奉仕執事が恋する主人
kana
プロローグ
僕、神威はいわゆるお坊ちゃまとして今までの人生を送ってきた。
小学校は私立に通い、中学生からはナショナルスクールに行き、留学する予定だった。でも、お坊ちゃまと言っても三男坊なので家業を継ぐとか手伝うとかする必要はない。というかむしろ早く管理尾手放して、長男と次男の育成に力を入れたいというところだろう。 子供の頃から両親に会うのは月に一回あればいい方で、執事さんが親の代わりとなっていた。そして将来自立して暮らすため、実際には留学のためという建前だったが、家事などは全て自分でできるようにしつけられていた。執事は面倒は見てくれたけど事務的なことばかりで親身にはしてくれなかった。愛のない子供だった。
そして三月の始まってすぐ卒業式があった。当然の如く両親が参加することはなく、いつも通り来るはずだった執事も今日は来なかった。後で分かったことだが学校までの道で何処かのお嬢様をかばって交通事故にあっていたらしい。
そして卒業式を終えた僕はもう二度と、元の家に帰ることは無かった。僕はいわゆる拉致にあっていた。といっても、身代金を要求するとかではなく、予め両親の承諾を得て、僕の了承はなく、どこかに輸送されているだけなのだが。
式場を出た瞬間にサングラスに黒スーツのガタイのいい男たちに囲まれたときは正直ビビった。そして僕は特に抵抗することもなく、今何処かの山の中を走っている。大分走り始めてから時間が経ったと思うがまだつかないのだろうか。という気持ちが強くなってきた頃、雑木林の中で急に車が止まった。急に高まる犯罪臭にとまどったが、いっそ諦めて身を任せることにした。僕は歩くことも出来ず、男の一人に担がれていたし。自分で歩かないのは非常に楽だ。こんな獣道あるきずらいったらありゃしない。
そして割とすぐに洋館にたどり着いた。築年数こそありそうなものの汚さは目立たず、モダンな雰囲気と言える程度に留まっていた。そして僕はその洋館の前に降ろされ、短い形式的な伝達事項を伝えられた。
「この屋敷に住まわれるお嬢様には、元々お前の執事が使用人として働くはずだった。だがその執事は死んでしまったため、代役としてお前がすることになった。このことについては両親の承諾は得ている。また、洋館には侵入者を撃退するためのシステムがある。不用意に外に出ないように。以上だ」
そう言って、スーツの男たちは立ち去って行った。
僕一人、知らない山の中に放置して。
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