第9話「民草は───」
──────民草はお主の力なり。
父君の声が聞こえる。
確かに私に於いては、民草は私の力の一環と成す。
比喩ではない。
私は死んでも生き返れる魔法を持っていた。
生まれつきだ。
しかしこの魔法は厄介者で。
生き返れるとは言っても、他人の体を乗っ取る事によって成される業なのだ。
それに条件もある。
一。純シエル民にしか乗り移れない。
二。乗り移った身体の元人格は、私の人格に押し潰されて死んでいく。
三。乗り移る対象は、私自身が直に触れた対象のみに限定される。
四。触れた中、選んだシエル民に乗り移ることはできない。
五。乗り移る際に、五年の歳月を必要とする。
六。そしてこの一環の生き返りは、私が死んだと同時に自動で行われる。
備考。その間の私は昏睡状態だ。
これで二回目の生となる。
それに……移った素体が、女性だとは。
───シエル民も、虐殺で残り少ない。
私は多数のシエル民に触れて来たが、そのどれが生きているかも不明。
残るシエル民は、この素体だけかも知れない。
しかし、リハビリを済ませたのなら。
───武器も森に置いた。
戦闘の記憶も、私の存在に刻み込まれている。
銃の扱い方も。
帝国の壊し方も。
人の殺し方も。
躊躇の殺し方も。
──────復讐の、灯火も。
全て覚えている。
そして体が自由に動かせられるようになったのなら───。
ああ、そうだ。
一つだけ、この生き返りによって、新しく得られるモノが、一つだけある。
……シエル民の身体には、一人一人魔法が眠っている。
どこの誰にも。全ての純シエル民に、全て。
その身体に乗り移った私は───。
その身体に眠っていた魔法を、強制的に目覚めさせる事が出来るのだ。
……そしてその魔法は、その身体が死んだ後にも、私そのものに蓄積していく。
つまり。
──────死んでいけば行くほど、私は強くなっていく、という事だ。
今日は二本投稿!
頑張ります!!
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