第8話 パナリーダム町④
ザスティンはダークエルフの男性に声をかけると、彼はこちらを見て、次にザスティンを見た。顔は動かさず瞳だけをぎょろりと動かしていた。
それはとても気持ちの悪い光景でもある。
しかしザスティンは全然気にしていない。
「ジンザーそれが彼の名前、ダークエルフなんだけど無害な人なの」
「わっしはジンザー、おぬしはピエロトだな」
どうやらジンザーはこちらを鑑定したようだ。
「ああ、ピエロトだ」
ジンザーの顎鬚はもじゃもじゃと生えており、
黒に黒だから、すごい真っ黒なエルフとしか見えなかった。
しかも亭主のはずなのにそのカウンターにはビールが置いてある。
なぜビールだと思ったのかというと、
見た目がビールそのものだった。
黄色の上に白い泡がある。
それがビールなのではないのだろうか?
「異世界転移者はいつも狙われる。気を付けるように」
そう言うと、ビールをごくごくと飲む、
顔の表情には変化はなかった。
ジンザーの後ろには樽が沢山あり、
無くなったビールの残りカスを残しながら、ワインを注ぐという蛮行を働いた。
次の瞬間、ビールのまざったワインを飲み始めたジンザーはにかりと笑い。
「ここはウィングス、酒場ウィングスだ。遊びにこい、大人の遊びを教えてやる」
「は、はは」
ピエロトは唖然と口を開いていた。
大人の遊びということは童貞を卒業できるのか?
いや彼は遊びといった。まさか男のあれが遊びなのか?
色々と脳裏の中に青少年なら抱く妄想が始まっていた。
そこにぱちんと両手をならしたザスティンがいて。
「ジンザーがんばってね、あと変なことは教えないように」
「肝に銘じておこう」
ジンザーがゆったりとそう言うものだから、ピエロトはぷっと苦笑していた。
「じゃ、サーカス団に戻るわよ」
ピエロトとザスティンと護衛のムンとサンの犬のような狼たちは移動を始めるのであった。
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酒場ウィングス→クレイジーサーカス団
――――――――――――――――――
そこには沢山のテーブルがあって、
サーカスをお披露目するステージに沢山の人々が乗っている。
料理は1人で作ったようで、
このサーカス団には1人だけコックがいるようなのだ。
みんなが集まっていく中、
ピエロトは団長に引っ張られて台に登らされた。
テーブルには沢山の豪華な料理が並べられている。
日本では食べたことのない食事が沢山あるので、
ピエロトとしてはぜひとも素早く食べたいと思っていた。
だがそんなことを団長が許すはずもなく、
挨拶とは大事なのだと、
この時のピエロトは痛感していた。
「まず、あいつはジビルと呼ばれている。曲芸師でな、ありえない動きをするんだよ、元々殺人鬼だったんだが、今は更生しているんだ」
ジビルがこっちにやってくる。
20歳の男性で、体つきはごく普通の男性、
しかし上半身裸なのだが、尋常ならざる筋肉、スマートな筋力は、
きっとありえない動きをするのだろう。
「おう、お前だな新人は、しかも団長の道化師役を引き継いでしまうなんてな、お前にはきっと沢山の可能性があるんだろう、よろしくな」
「ジビル、よろしく」
沢山の人々はひたすらご飯をたべるもの、
あとは話をするものに分かれる。
「あいつは、ボスドンで熊のような男だ。猛獣使いであり、ザスティンが調教師で調教できるのが動物関係なら、彼は猛獣系の動物、またはモンスターを使役できる」
ピエロトはごくりと生唾を飲み込みながらそこに到達する。
ボスドンは巨大な肉を骨ごと食っている。
その豪快さに、恐怖を覚えつつも、
「ザスティンから聞いているぞい、ザスティンはああ見えて、寂しがり屋だ。色々と話相手になってくれぞい」
熊みたいなボスドンはとてつもなく親みたいな存在で、
そうか猛獣使いと調教師は同じ部類だから、
色々と2人には繋がりがあるのだろう。
ということは安心できる人なのだ。どちらかというとジビルが怖いが。
あの笑顔で沢山の人を殺してきたのだから。
団長の元へと戻ると、
彼はこちらに囁く。
「あそこにいるのが、パダムだ。彼女はコックで、このサーカス団の生命線だ。食事がもらえなくなる恐怖があるなら挨拶はしておけ」
ピエロトはゆっくりと忍者のように沢山の人々をぬっていく、
そしてそこに到達すると、コックの白い衣服と帽子をかぶった女性の人が笑顔でパダムの作った料理をパダムが食べている。
「美味だ。お、君は新入りだねぇ、残したら殺すから」
「え」
突然の発言、
つまり食事を残したらとんでもない事になるという事らしい。
恐怖で頭が震えそうだ。
「で彼は本当は招待したくなかったのだが、パーティーをやるなら絶対呼べという命令だったのでな、右と左にいる護衛に気を付けたまえ、光剣の傭兵団だ」
でた。謎の光剣の傭兵団、
その人たちは色々な問題を引き起こす傭兵団らしいのだが、
実情は見たことがない、
「さぁ、行け、挨拶くらいしないとな、市長に目をつけられたら怖いぞ」
「は、はい」
どちらかというと両隣の2人が怖いのですが、
男と女が真ん中でおいしそうに食事をしている市長を守っているのだから。
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