95ページ目…嫌な予感

「う、ううん…。」


 おや?やっと気を失っていた小さな妖精が目を覚ました様だ…。


 レオが咥えて来た時には妖精には蜘蛛の巣が付いていた…一応、噛み傷は無かったから、毒は受けて無いだろうが…万が一の事もあるから心配だったのだ。


「お嬢さん、大丈夫ですか?」


 完全に目が覚め周囲を確認している妖精に、僕は優しく声を掛ける。

 すると…すぐに、こちらに気が付いて返事をしてくれた。


「あ…はい、貴方あなたが私を助けてくれたんですか?」

「確かに僕は君を保護したけど、助けてはいない…。

 君は、気を失う前は、どんな状態だったんだい?」


 そう…僕は、あえて遠回しに聞いた。


 何故なら、襲っていたのが蜘蛛で、レオが助けたのか…レオが襲ったのか分からなかったからだ。


「えっと…最後の記憶は、大きな蜘蛛に襲われてる寸前、もっと大きな影に食べられ…あれ?何で私、生きてるの?」


 あぁ…なるほど、これで謎が解けた。

 つまり、蜘蛛に襲われて危機一髪になっていた所を、レオが咥えて助けた訳だ。

 だけど、助けられた妖精にしてみれば、恐怖に継ぐ恐怖と言った所か…それで気を失った訳だ…。


「えっと…お嬢さん、君を助けたのは僕の仲間のレオなんだけど…どうやら助ける時に君に怖い思いをさせてしまったみたいなんだ…許して欲しい。」

「いえ…そのお陰で助かったのなら、我慢します。」

「あ、ありがとう…。」


 許すのではなく、我慢なのか…助けて貰った癖に、図々しい…とは思う物の、助けてと言われた訳じゃないから、こればっかりは仕方がないのかもしれない。

 とは言え、助かった事に関しては感謝をしている様だし、プリンの様子も普段に比べて、微妙に可笑しい…。

 ならば、ここは変なトラブルになる前に、さっさと別れてしまった方が良いだろう…。

 そうと決まれば、僕はすぐに実行に移す。


「何はともあれ、無事で良かった…僕達は用事があるので、これで失礼させて貰うよ。

 君も気を付けて帰るんだよ?」


 僕はそう言うと妖精に背を向けて歩き出す。


 妖精が何か言ってるが、あえて聞こえない振りをしてプリンとレオを連れて、バルムングさんがゴーレムを見たと言う湖へと向かった。


◆◇◆◇◆◇◆


「ここか…プリンは何か感じるかい?」


 僕は周囲に意識を巡らせるが何も感じないので、プリンに確認をする。

 当然ながら、レオも感知を働かせてる様だが、反応は無いみたいだ…。


「いえ…私は特に何も感じません…ご主人様もですか?」

「あぁ…僕も何も感じない…すでに居なくなったって事かな?」


 そこまで台詞を言った時、遠くの方から強い力を感じる。

 魔王化した時の僕と同等…否、どちらかと言うと、僕よりも強い力を感じる…。


「プリン、レオ、緊急警戒態勢ッ!!」


 僕は慌てて声を掛ける…だが、それよりも先に、プリンは既に迎撃態勢を取っている。

 やはり、僕よりもプリンの方が危機感知能力は上なのかもしれない。

 そして…僕の指示を受け、レオは僕の側まで走ってきた。 


「ガウッ!ガウッ!」

「レオ、武装化アームドッ!」


 僕の命令を受けてレオのボディーが分離して僕の体へと次々に装着されていく。

 そう、コレがレオの本来の姿…生きてる鎧、僕の思考を受けて力を増加させるパワードスーツなのだ。

 まぁ、今回が実戦投入なんで実際の性能がどうなっているのか疑問だが、こちらに向かってくる反応の敵を相手にするには、十分、有効な装備だと思う。


 しかし…こんな早さで近付いてくる物の正体とは、いったい何なんだろう…。

 悪い予感と言うのは、嫌になるくらい良く当たる…。

 それなのに、僕は嫌な予感をビシビシと感じていたのだった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る