第2話

「他に余に盾突く者はいるか?!

 いるならさっさと出てこい!

 他の者は余に忠誠を示すのだな?」


 誰もでていかないのですね。

 王都に残った貴族士族は、臆病者と卑怯者ばかり。

 もう宮廷は王太子とダニエラの、いえ、コヴェントリー侯爵の好き勝手にやれてしまう、正義も倫理も常識もない悪逆非道の場になってしまったのですね。


「さて、どちらから殺してやろうか?

 元婚約者のヴァルナからか?

 それとも愚かにもヴァルナを庇ったアウロラからか?

 ダニエラは誰から殺して欲しい?」


「そうですわね。

 生意気にヴァルナを庇おうとしたアウロラから処罰するほうが、ヴァルナの苦しみが深くのなるのではありませんか?」


「そうか、そうだな。

 自分を庇ったアウロラが八つ裂きにされるところを見せつけられるほうが、ヴァルナには苦痛だろう。

 おい!

 アウロラから殺すんだ!」


 大声で叫んで止めたいけれど、そんなことをしたら王太子とダニエラを喜ばせてしまうだけで、何の役にも立たない。

 アウロラも必死で泣くのを我慢しています。

 誇り高いケッペル伯爵家の令嬢だけあります。


「ちょっと待ってくださいませ。

 これだけたくさんの方々が見物に集まってくださっているのです。

 ただ四肢を馬につないでで引き千切るだけでは、見物の者も面白くないでしょう。

 反逆を犯した大罪人ですから、屈辱を与えるほうがいいと思いますの。

 そうした方が見せしめになると思いますわ」


「屈辱?

 どうするというのだ?」


「裸にしますの。

 服を奪って、生まれたままの姿で馬に縛り、見物の者に秘所をさらけだして八つ裂きにすれば、とても屈辱を与えられると思いますの」


「フッハハハハハ!

 ハッハハハハハ!

 アッハッハハハハ!

 それはいい。

 それは面白い。

 いいことを思いついてくれた。

 おい!

 アウロラを裸にひんむけ!

 伯爵令嬢の秘所を、卑しい民にも見せてやれ!」


「イヤァァァァァァア!」


 アウロラの悲鳴で私の堪忍袋の緒が切れました。

 我慢に我慢を重ね、父上や母上に迷惑が掛からないように、舌鋒以外の抵抗をしなてきませんでした。

 でも、これほどの残虐非道を、私を庇ってくれたアウロラに与えるというのなら、我慢などできません。


 アウロラが私を庇ってくれた時点で、怒りが限界に近かったのは確かです。

 ダニエラが下劣で愚かなことを口にしなくても、私は怒りに我を忘れていたかもしれません。

 ですが、ダニエラの言葉が私をブチ切れさせたのは間違いのない事実です。


「今まで好き勝手やってくれたな、腐れ外道ども!

 もう許せねぇ。

 封印していた力を開放して、ブチ殺してやるから覚悟しな!」

 

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