137ページ目…ダンジョン・オープン記念日【2】

 そんな訳で、再びやって来たダンジョンマスターの部屋…ここには、命令に従う端末として小さいスライムが居るだけである。

 もっとも、このスライムには自我と言う物は殆どなく、僕を襲わない…程度の知能しかない。


 その為、何かするにしても僕かプリンが指示を出さないと、まともに行動する事すらない。


 なので、僕は無限庫インベントリから食料を取り出すと、スライムの前?に置く。

 今更ながら、スライムの正面っ何処なんだろう…と思う。


 プリンに関しては、何となく分かるんだが…他のスライムには関してはまったくと言って良いほど分からない。

 まぁ、お腹を空かせていると可哀想だから…と言う理由で、食料の差し入れな訳だ…。

 そうしないと、この第11階層には食料がない…ましてや、ダンジョンマスターはダンジョンの外に出られない…上手く食料を手に入れる事が出来なければ、下手すると餓死してしまうのではないのだろうか?


 僕は不安に思いつつ、ダンジョンコアに手を触れる。


「えっと…第5階層の守護者の事で聞きたい事がある。」


【了解しました…どうぞ。】


「ガーゴイルの装甲が、予定よりもかなり強固になってたみたいだが、原因を知りたい。」


【おそらく…ダンジョンの壁を素材として使っているからではないかと推測いたします。】


 やはり、ダンジョン核も同じ意見か…だとすると…。


「つまり、第5階層には、相当量の魔素マナが貯まっていると言う訳か?」


 そう…ダンジョンの壁は、マナが濃ければ濃いほど、硬く強固な物になっていく性質がある。

 その所為で『零の使い魔』と名乗るヤツが作り出したガーゴイルに僕は死ぬほど苦労したのだ。


【いえ、確かに下層へ進めば進むほど魔素は濃くなる傾向はありますが、誤差の範囲かと思います。】


 つまり、本気で調査団の連中は、装備が理由で戻ったと言う事のか?

 いや、それ以前に…魔素を吸収した壁と言うのは、ここまで有効に使える物だったのか?

 僕が作り出した高速移動用ゴーレム…通称:車…どうりでプリンが木にぶつけても車が損傷しなかった訳だ。


 とは言え、S級の冒険者もいたのに、ガーゴイルを破壊出来ないとなると…上級、最上級用として作っているダンジョンが無駄になる。


 まぁ、調査団も装備を整える…と言う話だから、それ相応な武器とか…それこそ、ガーゴイルを破壊出来る程の武器を持って来る事であろう…。


 でもまぁ、これでダンジョンの壁は破壊不可能…と言う噂の真相がわかった。

 つまり、強い魔物が集まる下層には、当然、魔素も濃くなる。


 その為、魔素の影響で硬くなった壁は、強い魔物の攻撃すら弾き返すほど強化されるのを目撃した人達の噂だったんだろう…。

 そう考えると、その壁を破壊した…じぃちゃんに教えて貰った『魔神剣』の威力に冷や汗が出る…。

 記憶を取り戻す前…プリンと最初に戦った時に感じた、制御をミスると死ぬと言う感覚に間違いがなかったと言う事か…。


 とりあえず…第5階層の守護者をもう少し考えないとダメと言う事か…。

 新たに出てきた問題点はある物の…何はともあれ、明日の新規オープンの為に、やれる事をやっておこう。


 そんな訳で…色々と魔物の配置を換え…更に、ポップ…再度、出現する時間帯の調整もする。


 これで、大量に冒険者が流れ込んだとしても、ある程度は進むのを遅らせれるだろう。


 また、第5階層の守護者を一時的に、ダンジョンの壁を素材としたガーゴイルではなく、適当な石やらで作り上げたガーゴイルへと交換する。


 まぁ、その代わりと言っては何だが…守護者は第6階層に放ち、遊撃部隊とする。


 運が悪ければ守護者との戦闘でリタイアして貰おう。


 ちなみに…調査団のお陰で、多少はダンジョンポイントが貯まった為、第8階層の大きさを変えるのは後回しにして魔物の設置を優先にする。


 その際、リッチやバンバイアなどの強力なアンデッドやらも設置する。


 余談ではあるが、それ以外にも強そうな魔物を配置した所で、ダンジョンポイントは再び底をついた。

 あとは…明日以降に、どれだけのダンジョンポイントが手に入るか…だ。


 ここまで準備が完了した所で、僕はダンジョンの入り口に転移して、外に出る。

 と言うのも、ここへ来る時に入り口から入ったのだ…当然、誰か見ていたかもしれない。


 また、そのまま出てくるのを見張っていた場合、僕が外にいたら変だからだ。


 そもそも〖魔法:模型創造モデリング〗〖魔法:擬魂付加フェイクソウル〗〖魔法:空間転移ゲート〗…この3つの魔法は、この世界では珍しいらしい…僕が使えると知られれば、何かの事件に巻き込まれるかもしれない…と、ラオンさんに注意されているのだ。


 まぁ、移動が面倒だったりするので多用しているのは秘密なんだが…。


 とりあえず、やる事は済んだ…後は、明日に備えて早く寝る事にしよう…僕は、無限庫から車を取り出すと『安全運転』でメルトの町まで帰るのだった…。

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