三匹の小ブタ

 三兄弟の小ブタが、それぞれ家を建てることになりました。

 冬になると街に来てブタたちに襲いかかるオオカミから身を守らなければいけないからです。

 一番いい加減で要領のいい長男は要領よく手軽にダンボールの家、それなりに要領がよく、それなりに地道な次男は木の家、一番地道で凝り性な三男はじっくりとデザイナーズハウスばりのお洒落な家を建てることにしました。

 ダンボールの家は一日で完成。長男はその日からのんびり過ごしました。

 次男の木の家は構造計算やら煩雑な役所への諸手続もあって数ヶ月でやっと完成。次男もようやく一息付きました。

 地道で凝り性の三男は、雑誌で一流の建築家の作品などを見ながら動線に無理のない間取りや斬新なデザインの研究に夢中で、いまだに基礎工事も着工していません。

 そうこうするうちに山に食べ物がとぼしくなったオオカミが街に下りてくる季節になりました。

 街に現れたオオカミが真っ先に見つけたのは、まだ家を建てず設計図とにらめっこしている三男でした。オオカミに追いかけられた三男は慌ててダンボールの家に逃げこみました。

 オオカミは長男と三男が隠れているダンボールの家を一息で吹き飛ばしました。二匹は大慌てで木の家に逃げこみました。

 オオカミは木の家を吹き飛ばそうとしましたが、土台がコンクリート基礎としっかり固定されている新築の家がその程度でどうなるものではありません。

 体当たりしましたが、ビクともしません。

 オオカミはあきらめて山にトボトボと帰っていきました。



 結局、オオカミから身を守ることができたのは、いい加減すぎず、懲りすぎない平凡な次男でした。この物語の教訓は「平凡が一番」ということになるんでしょうかね。

 でもね、続きがあるんです。

 要領よく立ち回って政府から被災者として認定された長男は補償金をたっぷりもらいました。

 三男は「よし宙に浮かぶ家ならオオカミに襲いかかられても平気だぞ」などと新しいアイデアを得てそれなりに楽しそうに設計図と格闘しています。実現の見通しがついて特許を取れば一躍大富豪になるかも? でも、そんなことより設計図とにらめっこしてるのが三男にとっては幸せなんです。

 次男は雨風やオオカミの脅威はしのげるけど、住宅ローンが悩みの種です。

 さて、どの生き方がいいのか。単純には決められない問題ですよね。

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