第10話
「……ごめん、待たせちゃって」
「ううん、大丈夫。気にしてないよ」
私が校舎裏に行くと、そこには既に白沢さんがいた。……やっぱり、あの笑顔を見ると否応なく昂ぶってしまう。
早く言わなくちゃ、とは思うものの、言葉が出てこない。口を開いても「あ」だの「う」だの意味のない音が出るだけだ。
そうして何分が立っただろう。
「……優奈ちゃん?」
不意に、名前を呼ばれた。その声ですら脳髄に響く。
「あんまり、無理しちゃだめだよ?」
――何かが切れた。
「――ッ!」
「ふぇ? え、うえぇっ!?」
愛華ちゃんに駆けよって、思いきり抱き締めた。強く、絶対に離さないってぐらい強く。
愛華ちゃんの柔らかい肌の感触が、温もりが、直に伝わってくる。それは、ずっとこのままでいたいと本気で思うぐらい心地よいものだった。
「……私、愛華ちゃんの事が好きなんだ」
私はこのまま勢いに任せて、一気に告白した。
「あの時私の事を助けてくれてからずっと、愛華ちゃんの事ばっかり考えてて……最初はただあこがれてただけだったけど、気が付いたら私の中で一番大好きな人になってて……愛華ちゃんのこと考えてるだけでおかしくなりそうで……」
心臓がこれまでで一番激しく鼓動している。はちきれてしまいそうだ。
「……こんなこと、言うべきじゃないかもしれないけど……愛華ちゃんの事を考えて、その、シたりとかもしてたし……もう、愛華ちゃんがいないとだめになっちゃいそうなんだ……」
愛華ちゃんを抱きしめている腕に一層力を入れる。私の全身を愛華ちゃんに密着させる様な勢いで抱きしめて、足も絡ませて。
最後の一言を。
「……愛華ちゃん、私と付き合ってください」
その言葉を告げた瞬間、ふっと冷静になった。そして、今の状況をみてパニックになった。
全身を密着させて、足を絡ませて、肩に顎を乗せて、耳元で囁くように……いくら白沢さんが私に対して悪感情を抱いていなかったとしても、流石にやりすぎた。
「ご、ごめんっ、こ、こんなことしながらいう事じゃないよね――……?」
慌てて離れようと、白沢さんを拘束していた腕を解き、距離を置こうとする。が、その前に強く抱きしめられた。
一体何が、と困惑する私の耳元で、白沢さんが話し出した。
「……私、昨日の夜考えたんだ……」
「…………何を?」
「…………どうして、優奈ちゃんと話してるとドキドキするんだろう、って……」
白沢さんの腕の力が、段々と強くなっていく。
「……私、元々そっちの気はあったからさ……意外とすんなり受け入れられたの……」
「…………」
「私、優奈ちゃんの事が好きなんだ……って」
「―~ッ!?」
息が止まった。白沢さんの言葉が、余りにも予想外だったから。
白沢さんが、私の耳元に唇を寄せてくる。耳に吐息がかかって、くすぐったいような気持ち良いような。
そのまま、白沢さんは、ぼそっと、呟いた。
「……………………いいよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます