渋谷ユーフラテスのほとりで
月本暁子
第1話 東京が滅びるかもしれない
「もうすぐ、東京が滅びるかもしれない」
景山がこんなメールを受け取ったのは、会社を出た直後だった。穴井は霊感がある。
付き合いのある人間なら、皆、知っていることだ。
とりあえず、「いつ?」と返信しておいた。
社会人三年目にして、もう会社を辞めることを毎日のように考えている。
毎日が、辛い。
いつしか、生きることそのものが辛くなっていた。
何のために生きているのか、わからなくなっていた。
それなりの大学からそれなりの会社に入ったはずなのに。同僚や上司も、仕事が出来る、人格的にも良い人間であるはずなのに、僕だけが異質であったのだ。自分がこんなに最悪な人間だとは、ずっと気づかなかったのである。
退職願はもう書いた。あとはいつ、上司に打ち明けるか、だ。
東京が終わるなら、むしろ有難い。こんな世界、早くなくなってしまえばいいとさえ思う。
家に帰って携帯を見ると、「今年か、来年だと思う」と穴井から返信が来ていた。
久々に、穴井と話がしたい、そう思った。まだ居酒屋でバイトしてるのだろうか。
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