第30話 彼女の部屋にお邪魔します
ちょっと騒がしい後輩少女の奈月ちゃんが友達になって数日後の放課後。
「真澄ってさ。部活ではどんな感じなの?」
先日の一件以来、気になっていたことをちょっと聞いてみた。
「どんな感じと言われてもやなあ……」
考え込む真澄。
「いや、なんとなくでいいからさ」
「そやなあ。ウチは料理部の部長なんやけどさ」
「え?それは初耳」
料理部なことは知っていたけど、部長とは初耳だ。
「言うてなかったしな。部長言うても、何か特別なことするっちゅうわけやないし。部費の折衝とか、入部届けの提出とか、そういう地味なことばっかりやし」
なんてことないように言うけど、それはかなりやっている方だと思う。
「ちょっと意外な一面を見た気分」
「なんや、ウチに部長なんて似合わんっちゅうんやろ?」
ちょっとふてくされて見せる真澄。
本気じゃないのがわかっているから、少し微笑ましい。
「いや、そういう意味じゃなくてさ。世話を焼いてる真澄は色々知ってるけど、部長っていうのがちょっと想像付かなかっただけ」
「まあ、うちも部長なんて柄やないんやけどな」
「って自分で認めるの?」
ツッコんだ。
「引退した先輩から、ウチなら、ってお願いされて引き受けただけやしなあ」
そのときのことを思い出すかのように語る真澄。
「それだけ、真澄のことが信頼されてたってことだよ」
うちの歴史研究部を見ていても思うけど、部長にはなんだかんだいって人望の無い人には務まりにくいと思う。単に事務作業が出来るだけだと駄目だし。
「一度、真澄の部活の様子を見たくなってきたよ」
違う中学高校だったから、あまり深く追求する気はなかったけど、
どんな風にしているのか、一度、少し見てみたい。
「言うとくけどな。ストーカーはあかんで」
「そりゃ、そんなことはしないよ」
奈月ちゃんに聞くという手もあるけど、あの子はなんだか誇張して語りそうな気がする。
そんなことを話していると、気が付けば、もう家の前だ。
「そや。今日はウチの部屋にこんか?」
「真澄の?」
「ウチの部活での様子とか知りたいんやろ?」
そういえば、付き合ってからこっち、放課後集まるのは僕の部屋で、真澄の部屋は起こしに行った一度きりだ。
確かに、中学高校のアルバムとか色々見せてもらえば、もっと真澄のことを知ることができるかもしれない。
「真澄さえよければ」
「じゃあ、決まりやな」
そうして、彼女の家でなんとなく集まることになったのだった。
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