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私の話はこれで終わりです。これくらいでもう十分。
だってこの手紙を書いたのは、何より九十九にありがとう、と言うためだからです。
家出をしたあの日だけじゃなく、九十九はいつも私を救ってくれていたのです。
絵画のコンテスト、応募していたでしょう?
展示会を見に行きました。
私は優秀賞を取った作品よりも、九十九の絵のほうがよっぽど好きでした。
そのとき九十九の絵が載ってる画集を買って、家に帰ったの。
それで、悲しくなったり、不安になったり、眠れない夜があったりすると、決まってその画集を開いて、九十九の絵を眺めてた。
九十九の絵を見てるとね、なんだか不思議と泣きたくなるの。
その、泣きたくなるっていうのは、説明するのが難しいのだけれど、苦しかったり、悲しかったり、マイナスの感情から生まれるものではありません。
そうではなくて、どこか凝り固まった心の奥が、やさしくほどけていくような、慰し、という言葉が近いのではないかと思います。
九十九の絵を見ることで、どうにか夜を耐えることができました。いつからか、私にとって九十九の絵は、心のよりどころになっていたのです。
――私は九十九の絵が大好きです。
だから、もしお母さんとお父さんに、芸術関係の学校に進むことを反対されても、気にせず好きな道を進んでほしい。
大した額ではないのだけれど、バイトをしてためた貯金を、九十九に持っていて欲しいなと思います。必要なときに使ってください。
通帳を九十九の机の引き出しに入れておくね。
家出をしたあの日、九十九が私をつなぎとめてくれたように、九十九が道に迷ったとき、このお金が九十九を助けてくれることを願ってやみません。
私はいつでも九十九の味方だし、見守っているのだということを、どうか忘れないでいてください。
最後に、私の妹でいてくれて、本当にありがとう。
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