151ページ目…オークション【3】

「世界と世界を繋ぐ門、我が意志、我が名を持ちて命ず…我が望み地場所への門を開け…〖魔法:空間転移ゲート〗!!」


 僕は、相変わらずの、なんちゃって呪文を詠唱するる。

 但しその中身は、ダンジョンへ〖魔法:空間転移ゲート〗の魔法を『無詠唱』で使っただけである。

 当然、ラオンさんからは『何だ、その変な詠唱は?』と言われたが、ひとまず聞こえないフリをして無視をする。


 そして…僕達は、ダンジョンマスター専用の転移の指輪を使い、ダンジョンの第6階層まで転移をした。


「は、話には聞いていたが…やはり実際に体験するのとは全然違うな。

 で、ここが例のダンジョンなんだな?」

「えぇ…ちなみに、ここはダンジョンの第6階層です。」


 最初に〖空間転移〗で移動したのは第11階層にあるダンジョンマスターの部屋。

 その後、ラオンさんがその部屋に入った瞬間、転移の指輪を使って第6階層に転移したのだ。

 その理由として…ダンジョンマスターの部屋は正直な話、誰も入れたくない…と言うのが本音だ。


「それで…そのオーガシリーズの性能を、ラオンさん自身で確認して貰うのが今回の目的です。」

「つまり、それが今回の厄介事…って事だな。」

「それは…意識の違いという物ですよ。

 とは言え、まずはその斧だけで戦ってみてください。」


 僕はそう言うと、〖念話〗を使いスライムに指示を出す。

 すると、目の前にオーガが1体出現する。


「では…ラオンさん、お願いします。」


 僕の呼び掛けで、ラオンさんはオーガへ攻撃を開始する。

 とは言え、超重量武器に当たる武器なので当てるだけでも一苦労しそうなそれを、ラオンさんは、なんとか制御して攻撃する。

 その後も何度も攻撃を仕掛け、とうとう1体のオーガを倒す事に成功する。


「おめでとうございます。」

「ふぅ…見掛けに反して、思った以上に扱いづらい武器だな。

 で、これがなんだと言うんだ?」

「では、次です…と言いたいんですが、その前に…この籠手を装備してください。」


 そう言うと、僕はラオンさんにオーガシリーズの籠手を渡す。


「よく分からんが、それを装備すれば良いんだな?」


 まぁ、事前に話していたとは言え、言われた通りに行動してくれるラオンさん…本気マジで話が分かる人で助かる。


「おう、装備終わったぞ…次は何をすれば良いんだ?」

「いえ、大した事は…先ほどと同様、オーガと戦って貰います。」

「またか!あまり面倒な事はさせるなよ?」


 ラオンさんの愚痴を無視して、再びスライムに指示を出す。

 すると先ほど同様にオーガが目の前に出現する。


「では、どうぞ。」

「チッ…面倒くせ~なっと!」


 面倒くさいと良いながらも、先ほど同様に、バトルアックス…大きな斧をを振り回す。


「…ッ!なるほど、こういう事か!」


 何度か斧を振るっただけで、その違いが分かったのだろう。

 ラオンさんは先ほどよりも短時間でオーガを倒す事に成功する。


「どうやら分かって貰えたようですね。」

「あぁ…この籠手を装備しただけだと言うのに、目に見えて使い易くなった。」

「では、あまり時間を掛けるのも何ですから、残りの装備を全部装備しちゃいますか。」


 僕はそう言うと、兜、鎧…更には、靴までも渡す。

 ラオンさんは戸惑う事無く、それらを全部装備する…そして、何度か斧を振ってみる。


「なるほど…な、これは凄いな。」


「では、物は試しと言う事で…もう一度だけ、オーガと戦って貰いますが、よろしいですか?」

「あぁ…任せろ。」


 その返事を聞き、スライムに合図を送る。

 そして、三度現れたオーガを倒す様にラオンさんに合図する。


「うおぉぉぉぉぉ!」


 雄叫びを上げてオーガに攻撃を仕掛ける。

 その攻撃により、オーガは倒され塵とかした…。


「ってな訳で…このダンジョン産のシリーズ装備の威力は理解して貰えましたでしょうか?」

「あぁ…確かに、これなら高く売れるだろうな…。

 特に、王族や貴族連中とかに…だが。」

「ちなみに…現在は、ゴブリン、オーガ、リザードマンの3種類が用意されています。」

「…それらも5種類ずつあるのか?」

「いえ、ゴブリンとリザードマンに関しては盾が付きますので6種類ですね。

 代わりに、武器が巨大な斧ではなく、ゴブリンは短剣、リザードマンは長剣です。

 ただ、ダンジョンをもっと活性化させない事には、すぐには全種類用意なんて出来ないんですけどね?」

「なるほど…お前の話は分かった。

 それで、このシリーズをオークションで売って欲しいと言うのだな?」

「えぇ…ただし、売るのはそのバトルアックスだけでお願いします。」

「ん?この防具は売らないのか?」

「はい、今の所は…ですが。

 それに関しては、ドロップ報酬を持ち出しただけなので…戻しておかないと色々と問題が発生しますので…。

 ちなみに、そのバトルアックスをオークションに出す際には、シリーズの情報をしっかりと流してくださいね?

 そうすれば、このダンジョンに人が集まり色々なドロップ品が手に入る様になりますので…。」


 まぁ、その分、ダンジョンポイントも溜まる事になる筈なので、更に報酬の種類を増やす事が出来るかもしれない。


「まぁ、そう言う事なら仕方がない…オークションの目玉商品として競売に掛けてやる。

 ただし…これ単体だと、価値が下がるから高値で取引されないと思うぞ?」

「それを踏まえた上でのシリーズの情報です。

 色々なつてを使って、ダンジョンから出るシリーズ装備の性能を流してください。」

「まったく面倒な事を…。」

「でも、今回は厄介事じゃないですよね?」

「いや、十二分に厄介事だ!グワハッハッハッハッ!」


 ラオンさんはそう言いながら笑い出さす。

 あまりにも嬉しそうに笑うので、僕も釣られて笑い出す。


「さて、そろそろ戻るとしよう。

 あまり、ギルドを留守にする訳にはいかないからな。

 これでも、お前と違い、急がしい身だからな…先ほどの場所に戻してくれ。」

「はい、ですが…その前に、装備は返してくださいね?」

「チッ…厄介事だけじゃなく、お礼として、こんな良い物を持ってくれば良いんだがな!」

「えぇ、ダンジョンが潤い余裕が出来れば、冗談抜きで本気マジでお届けしますよ。」

「全く君と言うヤツは…皮肉もならん…。」

「よく言いますよ…人前に出ない時は、お前と呼ぶ癖に…。」

「まぁ…他の人の前ならば格好付ける必要もあるが…本音で語れる友の前で格好付ける必要なんてないからな。」


 そう、色々と迷惑を掛けてしまうが、ラオンさんはの立ち位置は『友』なのだ。


「えぇ、だからこそ僕も色々と頼ってしまうんですけどね…。」

「まぁ、頼られるのは構わんが…だが、本気マジで厄介事を持ち込むのは勘弁なんだぞ?」

「それは…流石に、わざとじゃないので、ご了承をとしか…。」

「ったく、まぁ…オークションの件は任せておけ…そうそう悪い様にはならないはずだ。

 だが、このシリーズ…お前達以外に守護者を倒せるヤツなんて居るのか?」

「あぁ…その件に関しては大丈夫ですよ。

 何せ…今はまだダンジョンが完成してないから、先に進ませない為に用意したヤツであって、ダンジョンが完成するにつれ、守護者に関しては十分倒せるヤツを用意するつもりなので。」

「そうか…でもまぁ、あまり無茶なダンジョンにしないでくれよ?」

「えぇ…これでも、ラオンさんに迷惑を掛けたくないですからね。

 それに、僕自身、基本的には人死は望んでませんから…。」


 僕はそう言うと、ギルドへと転移してラオンさんにオークションの事を改めて頼むと家へと帰っていくのだった…。

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