第59話 神滅の咆哮
「ティア…。あとのことは君に任せるよ」
「承知した。かたじけない主殿…」
そう答えたティアは結界に閉じ込められている魔物を見下ろしている。
「ひっ!!」
魔物が短い悲鳴を上げる。本来のエルダーリッチはS級上位。かなり高位の魔物である。とは言えグレイトドラゴンよりは格下の存在だ。現在のティアを前にしてはその格は違い過ぎる。
「悠久の時を生きる我にとってもそなたらに拘束された二百年は長かった。あの時、我が見つけた同胞はドラゴンゾンビにされた…。なぜだ…?なぜそのような非道ができたのだ…?」
ティアの周囲にとんでもない量の魔力が光の粒子となって集まる。圧倒的な魔力は紫の光となって可視化されることが多いがこの魔力は金色を帯びている。通常の魔力ではない…。プレスが持つ
それと共に魔物を閉じ込め地面にあった立方体の結界が宙に浮く。
「あ、あ、あ…?」
魔物の驚愕が止まらない。
集まりつつある強大な魔力はティアの口へと収束される。どうやらブレスを吐くつもりのようだ。
「あー…。こ、これは…。ブレスじゃなくてもはや魔法…?って!!トーマス!サファイア!カダッツとミラもユスティを連れて下がって!!おれの後方に!!これはちょっと危ない!」
ティアが何をしたいのか察知したプレスは急いで皆に伝える。
「き、き、き、き、貴様!こ、こ、こ、このドラゴンの主なのだろう!!わ、わ、わ、我を開放すると言ったであろうが!!!」
遠くから魔物の悲鳴が聞こえてくる。
「少なくともおれは開放してもいいと思っているとは言ったけど、おれの相棒が解放するとは言ってない。それにおれには相棒を束縛する権利がない」
「じ、じ、じ、従魔であろうが!!」
「そんな制約は設けてないんだよ!お前達と一緒にするな!!」
「そ、そ、そ、そんな…」
プレスの言葉に絶望を感じた声が聞こえた。そんな状態でもティアに集まる魔力は止まらない。
「この世界そのものに穴を開けられそうな魔力だ…。皆後ろにいるね?」
そう問いかけるプレスに全員が首をぶんぶんとふりながら頷く。皆ティアに集まる魔力に気おされて声を出せそうにない。
プレスは懐から紙を取り出す。そして右手の人差し指と中指の腹を噛み、流れる血で魔法陣を描く。完成した魔法陣を箱の側面に押し当てそしてプレスが唱えた。
「
木箱の上方が開き一振りの長剣が飛び出す。プレスはその長剣の束を握った。本来漆黒であるその瞳が金色に輝く。
輝く長剣を構えるとプレスの眼前に結界が生まれた。
「これで大丈夫はず…。ティア!」
「うむ。問題ない…。主よ。我にこの者を断罪する機会を与えてくれたことに感謝する。ファウムと言ったか…。そなた達が惨殺した我らの同胞の無念。その無念をいまそなたに返そう。その身に感じるがよい。神を滅するものの力。我が怒りと悲しみを…」
ティアが眼を閉じる。その瞬間、集まっていた金色の光が…ティアを包み込んでいた光が消える。周囲は薄暗いダンジョンの様相である。あるのはプレスの結界と最初に飛ばされたライティングの光のみ。
「い、い、嫌だ!こんな…、こんな…、こんなところでー!!」
魔物の声がむなしく響く。
ティアが金色に輝く目を見開いた…そして唱えられる言葉…。
「
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