4.11

 仕事は変わらず忙しいものの、慌ただしさは少しずつなくなってきたように思う。使用人達が仕事に慣れてきてくれたのもあるが、今までを振り返れば、ヤンとの結婚、俺が父からこの家を継いだこと、ルッツの誕生と色々あったからだろう。思えば怒涛の日々だった。

 父が引退すると聞いて、一番戸惑ったのはきっと俺だろう。テオドールはヴァルターから聞いていたようで、その時も俺を支えてくれていた。俺は平民としての知識と貴族の常識をどちらも学んでいたから、てっきり父が働けなくなるまで当主を務めるものだと思い込んでいたのだ。

 俺はこの体が動く限り、この頭が働く限り、当主を務め上げたい。父や祖父が守り続けたこの家と、この仕事が好きだから。

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