127ページ目…ダンジョン再び【5】

「う~ん…やっぱり、何もないな…。」

「そうですね~…。」


 閉じこめられて《アレ》から、僕達は何が起こるか分からないが。ひたすら待った…。

 1分、3分、5分、10分…どんどん時間が経つが、一向に変化がない。

 そして、1時間が経過した頃、僕達は、この何もない空間を調べ始めたのだが…やはり、何もなかった…。


「ダメだ、全然分からん…。」


 僕はそう言うと、床に大の字になって寝転がる。

 それを見ていたレオナも寝転がろうとして…止めた。


「ん?どうした?」


 レオナに声を掛けると、彼女は少しだけ不安な声で答えた。


「い、いえ…何でも…じゃないですね、実は、寝転がったら鎧が重くて起き上がれないと嫌だな…と…。」


 まぁ、確かに鎧は邪魔だが、問題なく起き上がれると思うんだが…。


 とは言え、レオナはアンデッド…疲労とは無縁の存在の筈だから、わざわざ僕みたいに休憩をする必要はないのだから、別に無理して休まなくて良いと思うん訳で…。


 そんな事を考えながら僕は軽く目をつぶった。

 すると、まぶたを閉じているのと言うのに不思議な事に違う景色が見えた。

 当然、本来なら目を閉じているのだから何も見えないはずなのに…。


 僕は慌てて目を開けて、体を起こす…が、やはり、先ほどと同じ何もない空間だった…。


「な、何ッ!?急に、どうしたの?」


 急に起き上がり周囲を見渡した僕の様子にレオナが慌てて聞いてくる。

 ってか、やけに顔が近いのだが何か悪戯でもするつもりだったのか?


 と思ったが…それより、今の話をした方が良いのかもしれない…。


◆◇◆◇◆◇◆


「それって…この空間とは別に、別の空間があるって事なんじゃ…。」

「やっぱり?レオナも、そう思う?」

「だって…この部屋、何もないじゃん?」


 まぁ、そうなんだけど…でも目を閉じても何も見えないんだよな…って、目を閉じれば見えなくなるのは当たり前なんだが…。


「しかし…さっきは、何で見えたんだ…。」


 誰に言うでもなく呟いた独り言に対し、レオナが意見を言う…そんなに大きな声で呟いた訳ではないのに、良く聞こえたな…と感心する。


「さっき…って、時だよね?」

「あぁ、そう…だ…な…。」


 僕は、顎に右手を添えて考える…確かに、僕は寝転がっていた…しかも、彼女の言う通り大の字になって…だ。

 だが、そんな事があるのだろうか?

 大の字になって寝転がり目を閉じるのが鍵なのか?


 とは言え、今できる事はそれだけだ…。


 しかし、他に何も思い付かないので、実験を兼ねて僕は再び寝転がる…そして目を閉じる…。

 だが、何も見えない…ならば!と大の字になり目を閉じる…すると、先ほどの様な景色が目に飛び込んでくる。


 試しに片眼だけだけ開けてみるが、やはり景色は消滅える。


「ど、どう?」


 レオナが心配な顔をして…るかは、鎧が邪魔で分からないが、心配そうな声で訪ねてくる。


「なるほど…目を開けると消滅えるのか…。」


 それに対して、返事をすることなく、僕は実験を再開する…。

 実験とは言ったが、大した事をするつもりはない。


 僕は再び大の字に寝転がって目を閉じる…そして、僕はそのまま立ち上がる。

 もちろん、今度は目を閉じたままだ…。


「ちょっと、無視しないでよ。」

「うるさい!ちょっと黙ってろ!」


 僕はレオナに冷たく言い放つと、そのまま周囲を見渡す。

 目を閉じているのに周囲を見渡すと言うのは、何とも奇妙な話だが仕方がない。


 すると、丸い物が浮いてるのが見えた。


 僕は、それに触ろうと手を伸ばす…だが、あともう少しと言う所で、硬い物に防がれてしまった。


「ッーーーーー!」


 一瞬の間をおいて、声にならない声が聞こえる…僕は慌てて目を開けて驚愕する。

 何故なら、僕が触れた硬い物と言うのは、レオナが着ていた全身鎧だったのだ…。


 まぁ、ただ全身鎧を触れただけならば、まだ良かったのが…触れた場所が悪かった…。


 何故って?幾ら全身鎧とは言え、胸に手を置いていたら、常識的に考えて、流石に不味いだろ…。


「ご、ごめん…。」


 僕は慌てて謝る事にした。


「き、気にしなくて良いわよ…鎧の上からだったし…それに…ま、前もって言ってくれれば…そ、その…心の準備も…。」


 気にしなくて良いと言ってくれたから、大丈夫だったみたいだが…何言ってんだコイツは…。


「えっと、もう一度試したいから…今度は、僕が近付いたら離れて貰って良いかな?

 じゃないと、さっきみたいになったらレオナに悪いし…ね。」

「そ、そうね…その時は離れる様にするわ…。」


 レオナはそう言うと、少し下がる様に移動してくれた。


「それじゃ、もう一度…。」


 僕はそう言うと、再び大の字に寝転がり目を閉じる…やはり、別の景色が見える。

 そして…そのまま起き上がり、丸い物の方に近付いていく…。

 その丸い物は、ボーリングの玉ほどの大きさで、空中に浮いている状態だった。


 とは言え、何時までも見ている訳にはいかないので手を伸ばし玉に触れる。

 すると、頭の中に声が響いてきた。


【守護者の消滅…及び、ダンジョンマスターの死亡を確認。】

【新たなダンジョンマスターとして、貴方の情報を上書きします。】

【貴方のお名前は?】


 …はい?そもそも守護者とか言うのも倒してないし、ダンジョンマスターなんて物にも会っていない。

 まぁ、ダンジョンマスターの死亡を確認って言ってるんだから、会えるはずもないのだが…。


 にも関わらず、守護者の消滅と言われても困る…ってか、それ以前に、僕が新たなダンジョンマスターだってッ!?


 僕はビックリして目を開ける…すると、そこには先ほどの何もない空間ではなく、目を瞑って居た時に見えていた光景が見えていた。


「急に景色が変わったけど…ムゲンさんがやったの?」

「あ、あぁ…どうやらそうみたいだね…。」


 僕の後ろから聞こえてきた声に、振り向くことなく返事をする。

 当然、声の主は、先程まで一緒にいたレオナである。


「いったい、何があったの?」


 何も事情を知らないのだから仕方がないとは言え…レオナが聞いてくる…。


「それが…どうも、新しいダンジョンマスターになったらしい…。」

「…はい?」


 まぁ、普通はそんな反応をするよな…と言うか、僕も同じ感じだ…。


「とりあえず、名前を教えろって言われた…けど、これって教えて良いのか?」

「分かんないけど…教えて良いんじゃない?

 それに、教えないと、この部屋から出られそうにないし…。」


 言われてみれば、未だに出入り口は何処にもない。

 だとしたら、レオナの言う事の方が正しい気がする。


「それもそうか…。」


 僕は、何か違和感を感じながら、名前を教える事にする。


「僕の名前は、夢幻…語部カタリベ 夢幻ムゲンだ。」


 僕は、玉に手を置き、自分の名前を宣言する。

 何故、手を置いたのかは不明だが、そうしなければならない様な気がして、気が付いた時には玉に手を置いていた。


【語部 夢幻…ユーザー登録完了。】

【これより、ダンジョン作成プログラムを実行します。】

【ダンジョン作成プログラムを実行を確認…起動完了まで3…2…1…起動完了。】【メニューを表示します。】


 玉から発せられた言葉通り、目の前に、幾つもの項目を表示していく。

 そして、その中に…一つ、気になる物があった。


 それはDP…ダンジョンポイントと言う物があったのだ…。

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