目は燃えるように赤く真紅に染まっていた。


「えぇ、あなたが持つ竜技は"三重みえ美芸びげいが危険視している、あなたは今から私に確保されるのよ 」


「はぁ?」


 ラヴァは少しだけ息を吐いた。火花がラヴァの口から空気に散っていく。


「嫌だね、何で俺、確保されないといけないんだよ?」


 シオンは冷たく言った。

「えぇ、断るならいいわ、抹殺するから 」


 シオンはラヴァに紫色の音弓を構え迫ってきた。


「まじで言ってんのかてめぇ! 」


 シオンは跳び上がりラヴァの真上から音弓を振り下ろした。


時炎怒ジエンドォ!」


 ラヴァは炎の刃を発生させシオンの斬撃を受けた。

 火花が激しく散っていく、途端に時炎怒ジエンドの炎は激しく燃え上がる……ラヴァは鍔迫り合いに打ち勝ちシオンを弾き飛ばす。


 弾き飛ばされたシオンは後ろ宙回転をし体制を立て直す。


「やはり!……あなたの竜技は恐らく、竜技による能力を"無効"にする"力"!……私の"毒"が一瞬にして燃え消えた」


「当たってるぜ、俺の竜技りゅうぎは燃える剣じゃない、

 "力"がある剣だ! 」


(ん? なんだかこいつ、自分の能力のこと分かってないみたいだわ......)


「……一筋縄じゃいかないみたいね、全力でいかないと......"4弦目"を解放する。」


 シオンは左手の平を何もない空気にかざす、その直後、赤色の弦の糸を4本発現させた。

 それを右手の紫色の弓でいた。


 不気味な音色が響きわたる。


培音輪バイオリン! 」


 ラヴァは咄嗟に耳を塞いだ。


「勘がいいわね……でも"音は空気の振動"……耳で感じずとも肌に振動が伝わるだけで私の"毒"は回り始める。」


「この! 」


 ラヴァは間合いを素早く詰めシオンに横一閃に斬りかかる。シオンは培音輪バイオリンで受ける。


 時炎怒ジエンドの炎が先程より弱まっていた。


「くっ!」


(何でだ!? 炎が弱まって!)


 シオンはラヴァの刃を弾き蹴りを繰り出す。蹴りはラヴァの腹部に直撃しラヴァは勢いよく吹き飛ばされ、地面に倒れた。


「私の"毒"に回り始めたら"竜技も弱まる"、それと"体重も軽くなる"わ、私の"毒"には殺傷能力はないわ……でも」


 シオンは冷たい白い瞳の中に紫色の輝きを放ち言った。


「"毒"が回り"今"のあなたなら蹴り飛ばすだけで殺せるわね……」


「て、めぇ......」


 体の所々に傷がついたラヴァは立ち上がり、息を荒げながら時炎怒ジエンドを発動した。刃の炎は弱まり煙を放ち今にも消えそうになっている。


(じ......時炎怒ジエンドが.......消えそうだ.......あと1回振れれば……あいつを......)


「ふふ、そろそろ詰めね.......」


 その時、シオンは聞き慣れたような音が聞こえた気がした。

(何の音だ? 私じゃない......)


 この時シオンは気づいていなかった4Fの西側にある1の部屋、その反対側の東側の奥にある6の部屋の"ドア"が開いていた事に。


 しかし仕方のない事だった。


 なぜなら"ドアを開ける音もせず"、"姿もみえず"、"足音も立てず"、"近づいて来ていた"のだから。


 シオンは音も無く1の部屋に叩きつけられその"衝撃"はシオンを部屋の奥まで吹き飛ばした。


 ラヴァは1の部屋の前に突如現れた岩龍がんりゅうと茶髪に赤毛の混ざった少女を見て安堵した。


 2人は岩で生成された刃、砕練刀サイレントを構えていた。


「……助かったぜ!わりぃな、リィラ、ログ」


「ラヴァ! こいつは追っ手なの?」リィラは聞く。


「そうかもな、俺も狙われてるみたいだ 」


「えっ? ログを狙いに来たんじゃぁ!?」


 その時後ろから声をかけられた。


「あなた達! 大丈夫? 」

 青い髪をした大人の女性だった。

「ロウラさん、ここは危ないです! 」


「えぇ見てたわ、ごめんなさい......私がここに"案内してしまった"」


 ロウラは言葉を続ける。


「みんな、ここから逃げるのよ、他にもだれか来る可能性はない? 」


 リィラは言った。

「ある! 右砲竜うほうりゅうフォーコ! あいつが来てるかもしれない」


「来たとしても、俺が倒す!」ラヴァは炎の勢いが元に戻った時炎怒ジエンドを肩に担ぎ言った。


「ええっ……それと5Fの16号室にセレンとエンジュがいたと思う……私、呼んでくる 」


 セレンとは青い髪に緑色の髪が混ざったリィラと同い年くらいの少女である。エンジュはセレンの竜技の師、青龍せいりゅうである。


(セレンとエンジュまだいたんだ! )


 ロウラは5Fの階段を走って登っていく。

「ちょっと待って! ロウラさん1人じゃ危ないわ!」


 リィラはロウラを追いかける。

「ログ、俺達も追いかけようぜ! 」


「......あぁ!」


 その時、階段にとげが刺さり爆発を起こした。

 階段は崩れさり、登る事は不可能になった。


「ロウラ! 階段が! 」


「そんなっ!」


「ラヴァ!! ログ!! 」


 リィラとロウラは階段下を振り返った。

 ラヴァとログは爆発には巻き込まれなかったようだった。


「よかった、無事ね! 」


 ラヴァは言った。


「リィラ! 俺とログはフォーコを追う! 今さっき奴が右裁榴ミサイルを打って下の階に逃げた」


「もう、フォーコが.......分かった!私もセレンとエンジュを連れ出して反対側の階段から降りてくるから! 」


「あぁ! 頼んだぜ! 」


 ロウラとリィラは5Fへと急ぐ。

 岩龍がんりゅうログと火龍ひりゅうラヴァは3Fへと向かう。

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