9ページ目…レベルアップ

『ガッガッガッ!』


 と、鈍い音が何度も続いた後、大きなねずみが動かなくなった。

 それから数秒の後、機械的な音声が脳内に響いた。


【経験値3を獲得した。】


 初めての戦闘と言う事もあり、半ばパニックになってしまい持っていた石を全部投げ付けると言う痛恨のミスを犯した物の、動かなくなった鼠…それから経験値を入手を告げるアナウンスにより勝利した事が分かった。


 そして…僕はその場に座り込んだ…。

 と言うよりも、安堵した事により張り詰めた緊張が解けて腰が抜けたと言う方が正解だったりする。

 なので、すぐに立ち上がる事が出来ないのだが、先ほど倒したばかりの鼠を見ていた。

 すると、鼠の死骸は黒い霧になる様に霧散して消滅きえ、そこに小さなコインみたいな物を見付けた。

 暫くして、身体に力が入るのを確認した僕は、鼠の死骸があった場所へと移動する。


 やはり、見間違いなどではなくコインの様だ。

 ゲームなどでは敵を倒したらお金を入手出来たりするのだが、現実に起こる事に驚きを隠せない物の、不思議に思いつつもそのコインを拾い上げた。


【それは賤貨せんかですね。】

【賤貨とは、この世界のお金で…あまり言いたくはないのですが、一番価値の低い硬貨ですね。】


 なるほど…さっきの鼠を倒したから、経験値とお金が手に入ったと言う事か…。

 そう言えば…先生、ステータス欄にレベルって項目あるんですが、ゲームとかだと経験値とかでレベルが上がるみたいですが、この世界でもそうなんですか?


【ゲーム?えっと…あなたの言うゲームがどんな物かは分かりかねますが、この世界では敵を倒す事によりレベルが上がりますよ?】


 それはつまり…一定レベルの経験値を手に入れたらレベルが上がると言う事で合ってますか?


【はい、その認識で合ってると思います。】

【ですが、何事にも順番と言う物があります。】

【当たり前の話ですが、いきなり強い敵と戦っても、レベルが足りない…力が足りない等の原因で、死ぬだけですので注意が必要です。】


 まぁ、言われなくても…と、思いますが、確かにそうですね。


【はい、何事も、コツコツと…です。】


 なるほど…よく分かりました。

 それと…先程倒した鼠が消滅えてしまったんですが…何でですか?


【仕様です。】


 いやいやいや、普通、いきなり死体が消滅えたら変でしょ?


【それでも仕様です…誰が何と言おうが仕様です。】


 そ、そっか…仕様ね、仕様なら仕方がないですよね…。


 これは説得は無理だな…と、僕は冷や汗をかきながら無理矢理そう言う物なんだ…と、納得する事に決めた。

 まぁ、ゲームなどでは良くある話なので納得しやすかったのだろう。


 そんなやり取りをしたお陰か、先程よりもしっかりと動ける様になるほど回復したので、近くにある石を回収しながら、再び先に進む事にしたのだった…。


◆◇◆◇◆◇◆


【経験値4を獲得した。】

【レベルが上がった。】


 おぉ~!初のレベルアップ…これで少しは強くなったはずだ。

 最初の戦闘から、何匹目かの大きな鼠を倒した事により、レベルアップに必要な経験値が貯まった様で、レベルアップのアナウンスが流れた。


 2階に上がり、最初の鼠を倒してから、はや約30分は経過しただろうか?

 やっと、3階に上る階段を見付ける事も無事に出来た。


 それと、ココまで来るのに、僕が倒した鼠は5匹は超えているはずだ。

 そして、先ほどの鼠を倒した所、レベルが上がった…これから3階へ上がる所だと考えると僥倖だと言えよう。

 何故なら、この手の塔は上の階に上がれば上がるほど、強い敵が出ると言うのがお約束なのだから…。

 僕は落ちている賤貨を回収して、3階に上がる事にした。


 ◆◇◆◇◆◇◆


 3階に上がると壁の一部が崩れており、その一部から外の光が入り込んで薄暗い塔の中が照らしているのが分かる。

 1階から2階に上がった時、いきなり鼠との遭遇エンカウント戦闘バトルに発展した為、今度は慎重に部屋の中を窺う様に見渡した。


 出入り口、今僕が居る階段のみの様で部屋数は1…ただし、部屋と言ったが、かなり広めの部屋である。

 そして…入り込んでいる光の向こうには、宝箱らしき物を見付けた。

 ただし…その宝箱の前に、まるで宝箱を守るかの様に先ほど倒した鼠より、さらに巨大で角の生えた鼠がいたのだった…。

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