「夜空」「蜃気楼」「ヤカン」
「あれは……妻のおつねだ……」
床に臥せった女の青白い肌までが、くっきりと見えました。
微動だにせずに蜃気楼を見つめる藤兵衛の袖を、誰かが引っ張りました。
「もし、こんなところで幻を浮かべてもらっては困りますな」
振り返ると、杖をついて立っている盲目の
「これは、一体どういうことですか?」
「どうしたもこうしたも、あんたが強く想い過ぎてるから、蜃気楼が浮かぶのです。お陰で私の仕事が増えるというもの」
按摩が手にぶら下げた
「また蜃気楼を出されてはかなわんから、ついでに病の気を吸い取っておいた。はよう帰ると良かろう」
そう言うが早いか、按摩の姿は煙のように消えてしまいました。
飛脚を出して家人に確かめた所、おつねの容体は日に日に快方に向かってるとの由。
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