264ページ目…奇妙な同行者【3】

「GAOーーーーーーー!」


 現在、最下層に辿り着いた僕の目の前にドラゴンが居る。

 ただし、僕の目に映るドラゴンは、本物のドラゴンではない。

 そう、何故なら…僕の目には竜人…ドラゴニュートと呼ばれる種族だとハッキリといるのだ…。


◇◆◇◆◇◆◇


 第20階層にあった転移魔法陣が生きていた事により、このダンジョンが死んでいない事に確信を持った僕は、奇妙な同行者であるホーンラビットの案内で更に下層へと向かう。


 まぁ…相変わらず、魔物も出てこないので暇ではあるのだが…。


 そんなこんなで更に奥へと進み…第40階層の転移魔法陣を見付け、一休み…その後、更に階下へと進む。

 ダンジョンの規模や作りからして、僕のダンジョンよりも賑わっていたのが見受けられる。

 だからこそ、このダンジョンがこんな風に廃墟みたいになっているのが納得がいかなかったりするのだが…。


 そもそも…ダンジョンと言う物は、人や他の生き物がいれば、その分ダンジョンポイントが入手出来る。

 そして、そのポイントを使い、更に便利なようにしていくのだから、余程、下手な事をしない限りはダンジョンが廃れるなんて事はないはずだ…と、個人的には思っている。


 だけど、このダンジョンの規模を見る限り…ダンジョンポイントが枯渇して廃れるなんてのは、あまりにも不自然な事だと思う。

 そもそも、僕のダンジョンはもともとが初心者ダンジョンだったとは言え、それでもダンジョンポイントが枯渇するような問題には、まだ遭遇していない。


 だとすると、幾つかの仮説が経つ。


 1つ目は、ダンジョンマスターが何らかの原因で存在しない場合。

 これは、僕のダンジョンでも言えるのだが、サブダンジョンマスターを配置すればどうとでもなる。

 但し、ダンジョンマスターが物理的に消滅していたら、サブダンジョンマスターがダンジョンマスターに繰り上がるのだから、そいつが、そのままダンジョンを放置するのは考え辛いので、この可能性は低いと思われる。

 ちなみに、ダンジョンマスターになる者が、誰かの奴隷だった場合、ダンジョンマスターの方が高位の存在である為、奴隷紋は無くなり、そのままダンジョンマスターとしてダンジョンを支配する事になるはずだ。


 2つ目は、もっとありえない事だと思うが、ダンジョンポイントを枯渇させる程、使い込んだ可能性だ。

 ただ、ダンジョンマスターになった時に、その手の知識が勝手に刻み込まれる為、こちらも可能性は低い。


 他にも幾つかあるのだが、どれもあり得ないレベルの話なので割愛する。


 で、そんなこんなで最下層まで来たのだが…今までであった魔物は全部で10匹も居なかったと思う。

 そして…今まで以上に大きく豪華な門を…ラスボスの部屋へと続く扉を開いたのだった…。


◇◆◇◆◇◆◇


 そして、冒頭に戻る…まぁ、此処に来るまでの事を思い出しては見た物の、全くと言って良いほど、無意味だと思うのだが、念の為の回想だったりする。


「で、人を呼んでおいて、何を遊んでる訳?

 まったく…用がないなら帰るぞ?」

「え?ちょ、ちょっと待った!巫山戯ふざけたのは悪かったが…コレには事情が…。」


 竜人…ドラゴニュートが竜に変身したまま、声を掛けてくる…しかも、地味に慌てているのが分かるほどに…。


「で、マジで何がしたい訳?」


 僕はジト目でドラゴン姿のドラゴニュートを見る。


「い、いや…大事な話をする前に、まずはビビらせて主導権を握ろうかと…。」


 どもりながら答えるドラゴニュートに呆れながら一言伝える。


「…帰って良い?」


 …と、すると慌てて竜の姿からドラゴニュートの姿へと戻り、僕に話し掛けてくる。


「ふ、巫山戯たのは悪かった!だが、本当に大事な話があるんだ…だから、今帰られたら困る。

 この世界を救う為と思って、話を聞いてくれ!」


 悪巫山戯をしたのはともかく、この世界を救う為…と言われたら、流石に少しだけ話を聞こうと言う気にはなる。


「チッ…話だけは聞かないと…か。

 但し、今度、巫山戯た真似したらマジで帰るからな?」

「わ、分かった…話を聞けば、俺が敵じゃないと言う事が分かるはずだ。

 …が、その前に1つだけ聞きたい事がある…良いかな?」

「聞きたい事…ね、答えれる物なら答えるよ。」

「あぁ…助かる。」

「それで?」


 どうせ、くだらない事だと思うので、僕はぶっきらぼうに答える。


「い、いや…大した事ではないんだが…何でドラゴンを見てビビらないのかな?と思ってね。」

「うわ…マジでくだらない質問だな…。

 あのさ…そもそも、このホーンラビット…おそらく、あんたの使い魔かなんか何だろうけど…今も、脛の辺りをスリスリされてるの分かってる?」


 まるで褒めて~と御強請りしている様である。


「ん?そう言えば…されてるな…だが、それと何の関係が?」


 え…マジで分かってないのかよ…。


「貴方にとって、ドラゴン=凶暴…みたいなイメージなんだろうが、ホーンラビットみたいな臆病な魔物が甘えてるドラゴンだぞ?

 そんな相手を怖いと思う方が間違ってる。

 それに…だ、そこら辺のドラゴンなんて、僕にとっては脅威ではない。

 だったら、ビビる事なんて無いんじゃね?」

「…はい?ドラゴンが脅威じゃないのか?」

「うん…ぶっちゃけ、そこらのドラゴンなんて本気を出したら雑魚だね。」


 まぁ、〖魔王化〗すれば大概の物は雑魚になるんだけどね…。

 しかも、プリンがいれば更に強力な〖魔神化〗も出来る…そうなれば雑魚どころかカスにもならん。


「ははは…勇者セイギでもドラゴン相手だと、それなりに苦労すると言うのに、また大きく出たな!」


 勇者セイギ…とは、もちろん、僕のじぃちゃん…正義マサヨシの事だ。


「えっと…勇者セイギって…あんた、じぃちゃんの事知ってるの?」

「…はい?セイギがじぃちゃん…って、いやいやいや、そんなはず無いだろ…だって、彼奴は…。」

「あぁ、異世界から来たんだからってヤツ?僕も異世界から来てるから…って信じられないかも知れないけど…。

 ちなみに、ばぁちゃんはこっちの世界の人でお姫様だったってのは、こっちで冒険する内に知ったんだけど…ビックリだったね。」

「は、ははは…まさか、本当にセイギの孫が俺の元を尋ねてくるとは…しかも、このタイミングで…これは偶然か?いや、奇跡なのか?」


 と、興奮するドラゴニュートを横目に…やべ、さっさと帰れば良かったか?と思った。

 これはまた変なのに関わり合ったかも…と、このドラゴニュートの興奮が治まるまで、しばしの間、後悔するのだった…。

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