貧乏国家のクズ王子~国家建て直しのため魔王軍に入った俺が天才と呼ばれ始める。
🎈パンサー葉月🎈
第一章
第1話 そうだ、踏み倒そう!
俺の名はミラスタール・ペンデュラム。
由緒正しきペンデュラム王家の第一王子なのだが、現在少々まずい事態に直面している。
「一体どうするおつもりですか、ミラスタール殿下っ!」
と、偉そうに王子たる俺に短いかりんとうのような指を突きつけてくるのは、我が国の大臣。
「どうって何が?」
「何がではございませぬ! お父上であらせられる王が床に伏せたいま、この国の権限は第一王子、ミラスタール殿下に託されたのですよ」
「それが何か? それより新たな側室を増やす計画はどうなっている? ちゃんと進めておるのか?」
後退した額にブチブチと怒りマークを浮かび上がらせ、大臣が鼻息荒く詰め寄ってくる。
「ご覧なさい! これは我が国の今年度の予算です。すでに赤字なのでございます。おわかり頂けますかな?」
「ならまたいつものようにお隣の国からお金借りればいいじゃん♪ それが無理ならさらにお隣さん♪ 困ったときは助け合いだよな~」
「不可能です!」
「なぜ?」
焼けくそ気味に投げつけられた書類の束。散らばったそれらを玉座で鼻をホジホジしながら薄目で見やり、納得した。
借用書の束だ。それも、どれもこれも返済期日を大幅に越えているものばかり。
「破産です! 一体どうやってこの借金を返済するおつもりですかっ! 大帝国でさえ返済不可能と思われる額ですよ!?」
しかし、よくもまぁこんなに借りられたものだな。……って、ほとんどが法外な利子によるものじゃないか。
隣国の連中もあくどい商売をしやがる。
「法外だな。借り入れた額の百倍はあるじゃないか。無効だ、こんなもの」
「それを承知の上で借りたのは我が国なのですよ!」
憤慨する大臣にまぁ慌てるなと掌を突きだし、俺はよっこらせと玉座から立ち上がる。そのまま二歩、三歩と大臣を通り過ぎてパッと振り返る。
「踏み倒そう」
「…………バカなんですか!? 戦争になりますよ。そうなった場合我が国の痩せ細った兵力ではあっという間に壊滅です」
「案ずるな、俺に素晴らしい名案がある!」
「……一応、一応お聞かせ願いましょう」
「同族……つまり人間に殺される前に魔族と友好関係を築いて守ってもらおうと言うものだ!」
ガッと両手を開いた俺の堂々たる発言に、大臣は開いた口が塞がらないと睫毛をパチクリさせている。お茶目なやつだな。
しかも、この魔族お友達大作戦が成功した暁には、俺のかねてよりの夢――ドリーム!
床上手と噂のサキュバスたんや、プルプルおっぱいの持ち主、スライム少女たんたちを側室に迎え入れることが可能となるかもしれんのだ。
借金を踏み倒せるだけではなく、多種多様な夢のパラダイスが築けるやもしれん。まさに発想の転換というわけだ。
素晴らしい! よっ、ミラちゃん賢い!
こうして俺は独裁政権をフル活用し、隣国から借金を踏み倒し、尚且つ魔王率いる魔族とお友達になる名案を決行することにしたのだ。
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