189ページ目…偵察【4】

「うわッ!?最悪だ、蜘蛛の巣が顔に付いた…。」


 僕達は地下へと通じるであろう階段を、トラップに警戒しながら降りていた。

 だが、トラップなどの不自然な物を探すあまり、天然のトラップである蜘蛛その巣に引っ掛かってしまったのだ。


「ご、ご主人様!大丈夫ですか?」

「あぁ、ただの蜘蛛の巣だから問題ないよ。」

「あ、あれ?そう言えば…蜘蛛の巣が張ってあるって事は、人が通っていないのでは?」


 と、クズハが疑問の声を上がる。


「いや、そうとは限らないよ?

 こっちの世界では、どうか分からないけど…僕の住んでた世界では、蜘蛛は一日で巣を張り替える蜘蛛がいるからね。」



 まぁ、一日とは言った物の、実際には数時間で巣を張り直すらしい。


「つまり、蜘蛛の巣は参考にならない…って訳だ。」


 ただまぁ…蜘蛛の巣は当てにならないが、埃の積もり具合を見る限りでは既に数ヶ月は誰も通っていない様な気がするんだけど…ね。


「ご、ご主人様、扉が見えます。」


 クズハの言う通り、扉が見える…どうやら、階段が終わりの様だ。

 但し、ちゃんと開いてくれるかは別問題なのだが…。

 僕は、その扉のノブに手を掛けようとして、ふと昔見た映画を思い出す。


 旅行に置いてきぼりにされた悪ガキが泥棒を撃退する映画だ。

 僕は念の為、履いていた靴を手で持つと、靴底のゴムで絶縁を施すとゆっくりとノブを回す。


「ふぅ…考え過ぎだったか…。」


 残念ながら、扉は何事もなく開いた。

 いや、別に何かあって欲しい訳じゃないから、残念ではないのだが…。 


「あ、あの…何がどうなったんですか?」

「あぁ、トラップが仕掛けられているのかと思って、警戒したんだよ。」

「そ、そうなんですね…いきなり靴を持ったりしたので、どうしたのかと思っちゃいました。」

「あぁ、僕の住んでた世界の話なんだけどね。

 泥棒を撃退するのにドアノブに電気を流す電撃を付加する話があったんだよ。

 それを、ふと思い出したから…つい、念の為に…まぁ、結局は何も無かったんだけどね。」

「な、何もなくて良かったです…それより、電撃は靴底で防げる物なのですか?」

「靴底と言うよりは、ゴムが絶縁体…電気を通さない性質だから防げるんだよ。

 但し、絶対防御って訳じゃないから、過信しちゃダメだぞ?

 特に、この世界の法則は僕の住んでた世界の法則とは違うみたいだからね…。」

「は、はい…。」


 そんなやり取りをしながら、僕は慎重に扉を開けていく。

 扉を開けた瞬間爆発なんて事も考えながらの作業なので自ずと、ゆっくりゆっくり…亀の歩みみたく慎重に慎重を重ねての作業となる。

 そして、とうとう完全に扉を開けきったのだった。


「こ、ここは…倉庫ですか?

 何やら、色々な物が散乱していますが…。」


 そう…クズハの言う通り、色々な物があちこちに置いてある。

 新しい感じの物やら、なにやら年代を感じさせる物なども多々置かれている。

 もしかしたら、アンティークなのかもしれないが、興味のない僕にしてみればガラクタにしか見えない訳で…いや、待てよ?〖神眼〗で良いじゃん!


 そう思い、改めてみたのだが…。


「やっぱ、ガラクタじゃん…見て損した…。」


 どれもこれも、そこら辺のお店で売られている様な安物ばかりだった。

 まぁ、高価な物があっても、持って帰る訳じゃなかったから良いんだけどね?


「っと、そんな事より…どうだ?中に入る扉見付かったか?」

「い、いえ…見付かりません。」


 それほど広くない部屋にも関わらず、僕達が入って来た扉しか見付からないのだ。

 だが…そうだとしたら、おかしな話になる。

 何せ、この部屋には大きな物もあるのだ…それを必要ないからと言って、わざわざ家の外に出て、地下への階段を下りて運ぶだろうか?

 一部の変わり者はするかも知れないが、基本的には家の中から収納するはずだ。

 更に言うなら、この部屋の扉より大きな物まであるのだから、何処かに扉があるはずなのだ。

 なら、その家の中に入る扉は?と、なり…現在、扉を探索中なのだ。


◆◇◆◇◆◇◆


「おっかしいな…何でないんだろう…。」


 この地下室に入り込んで、扉を探索し始めてから30分は経過したであろう頃、突如、壁の向こう側に…人の気配がした。

 僕はクズハと隠れ、気配を消す…これで、直接見られない限りは、見付かる可能性はかなり減ったはずだ。


 すると、突然『バチバチバチッ』と音が鳴ったかと思うと今まで壁だった場所に扉が現れる。

 危うく、声を出しそうになるのをグッと堪え、ついでにクズハの口も塞ぐ…どうやら、クズハも声が出そうだった様で、もう大丈夫と言う感じでコクコクと首を縦に振った。

 とは言え、流石にに声を出す訳にはいかないので僕は〖念話〗を使い、クズハに話し掛ける。


〔クズハ、絶対に物音を立てない様にしろよ?〕

〔は、はい…ですが、壁に扉が急に現れるなんて…ビックリです。〕

〔あぁ…僕の〖魔法:模型創造モデリング〗とは違うタイプの技みたいだね。

 しかも、壁と扉では材質が違うはず…いったい、何をどうやったのやら…。〕

〔だ、だったら…ご主人様がちゃえば良いのでは?

 もしかしたら、ご主人様が覚えれる物かも知れませんし…。〕


 確かにクズハの言う通りである。

 使える手は多いほうが良いのは常識だ…まぁ、多すぎて迷うと言う事もあるが…。

 何はともあれ、僕は扉を開けて入る人物を、今か今かと待ちかまえるのであった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る