10.7

 ルッツは俺やヤンの指を握るのが上手くなった。ぬいぐるみも、以前は重たいのかすぐに放していたが、少しずつ持てる時間が長くなってきた。ヤンがぬいぐるみの種類を増やすのだと意気込んでいたから、今度町に出て材料を見に行くのもいいかもしれない。

 ルッツはすっかりメイド達の人気者になり、人懐こいのもあって彼女達に抱っこや散歩をしてもらうこともある。使用人達はというと慣れない赤ん坊を抱くのは怖いらしく、見ていてくれるが触れるのには抵抗があるようだ。その気持ちはよく分かる。ルッツが生まれた時、あまりにも小さくて俺が触れたら壊してしまいそうに感じたくらいだ。


 しかし、ヴァルターはルッツと触れ合ってくれた。あいつにはテオドールがいたから、赤ん坊も久しぶりに見た感覚なのかもしれない。父と並んで笑顔になっていたのを思い出し、つい笑ってしまう。

 ルッツが遠出できるようになったら、今度はこちらから会いに行こう。きっと父も母も喜ぶ。

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