青空の美しさを私たちはまだ知らない
アケローン川出身大猫
第1話 日常
夏が来ると毎年のように思い出す。
このボロボロになったノートが薄れ行く記憶を生き返らせる。
正直自分ではよく覚えていない…
たくさんの人にこの話をして見たけど誰も作り話だとバカにして信じてくれない。でも私は信じてる!記憶があいまいでも……………………コレは私が体験した美しい物語
ガタンゴトン ガタンゴトン
私は常に変わって行く街の風景を電車の窓から覗いていた。
私はこの東京と言う街が嫌いだ。
みんながみんなスマホを片手に街をさまよっている…その目はまるで深海魚だ、つまり死んだ目をしている。不気味だ。いつかスマホに乗っ取られるんじゃないかと深く考え込んでしまう。
そんなくだらない事を考えているといつも降りる駅に着いた。
電車を降り、ホームの大きな時計を見る。
「やばい今日いつもより早く席に着いてなきゃいけないんだった!!」
ふと思い出す。
駅から学校はそれほど遠くはない。
私は少し早足で学校へ向かった。
「私も歳かな…はぁはぁそんな長い距離走ってないんだけどな…」
学校の正門に着いた頃には汗が体中から湧き出ていた。
夏休みに入ってから面倒臭くてロクに部活動にも行っていなかったせいだろうか。体力が落ちているらしい
それに今日は記録的な猛暑日だと家を出る前テレビでやってたっけ…
私はさりげなく空を見上げた。
空は…少し曇っていた。
曇は好きだ。自己中な太陽から私達を隠してくれる。
「っといけない。早く教室行かないと」
私が2年5組の教室入った時にはもうすでに今の勉強範囲が理解できていない人の為に行われる復習授業は始まったいて、たくさんの生徒が席に座っていた。
櫻井先生は私と目が合うなり
「また梓ちゃん遅れてきたの?次はないですからね!」と言う
この授業は夏休みに入って5回目。自慢ではないが私は毎回遅刻をしている。そして毎回櫻井先生は「次はないですからね!」と念を押して来る。
櫻井先生は若くて優しい女の先生だ。普段は英語の授業をしているが夏休みの間だけ国数理社英の5教科を教えてくれる。
「なんで私がこんな授業受けなきゃダメなんだよぉ…」
自分の席に座った私はあえて先生に聞こえるくらいの声で言った
正直学力には自信がある。
この前のテストでは100点満点中35点をとった。個人的には満足した点だったが周りからしたらそうでもなかったらしい。
先生は聞こえなかったフリをして「わからない問題があったら言ってねわかるまで教えてあげる」と言いプリントを配ってくれた。
文句を言っていても始まらない、私はカバンから筆箱を取り出し問題を解き始める。
正解かどうかはさておき案外すぐに解き終わった。
終わったことを先生に伝えようと周りを探すが先生は数分前に教室から職員室に戻って行った。
暇になった私はいつも通りナギっちと話そうと後ろ端の席を見るが今の今まで気がつかなかったが今日はナギっちは休みらしい。
ナギっち、本名は凪河 風香
私の中1からの親友でナギっちもこの授業に来ている。
そういやナギっち昨日体調悪いから早く寝るって電話で言ってたっけ。
昨日のことを思い出す。
私はスマホがあまり好きではないが一応現代人だ、スマホは持っている…
しかたなく私は頭を机に伏せ目を閉じる。そして思い描く、もし私に母親が居たら…
私が幼い頃に母親は亡くなってしまった。今では父と二人暮らしをしている。私が小学生に入る前までは縁があった母の祖父母とも疎遠になって行った。
母が居ないのでお父さんは1日中働いている。
朝は私が起きる前に出勤し、夜は私が寝た頃に帰ってくる。
日曜日は基本休みだがずっと家で寝ている。私はそんな父が好きだ。
少しでも楽をさせてあげたいと家事はできる限り自分でしている。
お金はあまり使わないようにしているから私はこの授業が嫌いだ、無駄に電車代がかかってしまう…
そんな事を考えていたら教室のドアが開く音がした。
伏せていた顔をドアの方に向ける
ドアの奥にはお母さんがいた。
母は「梓!迎えに来たよ」と私に向かって話しかける。私は嬉しくなり席を立つ。
だが私はすぐに気がついた。これが夢だと…
こんな夢は毎日のように見る。
この夢を見るたび霧がかってはっきりと顔の見えない母が私に言う。
「梓!迎えに来たよ」と
でもこの夢は好きだ。
私にはちゃんとお母さんがいるのだと実感させてくれる。
耳の奥でまだ微かに母の声が響いている気がした、だがそれを邪魔するかのように教室のドアが開いた。
ガラガラガラ
先生が入ってくるのが音でわかった。
私は先生に寝ていた事を勘付かれないように前の人を壁にしてゆっくり体を起こし、座り直したが先生は「あなた寝てたでしょ!」っと私に言ってくる。私は当てずっぽうに言ったのだと思い、「いやぁ、寝てないですよ〜」としらばっくれる。
だが先生は私の言葉に被せるように言った。「嘘だね、おでこに跡がついてる」
私は怒られる事を覚悟したが先生は笑いながら私のテストの採点を始めた。
テストの採点を終えた先生は私の顔を見ながら褒めてくれた。
返されたテストを見ると65点だった。
平均的にはまずまずの点数だが私にとっては革命的な点数だった。
家で復習した甲斐があったというものだ。
今日は週に1度のチェックテストの日テストを終えた者から帰っていいシステムだ。
私は先生に挨拶をして席を立つ。
カバンはチャックをして肩にかけたところだ、私にとって大切な思い出な回答用紙だが面倒臭いので3回折ってポケットに入れ教室を後にした。
結局ナギっちは来なかった。
電車に乗り家に着いた直後にカバンに入れていたスマホが鳴り出した。
この着信音はナギっちからの電話だ。
家のドアを開け靴を揃えることなく玄関を通り過ぎる、リビングを通って自分の部屋に入りスマホを取り出しカバンをベッドの横に投げ捨てる。
少し息が切れた状態で電話に出る。
「もしもしアズッさ?なんで息切らしてるの?なにしてたの?もしかして…」
「違う違う、走って帰って来たからさ、てか体調大丈夫なの?」
「体調?ダイジョブだよ……」
そんなたわいのない話を続けた。
私はふと今日のテストの点数を自慢したくてポケットに入っていた回答用紙を取り出す。
点数を見ながら自慢を始める。
「この点数見た時は嬉しかったし夢かも思ったよ…またこの点数見る瞬間に戻りたいよ。はは」
ポロっと流れに任したように言った言葉だか本気でそう思った。
そしてもう1度回答用紙を握りしめ、そして思った…「またあの瞬間に戻りたい…」
次の瞬間
目の前が真っ暗になった。
まるで水の中にいるような感覚だった。でも苦しくはない。
苦しいどころか楽だった。
雲の上にいるように全身が飛んでいるみたいだ。
………………
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