78ページ目…木こり

『ザシュ!ザシュ!ギギギギギィィィィ…バタンッ!!』


 今、僕達はメルトの町の南…森に来ている。

 と言うのも、ラオンさんに言われた様に材木を確保しに来ているのだ。


 そして、冒頭の音…僕が木を闘気剣オーラブレードで切り倒したのだ。


「プリン、頼む!」


 これで何度目か忘れたがプリンに合図をする。


「はい、ご主人様!〖魔法:石の刃ストーンエッジ〗!」


 そして…僕の合図で、プリンの魔法が木の枝を綺麗に切り落としていく。


『シュパ、シュパ、シュパッ!』


「では、クズハさん…枝を集めて置いてくださいね。」


 魔法で枝打ちをしたプリンがクズハに指示を出す。


「り、了解です。」


 うん、みんなの連携が上手くいってるみたいだ。

 まず、僕が木を斬り倒す、次にプリンが枝打ちをする、次にクズハが枝を集める。

 そして、最後に…再び、僕が倒した木を無限庫インベントリに入れる。


 このサイクルが家を修理する為の材木集めの手順となっている。


 ちなみに、クズハの集めた枝は、一ヶ所に集められている…後でまとめて無限庫に入れる為だ。

 何に使うのかって?薪に使うんですよ。

 もっとも、〖魔法:模型創造モデリング〗を使えば、薪以外にも仕えるのは確認済みなんだけど…ね。


 そう考えると、モデリングの魔法を使って商売をするのも面白いかもしれない。

 幸いにも手に入れた家には庭もある…小さい小屋でも建てれば、立派な…立派じゃないかもしれないが工房だって出来るだろう…。


「ご主人様、魔力が残り僅かなので、補充良いですか?」

「あぁ、構わないよ。」


 僕はそう言うと、左手をプリンに向ける。

 プリンの〖スキル:魔力強奪マナ・ドレイン〗は、対象に触れないと吸収出来ない。

 つまり、左手から吸収してくれと言う意思表示なのだ。


「それでは、ご主人様…いただきますね。」


 そう言うと、プリンは僕に近付き、そっと触れる。


『ちゅ~~~♪ポンッ!』


 ある程度の予想はしていたが…プリンがキスをしてきた。

 もっとも、体力が減らなかった所を見ると強奪の接吻ドレイン・キッスではなく魔力強奪マナ・ドレインの様だ。


「えっと…なんでキスして魔力を回収したのかな?」


 だいたいの予想は付く物の、一応、念の為に聞いてみる。


「だって…がキスして魔力を貰うのに、妻である私がご主人様の手からなんてありえませんわ!」


 そう…この前、ブラウニーが僕から魔力を貰う際に、キスをして魔力を貰った事に対して、ヤキモチを焼いているのだ。

 とは言え、プリンとブラウニーのアリスとの仲は決して悪い訳ではない。

 ヤキモチの部分が大半を占めてるとは言え、単にキス出来る口実が欲しいだけの様だ。


 そんな事を考えながら、僕は再び木を斬り倒した。


◆◇◆◇◆◇◆


 その後、木を10本近く斬り倒し僕達は撤収する事となった。


「世界と世界を繋ぐ門、我が意志持ちて彼の地へ門を開け!〖魔法:空間転移ゲート〗!」


 すると、僕の目の前に魔方陣が現れ…そして空間が歪む。

 ちなみに、先程の詠唱はデタラメ…それもそのはず、僕は詠唱を知らないのだから…。

 それとなく格好良い感じの詠唱擬きを唱え『無詠唱』でゲートを発動させたのだ。


「みんな、帰るよ~!」


 と声を掛けると真っ先に門を潜ったヤツが居た。


「クスクスクス、まったくローラさんは元気ですね。」


 そう、今まで伐採作業に加わらず、森の中を走り回っていたローラが、我先にとゲートを潜ったのだ。

 そして…クズハ、僕&プリンの順番で家へと戻ってきた。


「お帰りなさいませ、ご主人様。

 それで、材木の確保…どうなりましたか?」


 と、僕の姿を確認したアリスが聞いてくる。


「あぁ、十分確保出来たと思うよ。」


 僕はそう言うと庭に行き、森で採取した木を山積みにしていく。


『ドカッ!ドカッ!ドカッ!』


 これで、家の修理はすぐに済むだろう…そんな風に考えていると、その考えが甘かった事を知った。


「こんなに沢山…ご主人様、ありがとうございます!

 あとは暫く乾燥させて…それから修理しますね。」


 と、アリスが言ってきたのだ。

 そう言えば…昔、じぃちゃんが木材を使う時は乾燥させないと反りが入るから、乾燥させた木を使わないとダメだと言っていた事を思い出した。

 しっかし…改めて思うと、僕のじぃちゃんって…本当に色々な事教えてくれたよな…。


「御主人様、どうかしました?」


 いかんいかん、少し考え事が長かったみたいで、心配されてしまった。


「いや、何でもない…ちょっと昔の事を思い出していただけだよ。」


 僕はそう言うと、アリスの頭を撫でてから、家の中に入ったのだった…。

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