330ページ目…別荘?

 地上へと降り立った僕達は〖融合〗を解除すると二人へと戻った。

 もちろん、僕とプリンの二人の事である。


「それで、何か分かったんですか?」


 とプリンが聞いてくる。

 どうやら、同じ情報を持っていても思考パターンまで完全に一致する訳ではないのか、その内容までは理解する事は出来ていなかった様だ。


「うん…は、多分、蜃気楼なんだと思う。」


 当然ながら、アレと言うのは先程『魔神化』までして確認した村が消滅えると言う現象の事である。

 そもそも、ほんの僅かな高低差で村が見えたり消えたりと言う事自体、可笑しな話である。

 だからこそ、その原因を…と思った時、僕の記憶に似た様な現象があった。

 それが蜃気楼だったり陽炎かげろうと呼ばれる現象だったのだ。


 本来見えるはずのない遠くの物が近くに見えたり、水溜まりに見える物に近付くと消滅えたりする現象…。

 元の世界である日本であるならば、おそらくは誰もが経験した事のある現象だ。

 それを考えると、今までこちらの世界で見た事がなった為、気が付かなかったのだ。

 だが、もし、コレが蜃気楼であるなら話は簡単だ。


 何せ、遠くの物が近くに見える…のが蜃気楼であるなら、その村は近くにないだけで、遠くにはあるのだ。

 決して、物理的に消滅えた訳ではないのだ…ならば、そのまま遠くへ向かっていれば辿り着くのは言うまでもない。


 そして…自分の目で見た通り、見える範囲ではその村しか見えなかった…。

 ならば、先程の地点に戻り更に進むだけで良い。

 そんな訳で僕達は〖魔法:空間転移ゲート〗を使い、先程の場所へと戻ると再び高速移動用ゴーレム、通称:車に乗り込むと、蜃気楼で見た村へと目指してアクセルを踏む込んだのだった…。


◇◆◇◆◇◆◇


 それから更に1時間後…延々と車を走らせていたのだが未だに村は発見出来なかった。

 これでも、時速で言えば100キロは出てる筈なのだが…。


「おいおい…この世界の蜃気楼は、どんだけ遠くの物を映してるんだ…。」


 だが、残念ながら、僕の呟きに答える者は誰一人いない。

 何故なら…。


「「「「...zzzZZZ。」」」」


 と言う事…みんな仲良く寝てしまったからだ。

 正直、最初の10分程はみんな起きていた。

 だが、その以前に確認する為とは言え、先程、一時間以上、車で走っていたのだ。


 いくら間に少しの休憩を挟んだからとは言え、流石に代わり映えのない風景を延々と見ているだけで飽きが来ると言う物。

 それ故、寝てしまった嫁~ズを責める訳には行かないだろう。


 最も一番早く寝たのは獣の割合が一番強いローラである。

 基本的に、花より団子な性格なので、代わり映えのない景色に逸早く飽きが来たのであろう。


 次に寝たのは、クズハ…『もうだめでしゅ…。』と言って寝たのには、可愛さがこみ上げて来て思わず笑ってしまった。


 その次に寝たのはアリス…ではなく、プリンである。

 もっとも、プリンの場合は僕と〖融合〗したりして疲れた可能性もあるので仕方が無いのかも知れない。


 そして、最後に寝たアリス…は、それでも我慢に我慢を重ねたのだがローラとクズハが両隣で寝ているのだ。

 おそらく、その二人から受けるアルファー波だったか?安らぎの波長は並半端な物ではなかったはずだ。

 それでも、我慢しまくったアリスではあったのだが、5分ほど前に、とうとう睡魔にノックアウトされてしまった。


 そもそも…な話、嫁~ズ達が寝てしまっていると言う事は、運転をしている僕だって眠いのだ。

 ただ、僕が寝てしまうと居眠り運転となる為、寝る訳には行かないのは言うまでもない。

 万が一にも居眠りをして、その時に事故でも起こそう物なら、一生掛けても償いきれない事になるだろう事は目に見えている。

 それ故に、眠いのを我慢していたのだ…が、そろそろ僕も限界の様だ。


 僕は車を止めると、無限庫インベントリから、こんな時の為に…と、用意していた物を取り出す。

 もっとも、こんな場所に、出して良いかは疑問ではあるが、周囲を見渡しても何もないのだから大丈夫だろう。

 そして、僕はその取り出した物の中へと車を操作して入れた。


『ガラガラガラ…。』


 僕は、シャッターを締めると車の中から一人ずつお姫様抱っこで運び出すとベッドに寝かせる。

 そう…僕が無限庫から取り出した物…。

 それは、家だったのだ。


 もっとも、この家は拠点となるメルトの町の家とは別物で、こんな事もあろうかと持ち運びする為に用意した家…メルト側の森から切り出した丸太を使い組み上げたログハウスである。

 その為、セカンドハウスと言うよりは別荘と言った方良いのかも知れない。


 何はともあれ、眠気が限界を迎えた僕は、彼女達を全員ベッドに寝かせると、自分の部屋へ行き、そのまま倒れ込む様に眠りにつくのだった。


 ちなみに、この家…実は大型のウッドゴーレムだったりする。

 とは言っても可変機構などは無く、周囲に近付く敵を排除する為の機構しか装備されていない。

 とは言え、敵が責めてきた場合、音で知らせる様にしているので、魔物が責めてきても対処出来る筈でである…。


「ってな訳で、おやすみ…。」


 何が『ってな訳』なのか謎ではあるが、僕は意識を手放したのだった…。

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