13日目 初校

「一応できました。こんなんで……」

「うん、チェックしておきます。その間、通常の仕事を進めておいてね」

「はい……」


 見たことも聞いたこともない魔術の仕組みを紹介する提案書の一角のページの下書きを何とか形にし、コタンは上司のアムラトへそれを提出した。内容はほぼ想像だった。誰もその仕組みを知らないのだから仕方がない。

 おそらく自分が今作っているのはあくまでも一例で、ちゃんとしたものはそのうち社内の誰かが作るのだろうとコタンは考えていた。


「うーん、やっぱり各自に任せると結構バラバラになるね……。今日中にまとめないといけないから、もう少し待ってくれる?」

「はい」


 10分くらい待つとチェックは終わった。コタンは今日の日報をまとめながら待っていた。


「ごめん、ちょっと直してほしいところがいろいろある。まず、内容は自分も分からないからこれでいいけど、項目を3つくらいに分けてそれぞれに見出しを付けてくれる? あと、それぞれに図解と絵を付けてわかりやすくしてほしい。機能を紹介するための提案書だからね」

「絵?」


「実際に、どういう風な機能か、目で見てわかったほうがいいでしょ」

「え、でもどういう風に動くか、よくわからないんですが……」


「それは誰も分からないから大丈夫。絵を足していけば、今1ページで終わってるけど、3ページくらいにはなると思うから、ページ内に空白が出ないようにうまく調整してね」

「あの……。絵は誰が書くんでしょう?」


 なぜ3ページにしなければならないのか、ページ内に空白が出るとなぜいけないのかなど疑問は尽きなかったが、コタンはまず最大の疑問を口にした。


「絵を描ける人を今から手配するのは難しいから、コタン君が何とか書いてね。何とか今日中には終わらせたい。時間がないからもう下書きじゃなくて筆で書いてね」

「ええええ」


 普段絵など全く描いたことがないコタンはその後、見たこともない魔法の1機能の効果を表わした図を、気が狂いそうになりながら書いた。文章の間違いを修正する指示も反映して、何とか完成させたころには真夜中になっていた。


「じゃあ後はこっちでまとめておくから、今日はお疲れ様でした。何とか提案書は完成しそうだよ」

「お疲れ様でした……」


 普段は夕方6時に会社を出ているのに、今日は6時間もおそくなった。コタンはふらふらと会社を後にして、家路についた。

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