第三話「初めてのお使い」
コンビニと呼ぶ店の中、自分はメモに書かれた物を探した。
飲み物、お弁当、お菓子、傷薬、包帯......
書かれていた物を
何回か
値段を計算した。研究所で助手に教えてもらった数学がここで役にたった。
店員が少し驚いた顔をしていたが、どうしてそんな顔をするのか解らなかったので、ひとまず旅免許とお金と呼ばれる紙切れとコインを計算した値段通りにだした。
「......せ、1300円になります」
店員に言われた数字よりも多少多かったので、1300円になるように調整して余った分戻した。
辺りが暗くなったころ、買った商品が入ったビニール袋を持って、サカノさんが待っている公園に戻ってきた。
「お、ユウちゃん。ちゃんとお使いできたかのう?」
自分はビニール袋の中身をサカノさんに見せた。
「フム、ちゃんと頼んだものが揃っておるのう。ひとまず合格といったところじゃな」
その後、自分はおつりとレシートをサカノさんに返した。
「ところで、ユウちゃん。店員さんに言われた金額が、計算よりも少なく感じたことはなかったかい?」
確かに計算よりも安かったので、頷いた。
「それは旅人割引じゃ。ユウちゃんは旅免許を見せたはずじゃ。それによって少お~しだけお得になったのじゃ」
自分は、旅免許についてもう少し聞いてみることにした。
「旅免許を獲得するには条件がいる。まずは家を持たないこと。次に旅する必要のない職についていることじゃ。この二つの条件さえ満たせば、旅免許をとることができる。ただし、未成年の者は保護者がいないと登録できないがのう」
サカノさんの説明を聞きながら、自分の旅免許をじっくりと見てみた。
「ユウちゃんは一人で旅しているみたいじゃが......
その様子だと、どうやら誰かがユウちゃんの分を登録したようじゃな......旅免許は保護者が登録してしまえば、その場に本人がいなくても旅免許が取れてしまうからのう......」
サカノさんはそう言って、少しだけ空の方を見た後、再び話しかけてきた。
「そういえば、ユウちゃん。そのバックの中身を確認してみたらどうじゃ?
解らない物があったらわしに聞きなさい」
自分は、誕生日プレゼントの青いリュックサックの中身を確認するためにいろいろ出してみた。
その間にサカノさんは、自分のお気に入りの冒険小説が入ったバックから小説を
まず取り出したのは水筒だ。振ってみても水の音がしない。どうやら、タケなんとかさんに飲ませた時に全部飲んでしまったらしい。
次に取り出したのはナイフだった。ナイフの使い方は、冒険小説で読んだことがある。道具を作る時にハサミの代わりになったり、料理に包丁代わりに使ったり、もちろん、護身用の武器にもなる。
「ナイフか、確かにいろんな場面で活用できるんじゃが、くれぐれも使い方を間違えないようにのう」
自分はサカノさんの言葉を肝に命じた。
次に出てきたのは金色の四角い物だった。よく解らなかったので、サカノさんに聞いてみた。
「ほお......これはちょうどいい......ちょっと待ってくれんかのう」
そう言ってサカノさんはどこかへ行ってしまった。
気を取り直してリュックの中身を取り出した。
さっき使ったお金の入った財布......ビスケットのような食料......方位を示すコンパス......明かりとなる懐中電灯......そして傷薬と包帯......
その中でも、自分は大きな地図と一枚の写真が気になった。
地図には、いくつかの島が写っていた。冒険小説で見たことがある。これは"日本地図"だ。
その日本地図の南西に、赤ペンで書かれた丸で囲まれた場所があった。そこがどんな場所なのか、自分には解らなかった。
写真には二人の大人が写っていた。一人は綺麗な服を着た女の人が、そして、もう一人の男の人には見覚えがあった。
自分が暮らしていた研究所の博士の助手だった。
「これでよしと。ユウちゃん、こっちに来てみなさい」
サカノさんは箱のような物を持ってきた。中には木材がいくつか入っている。
サカノさんはさっきの金色の四角いものを取り出し、蓋......のような部分を開けた。そして、スイッチのような所をサカノさんが押すと炎が出てきた。サカノさんはそれを木材に火を移し、焚き火にした。
「これはライターじゃ。これがあれば火をつけることができるんじゃ」
これがライター......小説で見たことはあったが、形までは想像できなかった。
「さて、ユウちゃんも遠慮せずにあたりなさい」
自分はサカノさんに言われるままに焚き火にあたった。
「ほう......この場所はカゴシマの街じゃな......ここからひどく遠いのう......」
自分はサカノさんに地図を見せていた。
”ユウ......最後に......一つ......聞いてくれ......カゴシマという街に......僕の......知り合いがいる......これは......君の......誕生日プレゼント......その中の......写真が......僕の......知り合いだ......その人の......ところに......い......くんだ......”
助手が最後に言った言葉を思い出した。
自分はサカノさんに写真を見せ、ある人に、この人に会いに行けと言われたと、サカノさんに伝えた。
「なるほど......ところで、その写真の人のことは知っているかのう?」
自分は首を振った。
「そうか......ひとまずその人に訪ねるしかないのう......」
自分も、その人に会いに行くしかないと思っていたところだ。
会いに行ったとしても、どうなるか解らないけど、とりあえずそこに向かうしかない......
「そういえば、ユウちゃん......あまり聞きにくいが、口を動かさずに心で伝える能力はどうやって手に入れたんじゃ?」
サカノさんに質問された自分は口を動かさずに説明した。
自分はもともと口がきけないこと、その能力の他にも様々な能力を持っていること、そして、研究所で実験体として暮らしていたことも説明してしまった。
「そうか......そういうことだったんじゃな......ユウちゃん、その能力は他人には話さず、危険だと思った時だけ使いなさい。また悪い人に実験されるからのう」
自分は、サカノさんの言葉に再び肝に命じた。
「よし、晩メシを食べて、すぐに寝るとするかのう。明日も色々教えたいことがあるからのう」
自分とサカノさんは、コンビニで買った、おにぎりと呼ばれる食料を食べ始めた。
研究所での食事では味わったことのない味だった。
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