3.5

 仕事は変わらず忙しいが、今はヤンの部屋に通うという楽しみがある。同じ家で暮らして通うと言うのもおかしな話かもしれないが、それ以外にうまい言い方が思いつかない。

 テオドールには苦労をかけてしまっている。あいつもきっとヘレナと共に過ごしたいだろう。俺一人でなんとかなる時は休んでいて欲しいと思うが、自分だけが休む訳にもいかないと出てきてしまうのがあいつだ。助かっているが、心配でもある。


 ヤンはというと、眠るまでそばにいるようにしてからよく眠れているようだ。育った環境もあるのかもしれないが、ヤンは体を動かすのが好きだから、思い切り運動できない今うまく発散できないのだろう。子供が無事に生まれたら、思う存分運動できる時間を作ってやりたい。子供が走れるようになったら、一緒に追いかけっこをするのも良い。庭を走り回るヤンと子供の姿を想像するだけで、幸せな気持ちになる。

 生まれてくる前から、たくさんの幸せを貰っている。両親もこのような気持ちだったのだろうか。だとしたら、俺は両親に、想像したよりもずっと酷いことを。子供にも両親にも、恩返しをしたい。

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