クマさんと、シャルロッタロック
びっくりしている僕とシャルロッタ。
そそそ、そりゃそうですよ……だだだ、だって僕とシャルロッタはベッドの上で、しかもシャルロッタの服は僕が脱がせている真っ最中だったもんですから、あられもない姿になっているわけでして……あ、昨夜は真っ暗な中だったからよく分からなかったんだけど、シャルロッタの体ってこんな感じになっているんだ……肌がすっごく綺麗だし、胸もすっごく大きいし、腰のラインがすごく……
「クマ様?」
無意識のうちにシャルロッタのあられもない姿に見惚れてしまっていた僕なんだけど……部屋の戸をあけて、ピリが室内に入ってきたんです。
「ははははいぃ、いいい今起きましたぁ!」
僕は、思いっきり声を裏返らせながらピリに返事を返しました。
同時に、掛け布団をシャルロッタの上にかけていきます。
僕の下半身を覆うようにして掛け布団をかけたおかげで、ベッドの上で僕が起き上がったかのように見えるはずです。
シャルロッタも、布団の中で体を小さくしながら僕の方に近寄ってくれています。
「あははどうしたのクマ様、そんな大きな声だして」
とりあえず、ピリはシャルロッタの存在に気がついていないみたいです。
ピリは、笑顔を浮かべながらベッドに歩みよってきました。
ピリはトレーを持っていて、その上に食事がのっていました。
ピリ特性の流血狼の肉を使ったビーフシチューと、手作りのパンがのっています。
「あああ、ありがとうピリ、あああ、ありがたく頂くよ」
僕はトレーを受け取ろうと思いながら手を伸ばしました。
すると、ピリは僕の手からトレーを遠ざけながら、ベッドの端に腰掛けました。
え? あ、あの……ななな、なんでベッドに腰掛けちゃうんです? ぼぼぼ、僕としては、一刻も早く部屋から出ていってほしいんですけど……
そんな僕の思惑などお構いなしとばかりに、ベッドに腰掛けたままにっこり笑みを浮かべながら僕を見つめているピリ。
「聞いてますよ。ミリュウの脱皮の手伝いで大変だったんでしょう?」
そう言うと、ピリは、スプーンでビーフシチューをひとすくいしました。
「お疲れでしょうから、アタシが食べさせてあげますね、はい、あーん」
そう言いながらスプーンを僕の方に差し出して来たんです。
って……え?
ななななんですか、このシチュエーションは!?
あの、こここ、これってば、よく青春アニメとかに出てくる、女の子が男の子にお弁当なんかを食べさせてあげる……あああ、あの神シチュエーションですか!?
ぼぼぼ、僕なんかのような太っていてうだつのあがらないおっさんには一生縁がないと思っていた光景が、今、まさに僕の目の前で展開されているのですか!?
「どうしたのクマ様? 遠慮しなくてもいいんですよ? はい、あーん」
ピリは少し悪戯っぽく笑いながらスプーンをさらに僕に近づけてきました。
女の子にここまでされて、無視できる男がいるでしょうか?……いや、いません。
僕は、大きく口を開けると、スプーンを頬張っていきました。
一瞬にして、ビーフシチューの芳醇な香りと味が口の中いっぱいに広がっていきます。
「あは♪ 食べてくれた。嬉しいな」
そんな僕を見つめながら、ピリは本当に嬉しそうに微笑んでいます。
トゥンク
その笑顔を前にして、僕の中で恋に落ちる音が……って、いやいやいや!?
危うく、ピリの事を抱きしめてしまいそうになってしまった僕なのですが、ギリギリのところで踏みとどまることが出来ました。
何しろ、今ここに、僕の最愛の人……シャルロッタがいるんだから……
シャルロッタは、今、僕の足の間にいます。
下半身には布団をかけていますので、ピリにはシャルロッタの姿は見えていないはずです。
僕が太っているのと、シャルロッタが小柄な体をさらに小さくして僕の足の間に入り混んでいるおかげであまり目立っていないからでしょう。
……とはいうものの……全裸に近い状態のまま、自分の服を抱えて小さくなっているシャルロッタ。
もし、今、ピリが布団を持ち上げたら……うん、間違いなく弁解の余地はありません……いいい、いえ、シャルロッタと結ばれた以上、今更弁解するつもりもないといいますか、一生責任を取るともりでいるのですが……
「クマ様、どうかしました? なんか布団の中に何かあるんです?」
「いいい、いえいえいえいえ、ななな、何でもないんです、なんでも……」
無意識に自分の足元というか、そこにいるシャルロッタの方へ視線を向けてしまっていた僕なんだけど、その視線に気が付いたピリが、僕の足下へ視線を向けていたんです。
ややや、やばいです、これはやばすぎます……もし、今、シャルロッタが少しでも身動きしたら……
そんな僕の危機感がシャルロッタにも伝わったのでしょう、シャルロッタが身を固くしたのがわかりました。
同時に、僕の体の方にさらに移動してきて、少しでも目立たないようにしたみたいなんですが……
……う
まずいです。
先ほど、シャルロッタと愛し合おうとしていたせいで、僕は下半身が素っ裸なんです……下だけ脱ぎ捨てているんです。
そんな中、シャルロッタが微妙な位置に移動したせいで、僕の股間のアレがですね、微妙に刺激されてしまいまして……シャルロッタの姿勢と、僕のアレの位置を相対的に考えるとですね……僕のアレは今、シャルロッタの顔の真横あたりに……
そのことに思い当たった途端に、僕のアレがいきなり反応してしまいました。
だだだ、駄目です!? 今そこが反応してしまったら、ピリによからぬ誤解を与えかねないといいますか……
でも、体は正直です。
布団を押し上げかねない勢いで元気になってしまていて……これじゃあ、隣に座っているピリに反応していると思われても仕方ないといいますか……ななな、なんとかして落ち着かないと、と、焦れば焦る程過剰に反応していってしまい……
その時でした。
ガシっ
「……はう!?」
その感触に、僕は思わず妙な声を上げてしまいました。
反応しまくっていた僕のアレをですね……シャルロッタが掴んで、無理矢理布団の押しつけたんです。
おかげで、どうにか布団が妙に盛り上がってしまう事態は避けることが出来たのですが……僕は、顔が真っ赤になるやら、あたふたするやら……もう、どうすればいいのやら状態になってしまって……
「クマ様? どうかしたんです? 顔が赤いですよ?」
「あああ、いいいいえ、なんでもないというか、まだちょっと疲れているのかな、あは、あ、あは、あはは、あはははは」
僕は、声を裏返らせながら必死に取り繕いました。
するとピリは、
「それは大変、さ、早くご飯を食べてもう一眠りしてくださいね」
そう言いながら、僕に改めてシチューをすくったスプーンを差し出してくれました。
僕は、それを大慌てで口にしていきました。
今は一刻も早く、食事を食べ終えて、ピリに部屋から出ていってもらわないと……その事しか頭にありませんでした……あえて、下半身の事は意識しないようにしながら……
* * *
その後、5分もかからずに、僕はピリの料理を食べ終えました。
相変わらず美味しいピリの料理だったのですが、焦りまくっていたせいでいまいち味がわからなかった気がします。
「じゃ、クマ様、しっかり休んでくださいね」
笑顔で手を振りながら部屋を出ていったピリ。
そんなピリに、ベッドに座ったまま右手を振り返していた僕。
ピリが部屋を出て行き、その足音が階段を降りていったのを確認してから、僕は布団をゆっくりとめくりあげました。
そんな僕の視線の先には……ほとんど裸のまま、僕の股間で丸くなりつつ、僕のアレを握って起き上がらないようにしてくれているシャルロッタの姿があったんです。
「も、もう大丈夫なのじゃな?……」
シャルロッタは、その顔を真っ赤に上気させながら僕を見上げていた。
すごく荒い息を必死に押し殺しています。
しゃ、シャルロッタも色々と大変だったんだ……
真っ赤な顔
荒い息
汗ばんでいる体
ほとんど裸
そんなシャルロッタの姿を見ていると、理性が吹き飛んでしまいそうなのですがギリギリのところで踏ん張った僕。
「う、うん……ももも、もう、大丈夫だよシャルロッタ」
僕がそう言うと、シャルロッタは僕に抱きついてきたんです。
「……クマ殿……はしたなくて申し訳ないのじゃが……妾、もう……その……我慢が出来そうにないというか……」
その一言で、僕の理性は吹き飛んでしまいました。
* * *
しばらく後……
「……で、では妾は一度部屋に戻るのじゃ」
服を身につけたシャルロッタは、慌てた様子でそう言うと、僕の部屋からそそくさと出て行きました。
部屋を出る前に、一度僕へ視線を向けると、
「……クマ殿、可愛がってもらえて嬉しいのじゃ……」
そう、小声で言ってから部屋を出て行ったんです。
……そんなシャルロッタを、どこか夢見心地で見送った僕。
ピリにあーんしてもらったのだけでも大事件だというのに、シャルロッタと2度目の甘い時間をすごすことが出来たという大大大事件まで起きてしまったもんだから、僕の思考が現実においついていません……
ただ……シャルロッタは、あの時もすごく可愛かったというか……
僕は、その事を思い出しながら枕に顔を埋めていきました。
そのままかなりの時間、起き上がることが出来ませんでした。
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