働き方をカイカクする③

現場の働き方を見える化する


そんな目的で始まった、プロジェクト


測定ソフトも届き、

使い方の説明を受け

いよいよ約1ヶ月の測定が始まった。


測定ソフト担当からは

「必ず、計測ミスをする方が

5%程度はでるので、最初の数日で

確認して欲しい」

くどい位に念を押されていたが、


案の定、ボタンの押し間違いや

1日の最後に必要な計測結果の

データ送信忘れなどが発生。


1ヶ月予定の計測は、

その倍の2ヶ月になりはしたが、

無事計測し終えることに成功した。


報告にきた建築部長


「無事終わりました」


「大袈裟かもしれませんが、

計測に携わったメンバーはもちろん

周りの者にも、

労いの言葉をお願いします」


計測に際し、

いろいろ現場であったのだろう。


「勿論です。本当にありがとう」

まずは、リーダーと言う大役を

果たしてくれた建築部長に

達社長、深々と頭を下げた。


協力してくれた現場のみんな

そして、建築部長には感謝しかない


なぜなら、

計測が無事に終わることで


組織改変を伴う、

働き方カイカクは8割成功と

言えるからだ。


「皆がなんとなく感じている事が

データとして、証明される」


そう確信しているからだ。


データ解析は、

現場の手を離れ、総務チームに

委ねられた。


一週間後、

建築・土木別、

若手や所長クラスなど階層別の

データが、グラフ化され、

達社長とリーダーの建築部長の

元に届けられた。


データ解析をした総務課長は

開口一番

「建築、特に所長クラスに課題あり」

そう提言してきた。


いかにも、総務課長らしい

簡潔な結論である。


データを見れば明らかだが、


現場でやる所長の仕事の

半分近くが、

図面チェックや工程表作成など

いわゆる内勤業務に費やされて

いるのだ。


一方、施工確認に代表される

現場実務は、おおむね1/3以下である


更に

「過剰とも言える内勤業務で

若手への現場指導が十分に

出来ていない」


ことも明らかになってきた。


所長クラスが

現場で行う内勤業務。


これが、長時間労働につながり

かつ、若手育成にも悪影響を

与えている。


建築部長

「彼らは腹をくくって、ほぼ素直に

データ分析に協力してくれた」


「彼らを傷つけず、カイカクへ

繋げて欲しい」


「勿論です。」

達社長は頷きながら、

大きな声でそう答えた。


翌週行われた経営会議。


総務課長から

データから見えた課題を

説明してもらった。


リーダーの建築部長が

「現場のプロでない人が

客観的に説明して欲しい」


そう頼まれたからだ。


内容は一目瞭然。


「現場でなくても出来ることは

現場から外す」

組織改革を加速させる


この方針には

誰からも異論はでない。


会議が終わろうとした、その時

専務が、ゆっくり手をあげ発言した。


「所長の醍醐味だった事を取り上げる

そういう側面があることを

忘れないで欲しい」


醍醐味とは、

例えば、

「この現場では泣いてくれ、

次の現場では報いるから」


つまり、現場所長独特の権限。

これが、現場から取り上げられる

事を意味するという、メッセージだ。


建築部長も大きく頷いた。


そうなのだ。

この組織改革の成否は、

現場所長クラスの価値観を

変える事が出来るか否かにあるのだ。


「働き方カイカクとは価値観改革」


組織改革まであと、1ヶ月。


現場所長クラスと毎日でも向き合い

理解してもらおう。


達社長が、その決意を語り会議は

無事終了した。

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