クエストの達成

 星澤を殺してから国王がどこにいるのか聞けばよかったと後悔した。

 俺は領主の家でしたように城の中を歩き回り、使用人を殺して『創造ポイント』を稼ぎつつ、ある部屋へと入っていった。

 そこには国王ゲイラードの姿があった。彼は椅子に座りふんぞり返っているが、周りの従者たち、騎士たちは俺を恐れている。ここまでやってきたということの意味を国王はまだ理解できていないようだった。


「あ? お前誰だ?」


 ゲイラードの近くには家族が固まって座っていた。レアとかいう子供も母親に抱かれている。俺をみて、泣き出した。


「泣くな男だろ」


 レイは父親を見上げ、頷いた。

 俺は頭をかいた。


「お前が簒奪の王か」


 ゲイラードは額に血管を浮かせた。徐々に顔が赤くなっていく。


「この俺を冒涜するのか! 俺こそが王だ。簒奪などではない。あんな小娘に国王を名乗らせてたまるか」


 俺は相変わらず頭をかいて、指に血がついているのを確認して舌打ちした。


「風呂に入りたい」

「あ?」

「おまえ殺すわ」


 魔法兵器で国王を狙撃する。しかし、弾かれた。何人もの魔術師が防御魔法を使ったらしい。


「はははその程度か」

「ふうん」


 『創造ポイント』を使ってバリスタを最大まで強化する。

 弓に矢をつがえる。


「同じこと……ぎゃああ」


 国王の肩に矢が刺さった。魔法結界は目に見える形で穴が空いている。


「このくらいやってようやく通るか。強いな防御魔法って」

「冒険者で言えばSランクの魔術師が15人だぞ。それを突き通すのか!!!」

「冒険者なんて居たんだ。騎士と獣人しか見てないから知らない。あ、商人と領主も居たな。ぶっ殺したけど」


 俺はバリスタをゲイラードの妻とレアに向ける。


「なあ、選択しろ。自分を殺して二人を助けるか、二人を助けて自分は生き残るか」


 ぶつんと音がするくらい、ゲイラードの顔はどす黒くなっている。


「ふざけるなよ! この凡人があああああ」

「遅い」


 俺は三人に矢を放った。ゲイラードの両肩はえぐり取られ、妻は頭を吹き飛ばされて、レアは心臓を射抜かれた。


「ローラ! レア! くそおおおおおおお」


 やつは叫んでうつむいた。

 その間にも俺は側近や、騎士、魔術師たちを殺してインベントリに入れていく。『創造ポイント』は大量だ。


「クソ、この、殺してやる」

「死ぬのはお前だよ」


 ゲイラードの首を撥ねた。証拠は持っていかなくては。

 簒奪の王とその家族は解体せずにインベントリに入れて、クローゼットを出現させるとその中に入った。



 ゲイラードの死体を見ると、ステイシーとその側近たちは肯いた。


「確かに本人ですこの手の傷、顔貌、間違いありません」

「じゃあ、後は城にもどれ。いつまでもここにいるんじゃねえぞ」

「ちょっと待って下さい。お願いがあります」

「何だ」

「城の警護をお願いしたいのです。すぐにゲイラード派の貴族たちが反旗を翻して来るでしょう。そうしたら、この国は終わりです」


 俺は舌打ちをした。

 電話がなる。

 スマホを取り出すとステイシーは興味を示した。


「なんですかそれは」

「ちょっと静かにして、もしもし」

「レベルがまた上がったからね。連絡したよ」

「そうか、今忙しいんだが」

「まあ待ちなよ。国の警護を頼まれたんだろ。それをウケるのもクエストにする」


 俺は舌打ちをした。


「何ふざけたことぬかしてんだてめえ」

「おおこわ。随分性格がかわったねえ。いや、元々狂っていたとも言えるが。とにかく、国を建て直すんだ。どんな方法を使ってもいい。君の言った案私は好きだよ。手を貸してやってもいい」

「ああそうかよ」

「まあ楽しみにしておいてよ。クエストよろしくね」


 そういって、カマエルは電話を切った。

 俺は椅子を蹴り上げ、ステイシーに近づいた。テリーが俺の前に立ちはだかる。


「何をするつもりだ」

「報告だよ、報告。国を建て直すのを手伝ってやる。ああ、クソムカつくが、そうするしか無い」


 テリーは驚きの表情を浮かべた。


「それは本当ですか?」


 テリーを押しのけて、ステイシーは言った。


「ああ、城の警護もしてやる」

「ありがとうございます!」


 ステイシーはそう言って頭を深々と下げた。

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