124ページ目…ダンジョン再び【2】

「あ…そうそう、先に言って置くけど…回復ポーションやら回復魔法には気を付けなよ?

 一応、アンデッドだから、ダメージ負うかもしれないから。」

「はぁ?それ、今言う事?もっと早く言ってよ…そんなんじゃ、私、怪我したら回復出来ないじゃん!」

「確かにそうだけど…その為に、レベルを上げたり、進化して新しいスキルを手に入れたりするんじゃん?」

「それはそうかもしれないけど…。」

「まぁ…元々、死んでるんだから二度目の人生を楽しめ?」


 戸惑うレオナに対し、他人事の様に言い放つ。


「うわ、何それ…酷ッ!?」


 いや、酷ッ!?って言われても…そこまで面倒見てやる必要は僕にはない訳で…。

 とは言え…このままの放り出すのも、どうかと思う…仕方がない…多少、装備を強化してやるか…。


「仕方がない…ちょっと、鎧を全部脱いで…。」

「えっ…そ、それはちょっと…こんな場所じゃ嫌かな~って…。」


 何故か頬を染めて、身体をくねらせるレオナ…。


「はぁ?何言ってんだ?良いからさっさと脱げって…じゃないと、魔物が出てきたら困るだろうが!」


 僕は、少しイライラしながら八つ当たり気味で言う…すると…。


「わ、分かったわよ…ぬ、脱げば良いんでしょ…でも、初めてなんだから優しくしてよ…ね。

 それと…恥ずかしいから、後ろ向いてて…。」

「あぁ、ごめん…。」


 う~ん…八つ当たり気味で言ったのが悪かった様だ。

 それにアンデッドとは言え…やはり、着ている物を脱ぐのは恥ずかしい様で…女の子の扱いには慣れないな…。

 こんな事なら、プリンか誰かを連れてくれば良かったかな…と思う。

 ってか、鎧を脱ぐだけなのに何で恥ずかしいのだろう…まぁ、女の子の考えは分からん…って言うのは、男のさがなのだから仕方がない…まぁ、その逆もしかり…だが。


『ガチャガチャ…ゴトンッ!

 スルスル…パサッ。』


 ん?何か、鎧以外に布の様な音も聞こえた様な気がするんだが…全身鎧に、布の部分ってあったっけ?

 そんな事を考えていると、レオナから声が掛かる。


「も、もう、こっち向いても良い…わよ…。」


 やっとか…しっかし、鎧を脱ぐだけで恥ずかしいとか言われ、後ろを向かされるとか…どんだけだよ。

 そもそも、どうせ見るんだから、後ろを向く必要なんか無いだろうに…。

 そんな事を考えながら、レオナの方を…後ろへ振り向いて僕は頭の中が真っ白になる…。


「………はい?」


 我ながら、何とも情けない状態だが…この場合は仕方がないと思う。

 何故なら…レオナは、鎧どころか服すら脱いでいるのだ。

 とは言え、当然見えてはいけない部分…は、ちゃんと手で隠してはいる…。


 って、これは…敵が出たら、どうする気なんだ?素っ裸で戦うつもりなのか?


「えっと…何て言って良いのか迷うんだが…お前、何やってるんだ?」


 自分でも、もう少し言いようがあるかな?とは思う物の、呆れて上手く言葉にならない。


「え…だって、脱げって…つまり、そう言う事をするんじゃ…。」

「お前はバカかッ!そもそも…こんな危険な場所で、そんな事する訳無いだろうがッ!常識を考えろッ!

 第一…僕が言ったのは鎧を脱げだッ!服まで脱ぐとか…どんだけだよッ!!」

「えッ?えッ?え~~~ッ?!」


 やっと、自分の勘違いに気が付いたのか、レオナはその場に座り込み、一生懸命に服をたぐり寄せて自分の体を隠そうとする。

 仕方がないので、僕は後ろを向いてレオナに声を掛ける…。


「いつ敵が出てくるか分からないから、急いで服だけは着てくれないかな?

 それと…鎧を脱げと言ったのは、今から改造するつもりだからだ…。」

「は、はい…。」


 レオナは、今にも消えてしまうのではないか?と思うほど小さい声で返事をする。

 まぁ、先程の勘違いは、よぽど恥ずかしかったのだろうと推測する…。

 実際、激しく怒った様に言った僕だが…それは、僕の方こそ照れ隠しだったりするし…実際、今でも胸がドキドキしているのだが、それはレオナには教えない。


「あ、あの…服を着ました…。」


 レオナから、申し訳なさそうに声が掛かる…。

 今度は大丈夫だろうな…と、少し警戒しつつ後ろを振り返る…。

 そこには、ちゃんと服を着たレオナが…って、おいッ!


「あの…そこに落ちてるのって…。」


 そう言って、僕は床に落ちている、三角の布を指さした…。


「きゃ~~~~~ッ!」


 ダンジョン内に、悲鳴が響き渡る…しかも、音が乱反射している様で、遠くの方でも小さいながら悲鳴が聞こえる。

 所謂いわゆる山彦やまびこと呼ばれる物だ…山とかに登った時に『ヤッホー!』とか言うと、返ってくるヤツだね。

 それが、ダンジョン内で起こると言うのは、どうなんだろう…何度かダンジョンに入ったが、今までで初めての経験である。

 それはともかく…レオナは、慌ててそれを僕の目の前で穿こうとするが…。


 いや、だから…そう言うのは見えない所で…じゃないと、この世界はベタが好きなんだから…。

 っと、僕の心配はやはり的中する事となる…。


「きゃッ!…ドシンッ!」


『ひらひらひら…パサッ』


 僕の顔に飛んできて目を塞いだそれを手に取ると、大きく溜息を付く…そして、レオナに目を向け…急いで、目を逸らす…。

 僕は見ていない…例え彼女の大事な部分が見えてしまったとしても、見ていないと言ったら見ていない!


 とりあえず…僕はその三角の布を彼女に渡す。


 とは言っても、背後にいるレオナに腕を伸ばして…だから、彼女が受け取らないと大変困った事になる。


「は、早く受け取れ!」

「あ、ありがとう…。」


 レオナは恥ずかしそうに、そう言うと急いで布を受け取り身に付ける…。


「お、おまたせ…もう良いわよ…。」


 やっと着替えが終わったみたいだ…何か無駄に疲れた気がするが、まだ終わりじゃない…僕は改めて作業を開始するのだった…。

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