第22話追放50日目の出来事

(我の神罰はこれで終わった。

 王家や貴族士族の大半は滅ぼした。

 生き残っている者達は平民とする。

 新たな契約をして、アリスを建国王とする。

 少しでも逆らう者は絶対に許さない。

 逆らった者は今回以上の神罰を与える。

 絶対に逆らうな!

 それと、アリスの名を騙って悪事を働く者は絶対に許さぬ!

 今迄のようにゆっくりと神罰を下したりはしない。

 即座に殺し、人間の心を持ったまま虫や鼠に変えてくれる。

 未来永劫、何度死んでも人間の心を持ったま虫か鼠に変えてやる)


 月神テーベはなりふり構わなかった。

 生き残った全ての民に、強烈な脅しをかけた。

 絶対に二度とアリスを傷つけさせない決意に満ちていた。

 そのために、普通の神なら絶対に嫌う、人間の姿でこの世界に留まる事さえした。

 

 一方アリスは、月神テーベに恥ずかしくない生き方をしようとした。

 建国の女王として、率先して政務を行おうとした。

 だが、月神テーベの溺愛が、それを許さなかった。

 テーベはアリス以外の人間には正体を隠して、王配となった。

 王配として摂政として、全ての政務を肩代わりした。


 神の力を遺憾なく発揮して、本当に清廉潔白な人間だけを重臣に登用した。

 まあ、神罰当初には、小汚い人間は誰一人生き残っていなかったから、誰を登用しても大丈夫ではあるのだが、その中でも特に心映えのよい人間、将来産まれてくる子孫も賢明で正直だと思われる人間を選んだ。


 数百年もすれば、いや、数十年でまた人間が堕落するのは分かっていたが、アリスと自分との間に生まれた子供や孫が生きている間は平和であってほしかった。

 もっとも、二人の間に生まれた子供は半神であり、孫も四分の一のクォーター神、曾孫は八分の一のワンエイス神になる。


 もっとも、テーベの血を引いた半神ならば、並の神以上の力があるので、神と契る事も可能だし、神として振舞う事も可能だった。

 それに、古い時代には神と人間の交わりは普通にあったのだ。

 だからこそ神力に大きな差もあるのだ。

 テーベの中では、アリスと結婚することも子供を作ることも、禁忌ではなかった。


 アリスとテーベは幸せに暮らした。

 神力を使い、アリスの人間としての寿命を三百歳まで引き延ばし、二百歳の頃にアリスを眷属として神の世界に戻り、人の世界との関係を断った。

 二人は神の世界で永遠の愛の生活を営んでいる。


 新たな月神は、力の半減する二人の子供ではなく、神性と神力が近い別の神が担い、百人の子供達は神となる者と王族となる者に分かれた。

 だがその話はまた別の物語で。

 

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