281ページ目…護衛依頼【11】

 突然の下級魔族の襲来により、一同、騒然となった物のプリンの魔法を軸に苦戦する事無く、無事に倒す事が出来た。

 そして、魔物同様に魔石と一振りの剣をドロップした。

 僕は、直ぐさま、その剣を


 僕の特殊スキルの一つでもある〖神眼しんがん〗の効果により〖鑑定〗をした結果、見えたのは…。


「『魔剣:クルシマス』…攻撃を与えた敵に対して傷が治り難くなる呪いが付与されている剣か…。

 トドメを刺すのを目的とするより、長期戦や敵に傷を負わせてダメージの増加…拷問とかに使うのがベストと言った所か…。」

「へ~、カタリベさんは〖鑑定〗が使えるんですね。」


 と、リーナさんが聞いてくる。

 しまった、つい、何時もの癖で、そのまま〖鑑定〗をしてしまった…。


「えぇ、お陰で薬草取りとかの時は、かなり助かりますよ?」


 我ながら、何とも下らない誤魔化し方だ…と、自己嫌悪してしまう。


「オイ、リーナ…そんな事より、ドロップ品の分配の方が優先だ。

 そもそも魔剣なんて、捨て値で売っても金貨10枚は下らない。

 しかも、協力して倒したとは言え、殆どプリンさんが倒した様な物だ。」

「え~、でも、トドメを刺したのは私達じゃん?」

「いや、あれだけの威力のある魔法だ…俺達がトドメを刺さなくても滅んでたはずだ。」


 と、ここで今まで黙っていた男が声を出す。


「そうですね…ケビンの言う通り俺達の攻撃が当たる前から既に崩壊が始まっていましたから…。」

「残念…ガルフがそう言うなら信じるしかないか…。」


 どうやら、先程の男は『ガルフ』と言う様だ。


「オイオイ…俺の言う事は信じられないのかよ…。」

「え?だって、ケビンだし?」


 そう言って、その場から走って逃げ出すリーナ。

 そして、ケビンは…と、言うと…。


「おまッ!?ちょっと待て、リーナッ!」


 それだけ言うと、ケビンはリーナさんを追い掛ける…何とも仲の宜しい事で…。

 とりあえず…仲の良い二人は放置する事にして残ったメンバーでドロップ品に関して話し合う事にした。


◇◆◇◆◇◆◇


 結局、追い掛けっこが済んだのはそれから5分は経った頃だろうか?

 二人ともハァハァと息を切らして戻ってきた。


「お前達、もう話し合いは終わったぞ?」

「嘘ッ!マジで!?」


 ガルフと呼ばれていた人がケビンに声を掛ける…雰囲気的に、おそらくリーナさんの次に偉いサブリーダーなのであろう。


「へ~…で、どうなったの?」

「うむ…ケビンとリーナには悪いんだが…。」


 ここで少し間を開けるガルフさん…二人は『ゴクリッ』と喉を鳴らす。


「魔石と魔剣は俺達が貰って良い事になった。」

「「…はい?」」

「いや、だから…魔石と魔剣は俺達が貰って良い事になったと言ったんだが?」

「ガルフ、それの何処が悪いんだ!

 むしろ、良い事じゃねーか!」

「そうよ、ケビンじゃあるまいし、それの何処が悪い事なのよ!」


 はて?ケビンだと納得がいくのだろうか?


「落ち着け二人とも!今から、ちゃんと説明をする。

 つまりはこうだ…その二つの物を手に入れる変わりに、俺達は聖なる武具を数点渡す事になった。

 ちなみに、すでに取引は成立しているから文句は聞かない。

 そもそも、二人して遊んでいたのが悪いんだからな?

 で…だ、話を戻すが、こちらからは聖なる武防具の内、ロングソードと盾、それから予備の武器として槍を…こちらは下級魔族の魔石と魔剣を手に入れた。」


 まぁ、こちらの方が目的の物を直ぐに揃える意味もあるから、ケビンさん達に、少し得になる取引だった。


「なぁ、ガルフ…それだと、俺達の方が少し得してんじゃないか?

 下級魔族とは言え、魔族の魔石ともなれば、よく分かっていない魔族の研究の材料にもなるから高値で売れるんだぞ?」

「あぁ、そうだな…しかも、冒険者ギルドには『俺達』が倒した事にして良いって話だ。」


 つまり、時間短縮の意味合いも含めて、下級魔族討伐の手柄もオマケで付けてあげたと言う訳だ。


「はぁ~?ちょっとカタリベさん、それはどう言う話なんだ?

 下級魔族を単独のパーティーで倒したともなれば、ドラゴンほどではないにしろ、それだけで冒険者ギルドの評価は高い物になる。

 その手柄を、おいそれと他人にくれてやる意味が分からんぞ!」


 あぁ、怒りの矛先がこちらに来たとおもったらそう言う事か。

 確かにガルフさんの説明じゃ、説明不足だもんな…仕方がない、説明するか…。


「ふむ…まぁ、その通りだね。

 ソレについてはガルフさん達と既に話し合ったんだが…簡単に言うと、装備品が揃ったから、もうダンジョンに用はなくなったんだよ。」


 元々、アイアンさんの装備集めの手伝い護衛が仕事である。

 その為、装備が揃ったのであれば、いつまでも此処にいる必要が無くなってしまったのだ。


「で、その結果、僕達はもう地上に戻る事にした。

 つまり、同盟は此処で終了って事になる。

 そうなると、先程、今から一緒に戦うって約束を守れない事になる訳で…。

 まぁ、同盟の約束は装備が揃うまで…と言う約束だから、約束を破った事にはならないんだけど…それだと気分的に嫌でしょ?

 だから、そのお詫びの印ペナルティーとして…って事で、下級魔族討伐の手柄は差し上げようかと…。」


 まぁ、条件として破格ではあるのだが…。


「チッ…本来ならバカにするな!と起こる所だが…お詫びの印…じゃ、仕方がないか…。」

「そ、そうね…お詫びと言うなら、十分な報酬だわ…。」


 まぁ、普通なら、そんな反応になるよね…特に、この二人は苦労せずにそれだけの報酬が手に入ったのだ。

 もしかしたら…上手くいけば、その評価によってはAランクの冒険者に昇進する事が出来るかも知れない。

 それだけじゃなく魔剣まであるのだ…故に悪い話ではないのだから…。

「わ、分かった…そう言う事なら、ありがたく貰っておく事にする。」

「えぇ、遠慮無く受け取って下さい。

 それで…その事で話があるんですが…。」


 と、僕はケビンさんに話し掛ける。


「ん?話とは?」

「はい…先程も言いましたが、僕達はこれから街に帰るつもりです。

 それで…僕達が帰ると言う事は、帰り道に万が一の事があるかも?と考えると食料やらを分ける事が出来なくなるんですよ。

 で…もし良ければ、一緒に帰りませんか?

 ぶっちゃけた話…貴方達も、ここで無理して怪我やらをするよりは、一度引き返して体勢を立て直してから再度トライした方が、二度手間になるかも知れませんか、安全だと思うんですが…。」

「あ~、うん…それは確かに…だ。

 スマン…だが、コレは流石に俺だけで決める事は出来ない…少し間って貰って良いか?

 恐らく、一緒に帰る事になるとは思うんだが…みんなと話し合う時間を貰えないだろうか?」

「えぇ、構いませんよ?どの道、もう少し休んでから…って話で、今すぐ行動する訳じゃないんで…ね。」


 と、僕はケビンさんに伝える。

 そもそも、安全地帯セーティーエリアでの休憩中にダンジョンとは関係ない下級魔族が乱入してきたのだ。

 当然ながら、下級魔族の乱入で休憩は不十分…そんな状態で帰るの強行するつもりはサラサラない。

 しっかりと休養して気力体力共に回復してからの方が絶対に良い…安全第一なのだ。


「とりあえず、一緒に帰るにしろ帰らないにしろ…まだ暫く休憩してからになるのでゆっくり話し合ってくれて良いですよ。」


 僕はそう言うと、プリンを連れて再びテントに戻り眠りにつくのだった。


 追伸:あれだけの騒ぎがあったのに、アイアンさんは先程の疲れからテントで寝てました…ちゃんちゃん。

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