第3話 突然の訪問者

(1)


僕は自宅で家族+カンナと夕食をしていた。

どうしてカンナがいるのか?

今起きてきた僕にもわからない。


「どうしてカンナがいるの?」


母さんに訪ねてきた。

母さんが説明する。

まず、家にカンナが遊びに来た。

僕は寝てると言うと帰ろうとしたカンナを母さんが引き留めた。

起きるまで居間でお茶でもいかが?と母さんがいうとカンナは頷いた。

中々起きない僕。食事時だし一緒に夕食でもいかが?と

で、現在に至る。


「それにしても神奈ちゃん随分変わったなぁ。都会に出て変わったかな?」


すでにビールを一缶開けている父さん。


「そんなことないですよ。わたしなんてまだまだ」

「いやあ、見違えるほど可愛くなったよ」

「やだ、そんな恥ずかしい」


まんざらでもない様子のカンナ。


「何しに来たんだよ?」


僕が切り出すと母さんが口を挟む。


「まあまあ、ご飯を食べてからでいいじゃない。それからゆっくり部屋でお話しなさいな。積もる話もあるでしょう」


部屋に!?

唖然とする僕を見て母さんは、不思議そうな顔をする。


「どうしたの?愛莉ちゃんが来たときは普通に部屋で二人きりになるのに」

「そうなんですか?」


母さんが余計な事を言うと、カンナがすかさず聞き返す。


「そうなのよ、毎晩二人でお勉強。愛莉ちゃんはお勉強ができるから」


それを聞いた僕はすかさず時計を見る。

まもなく19時を指し示そうとしていた。

まずい!愛莉が来る頃だ。


「そろそろ来る頃なんじゃない?」


とりあえず飯を片付ける。

ピンポーン。

呼び鈴の音だ。

来た。


「着たみたいね」


そう言って、玄関に向かう母さん。

まずい!どうやってこの場を切り抜ける?


「摩耶さん、こんばんは。お邪魔します」

「いつもいつもありがとうね愛莉ちゃん。あ、今日はちょっとお友達も来てるのよ」


どうしてそうやって余計な事を言うんだ。


「友達?」

「そうそう、小学生の頃のお友達でね」

「私今夜は帰りましょうか?」

「いいのいいの!さあ上がって」


そう言ってリビングに通されると……。


「あ!確か一緒のクラスの!」

「音無さん!?」


驚いた声を上げる愛莉。

そして僕の見る目が冷たい。

食事が喉を通らない。


「ご馳走様!さあ、2人とも部屋に行こか!」


そうやって二人を部屋に押しやる僕。


「ちょ、ちょっと待ってよ」

「なんだよ?まだ食べ終わってない!!」


2人の言うことに耳をふさぐ僕。

部屋に入ると一息ついた。


「どういうこと、説明してよ」

「で、愛莉さんだっけ?二人はどういう関係で?」

「二人とも落ち着こう。まずはカンナの件だけど……」


カンナのことは母さんから聞いた通りの事をただ伝えた。

愛莉は憮然としながらも納得したようんだ。

次はカンナに説明しないと。


「毎晩二人でお勉強してるんだって?こんな時間に?」

「実は……」


カンナに僕と愛莉は付き合ってることを白状した。

愛莉の視線がそうする以外の選択を許さなかった。


「へぇ~付き合ってるんだ。とーやモテるんだな!こんな可愛い子とねえ」

「音無さんは冬夜君とどういう関係なんですか?」

「え?ただの友達だよ?」

「ただの友達がこんな時間に二人で会うんですか?」


2人じゃない……と心の中で訂正した。


「いや、昔のノリでさ。彼女がいたなんて知らなかったしさ。ごめんごめん。誤解を生んだね」


そう言ってカンナは立ち上がる。


「じゃ!邪魔者は帰るわ。とーや、また明日な!」


そう言ってカンナは部屋を出る。


「ちょ、待てよ」


引き留めようとしたが愛莉の視線がそれを許さなかった。


「あら神奈ちゃんもう帰るの」

「ええ、用件は済んだんで」

「せっかくだから一緒に勉強したらいいのに」

「私勉強苦手だし邪魔したらわるいから」

「そう……悪いわね。また寄ってね」

「はい、それではまた」


バタン。

どうやら帰ったようだ。

なんか悪い気がしてきた。

しかし愛莉に睨まれてる今どうしようもない。


「で、どうなの?」

「へ?」

「へ?じゃないでしょ!彼女とはどうなってるのよ」

「言っただろ!ただの友達だって」

「ならいいんだけどさ。なんか彼女寂しそうな顔してたから……」


そう言って不安そうな顔をする愛莉。

そんなとこまで見てたのか。


「大丈夫だろ!さ、やろうぜ」

「う、うん……」


浮かない顔をする愛莉。

今更悩んでも遅いよな。

その日の勉強は二人とも身に入らなかった。


(2)


2,3時間ほどして勉強を終えた。

ちょっと遅くなったかな。


「送ってくるよ」


そう言って家を出る。

送ると言っても2軒隣の家なんだけど。

玄関まで送ると手を振って別れる。

いつもならそうだったのだが……。

服の袖を握って離そうとしない愛莉。


「どうした……」

「……」


何も言わない。

どうしたらいいのやら。

すると、その空気に耐え切れなくなったのか、愛莉のほうから動き出す。

僕は顔を掴まれそして……。

なんと表現していいかわからなかった。

唇に感じるのは柔らかい感触。

ほんの数秒がとても長く感じられた。


「冬夜君の事、好きだから」


そう言うと急いで家の中へと消えていった。

僕は暫く呆然ととしていた。

そして我に返ると家に帰るのであった。

わずか2軒先の帰り道。

にもかかわらず帰り道の事はよく覚えていない。

頭の中が真っ白だった。


(3)


「冬夜。ちょっとそこに座りなさい」


家に帰り部屋に戻る途中で母さんに呼び止められた。

言われた通りリビングのソファーに座る。


「神奈ちゃんのことなんだけど、両親離婚したそうなのよ」


えっ?


「で、神奈ちゃんは母親に引き取られて地元に帰ってきたんだけど。夜遅くまで働いてるそうなのよ」


そんなこと一言も……


「こっちが地元だったとはいえ、もう3年近くいなかったでしょ?もともと友達も少なかったから寂しいのよ」


どうして言わなかったんだ?


「だから暫くの間だけでいいから、もう少し優しくしてあげてね。あ!愛莉ちゃんにも言っておかないとね」


そう言って母さんはスマホに手をやる。


「いいよ、僕が明日直接言うから」

「そう?よろしくね」


そう言うと僕は解放された。

部屋に戻るとベッドに寝そべる。

昔の彼女からは想像もつかないほどの変わりよう。

片親になってグレた。

そういう性格の奴じゃなかったはずだ。

まだ、何か隠してる気がする。

それを打ち明けてくれる日が来るのだろうか?

いつの間にか残っていた愛莉の唇の感覚は忘れていた。

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