第19話 ……y&$いぅ)#9!%おp
次の土曜日。
朝9時に家のインターホンが鳴った。
妹にサプライズを仕掛けるために俺は玄関に行かない。
「おい、千尋。俺は手が離せないから玄関出て」
妹に玄関のドアを開けさせた。
……y&$いぅ)#9!%おp。玄関から訳のわからない言語が聞こえてきた。ゆっくり玄関に向かう。
「おはよう、千秋」
玄関には彩奈と、感極まって立ち尽くしている千尋がいる。
「わざわざありがとう。入ってくれ」
彩奈は家にあがり、
「はじめまして。安西彩奈です。お兄さんのクラスメイトで仕事仲間です。あと、お兄さんの彼女です」
と千尋にハグをした。おい、えらいサービスだな。って、付き合ってる事ばらすのか。
「は・はじめまして、妹の上原千尋です。兄がお世話になってます。え、彼女って?」
「千秋の恋人です。よろしくね」
とりあえず彩奈と千尋を俺の部屋に連れていく。適当に座ってもらいお茶の準備で部屋から出た。千尋、固まってたけど大丈夫か?
飲み物とお菓子も持って部屋に戻ると、何故か彩奈と千尋が並んで座っていた。
「そうだ、千尋はサインほしいんだろ。ペンと書くもの持ってきなよ」
千尋は自分の部屋にすっ飛んで行き、すぐにペンと本を持ってきた。
「え、何この本。彩奈の写真集じゃん。お前いつ買ったの?」
「昔から持ってるよ。お兄ちゃんが知らなかっただけだよ」
妹は写真集に彩奈にサインを貰った。しかも”千尋ちゃんへ”とも入れてもらってた。
その後はもう怒涛の質問攻め。
何時から付き合ってる?知り合ったきっかけ?なんでお兄ちゃんと付き合ったの?とか。主に2人の馴れ初め、そして仕事の事を質問している。
いつまでも話が終わらないので、この辺で切り上げたほうがいいな。
「千尋、これから俺たちは仕事だから終わりにするよ」
「千尋ちゃん、今度時間があえば一緒にお洋服買いに行きましょう」
カリスマ女子高生モデルに服選んでもらうなんて贅沢だな。
千尋は家の外までお見送りをする。俺の時は目もあわさないのに随分と扱いに差がある。お兄ちゃん悲しいな。
そして俺と彩奈は事務所に向かった。
ある仕事の日。
今日はTVドラマのエキストラをしていた。撮影が終わり事務所そばのスタジオで、ボイストレーニングをした後に彩奈と食事をしている。
ちょっと隠れ家的なレストランで席が個室になっている。ここはスペイン料理のお店だ。
「今日も一日お疲れさまでした」
彩奈がジュースのグラスを掲げた。そのグラスに自分のグラスを軽く合わせる。
「彩奈もお疲れさま」
乾杯をした後にピザをつまむ。うん、美味しい。
「このピザ最高に美味しい」
「でしょ、このお店お気に入りなの。どの料理も美味しいから千秋に教えたかった」
柔らかくてジューシーに焼いてある子豚の肉とか、皮がパリパリで美味しい魚介のソテー。あとパエリア。料理名はわからないがどれも美味しい。
「料理も最高に美味しいけど、やっぱり彩奈と2人でくつろぎながら食べるご飯はいいね」
少しはにかんで照れる彩奈は最高に可愛い。こんな顔見られるのは家族か俺くらいだろう。生きててよかった。
食事をしながら学校や仕事の話をする。
「千秋の歌はできたの?」
「うん、さっき聞かせてもらった。軽快なポップスでかっこよかったよ。歌と踊りの練習は次回から始まるって。PCに、メールで曲と歌詞を送ってもらったから、家で練習するよ」
頑張って練習しなきゃ。
そうそう、彩奈にこれを渡したかったんだ。
「彩奈これ」
カバンの中に2つの包み。彩奈に小さな包みを渡す。
「開けてみて」
包みの中には女性用のネックレス。そして男性用は俺の持っている包み。
中のネックレスのペンダントトップには百合の紋章が。
「ほら、海に行ったときにお揃いのタトゥシールしたでしょ。俺たちが付き合い始めた日。百合の紋章が2人の記念だったから買っちゃった。指輪とか見えたらお揃いがばれちゃうから。これだと服の中に入れておけばわからないし」
自分のネックレスを彩奈のネックレスの横に並べてみる。
「……ありがとう」
まって、何故泣きそうなの。
「すごく嬉しくてなんか涙が出てきちゃった」
「喜んでくれてよかった。俺の中でもこの紋章は特別だから。初めてのお揃いだったからね」
ハンカチで涙を拭き、ネックレスを俺に差し出す。
「千秋がつけて」
彩奈の横に移動して首にネックレスをつけてあげる。そしてキス。
「ありがとう千秋。毎日つけるからね。私は千秋に縛られちゃったんだね。だって私は千秋のものだから。嬉しい」
俺の首にも彩奈がネックレスをつけてくれた。
「俺も彩奈に縛られた。俺は彩奈のもの。大好きだ。ずっとずっと愛してる」
彩奈がキスしてくれた。
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