319ページ目…道半ば【2】
「
目的地である人間領と魔族領を繋ぐ唯一の渓谷のど真ん中で休憩を取る事にした僕達…。
そんな中、休む為の準備ではなく、いきなり
そこで、僕はプリンに、こう告げた…。
「あぁ、これか…プリン、今日は何月何日か分かるかい?」
「えっと…確か、その言い方ですと…ご主人様の世界の方の日付ですね?
それですと…7月7日…ですか?」
「正解!で…だ、僕の記憶から、その日は、何の日か分かるかな?」
すると、プリンは目をとして少し考える素振りをする。
「えっと…え~っと…あッ!たなぼたの日ですね?」
おしい…残念ながら一文字違う…。
「残念…たなぼたじゃなく、たなばた…七夕の日のだよ。」
僕は苦笑しながらプリンに伝える。
まぁ、たなぼたの日なんてあったら、面白いかもしれないが…。
「まぁ、こちらの世界に来てから、かなり時間が経ってるし、本当に7月7日なのか分からないんだけどね?
それでも…この世界に来て、初めての七夕だ。
それも、プリン、クズハ、ローラ、そしてアリス…愛する嫁達との…クリスマスや正月みたいな大々的なイベントではないけど、折角思い出したんだから、一緒にどうかな?と思ってさ。」
「そうなんですね…ですが、1年に1度しか会えない恋人達の日で…願い事を紙に書いて祈る日なんですよね?」
いや、まぁ…確かに、七夕の日と言うと、僕の記憶ではそうなんだけど…その言い方はちょっと身も蓋もない言い方じゃないか?
それを言い出したら、願い事自体、自分達の願いではなく、「おりひめ(織女)」と「ひこぼし(牽牛)」の事を願っての祈りだったはずだ。
とは言え、何でも祭りにしてしまうのが、元の世界の風習でもある。
「まぁ、そうなんだけど…さ、ちょっとくらい、この世界の神様に願い事をしてみても良いんじゃないか?」
ですよね…先生?
まぁ、叶えてくれるかどうかは期待してませんけど…。
【うわぁ!?久しぶりに声掛けてくれたと思ったら、いきなり毒を吐くなんて、ちょっと酷くないですか?】
しかし、そんな先生からのツッコミは無視してプリンに話し掛ける。
「とりあえず…プリン、みんなの願い事を短冊に書いて貰って良いかな?
僕はもう少し、準備があるから…。」
「分かりました、では、行ってきます。」
プリンはそう言うと、クズハの所へと向かって歩いていく…プリンには悪いが、あまり神と関わらせたくないのだから我慢して貰おう。
【それで、どうして私に声なんて掛けたのかな?】
いや、大した理由はないんですけどね?
貴方達、神を名乗るこの世界の管理者に幾つか聞きたい事が出来まして…。
【ハイハイ、七夕ですからね…答えられる事なら答えましょう。】
いや、七夕じゃなくても答えて貰いますけどね?
【わ、分かったわよ…それで、何が聞きたいの?】
まず一つ目…この下級魔族達って、どこからやって来てるんですか?
そもそも、魔族と言うのは、数が凄く少ない種族だったんじゃないですか?
それなのに、大量の魔族が現れるのが疑問でして…。
【そう言う事ね…確かに《純魔族》》と呼ばれる者は、既に、この世界には殆ど居ないわ。】
【確か…せいぜい20~30人程度だったはずよ?】
純魔族?上級魔族とは違うんですか?
【あぁ…こっちとそっちでは、呼び方が違ったわね。】
【その上級魔族と呼ばれているのが、純魔族よ】
それじゃ、中級とか下級とか呼ばれている魔族は何て言うんですか?
【え?私は普通に魔族とか劣化版って呼んでるけど…確か、ちゃんとした名称があった気が…。】
あ~…無理して思い出さなくても良いですよ?
そんなに期待はしてませんので…。
で、次の質問なんですけど…何で、こんなに下級魔族…レッサーデーモンが多いんですか?
【あぁ、それは簡単ね。】
【純魔族と言うのは
【動物や知能の低い魔物が下級魔族…で、知能の高い魔物が中級魔族となるみたい。】
…でも、純魔族は20~30人しかいないのに、下級魔族は大量にいますよね?
ここまで来るのに1000体以上じゃ余裕で倒してますよ?
【それが問題なのよ…純魔族は精神体だけあって、自分の身体を大量に分裂させて、それを取り憑かせているの。】
【で、それが下級魔族と言った、小物になる訳…実際に、純魔族が10人もいれば、下級魔族500体位にはなれるはずよ?】
うわぁ…純魔族1人で50体の下級魔族になれるのか…。
とは言え、これは貴重な情報を聞けたのには間違いない。
後は…現・魔王の目的なんて分からないですよね?
【えぇ、それに関しては、私達も頭を悩ませているわ。】
【そもそも、零のヤツが地上の女に恋をしたのが魔王を生み出す切っ掛けとなった訳だし…。】
えぇ、ですが…僕の中の零は彼女を見付けましたから…。
【そう、それなのよ!同じ零なんだから、もう片方が見付けたと言うのは分かるはず…。】
【それなのに彼女を捜していみたい…でも、場合によっては虐殺までしている。】
【つまり、今の魔王は、彼女を捜していない感じなのよ…。】
う~ん…もしかして、彼女以外の誰かを捜している?
しかも、殺しても問題ないほどの誰か…果たして、それはいったい誰なのか…。
【他に何か聞きたい事は?】
いえ、特にないですね…それに、今日は話し掛けましたが、まだ騙していた事は許してませんので…。
【う、うぐっ…で、でも…それは、零のヤツが…。】
先生、言い訳はいりません…どう言い繕っても、騙していた事は事実なんですから…。
それよりも、そろそろプリン達が来ますので、お話は終わりです。
気が向いたらまた連絡しますよ…気が向いたら…ね。
【分かったわ…じゃ、またね…。】
はい、またです…。
「さて、こちらの準備はこれで終わりだな…みんな、短冊に願い事は書いたかな?」
背後から近付く複数の足音に向けて、僕は声を掛ける。
「はい、ですが、みんな同じ願い事に成っちゃいましたけど…。」
と、プリンが代表して言う。
「へ~…どんな願いなんだ?」
何となく答えは分かっているんだけど、違っていたら恥ずかしいので、敢えて尋ねる事にした。
「「「「いつまでも、あなたと一緒に居られます様に!」」」」
うん、予想していた答えで安心だ。
「なるほど…それなら、僕の書く願い事は一つしかないね。」
僕は急いで自分の短冊に願い事を書く…そして、みんなの短冊と一緒に、笹によく似た植物に吊す。
そこには…『いつまでも嫁~ズと一緒にいられます様に!』と書いてある。
【そうね…こんな願い事なら、叶えても良いよね?ね、おじぃちゃん!】
そう微かに聞こえた気がしたのは、気の所為だったのかもしれない…。
何はともあれ、僕の願い事見たみんなは、頬を赤く染め『はい、いつまでも一緒です。』と返事をしたのだった…。
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