第406話
週一での図書館のバイトを黙々と頑張る。お金も稼げるし、私はこのバイトが大好きだ。
大学生になっても続けたいと思っている大好きな場所で、安息の場所なのに私の頭を悩ます優香ちゃんが私の前に現れた。
「水希ちゃん」
「優香ちゃん…」
「水希ちゃんに会いたくて来ちゃった」
「ごめん、バイト中だから、、」
「うん、分かってる。水希ちゃんの顔を見たかっただけだから。バイト終わるの待っててもいい?」
「バイト終わるの遅いから…」
「そっか…分かった」
突然、優香ちゃんが現れ私は咄嗟に周りを見渡した。もし、芽衣がいたら嫌な思いもするし私が怒られるからだ。
でも、芽衣はおらずホッとした。お姉ちゃんにはガンつけられたけど今は無視をする。
優香ちゃんが私から離れた後、また黙々と本を片付けていく。だけど、お姉ちゃんが私の方向へジリジリと距離を縮めてくるのが怖い。まるでホラー映画のようだ。
そして、私は捕まった。低い声で名前を呼ばれ、私は小動物のように怯える。
「水希、あの子は誰?」
「芽衣の友達…」
「えっ、芽衣ちゃんの友達?」
みんな、優香ちゃんが芽衣の友達だと分かると一気に警戒心を解く。私からしたら芽衣の友達だから悩み、どう対応したらいいのか分からず大変なのに。
「芽衣ちゃんの友達と仲良くなったの?」
「まぁ、、」
「暗い表情ね、どうしたの?」
「別に、何もないよ」
受験勉強で忙しいお姉ちゃんには頼れない。それに勉強の邪魔をしたくなかった。
「お姉ちゃん、手を動かさないと終わらないよ」
「何かあったらちゃんと相談しなさいよ」
「うん、分かった」
お姉ちゃんが仕事に戻り、私はまた作業を開始する。バイト先を優香ちゃんに言わなければよかったと後悔したけど、電話で話をしているとき話の流れでつい言ってしまった。
はぁっとため息を吐き、仕事に集中する。だけど最近、心が休まらない。
そして2時間後、私は10分休憩に入る。ジュースを買いに自販機に向かうと図書館に隣接するカフェに優香ちゃんがおり、飲み物を飲みながら窓から外を見ていた。
その姿が寂しそうで見つめていると優香ちゃんが偶然振り向き私の元へ来た。
「水希ちゃん、休憩?」
「うん。10分だけだけど」
いつも優香ちゃんは私に電話し、LINEを沢山してくる。ふと、もしかしたらと思った。
でも、言葉には出来ず私は優香ちゃんの飲みかけのカップがあるテーブルに一緒に行く。
私は店員さんにホットココアを頼み、優香ちゃんと椅子に座った。
「いいの?」
「ここの自販機、ココアがないんだ」
こうやって面と向かってちゃんと話すのは初めてで、笑顔の優香ちゃんに冷たい態度をとったことに胸が痛くなる。
「ずっとここにいたの?」
「うん…ごめんね、嫌だよね。ずっといられたら」
「お尻痛くならない?この椅子、硬いから」
「へへ。ちょっとだけ、痛いかな」
時間が10分しかないから私達は他愛の無い話をする。でも、普通に話してて楽しかった。
いつも電話やLINEでは質問が多かったし、存在しない彼氏のことを話すのが苦痛でこうやって普通の会話は気が楽で楽しい。
「帰る時、外が暗いから帰り気をつけてね」
「うん、心配してくれてありがとう。水希ちゃんって、やっぱり優しいね」
「そうかな?」
「初めて会った時、最後に手を振ってくれたでしょ。突然話しかけちゃって迷惑かなって思ってたから嬉しかった」
手を振る行為は癖みたいなもので意識してなかったけど、優香ちゃんに嬉しかったと言われ何となく優香ちゃんがどんな子なのかやっと理解できてきた。
「じゃ、そろそろバイトに戻るね」
「うん」
「はい、元気の出る飴玉あげる」
「えっ、ありがとう…嬉しい」
私は優香ちゃんに手を振り、バイトに戻る。そして、初めて自分から優香ちゃんにLINEを送る。心配だから家に着いたらLINEしてと。
きっと、芽衣やさわちんは私の態度に怒るかもしれない。でも、冷たくなんて出来ない。
私の携帯に優香ちゃんからすぐに返答がきて私は微笑む。飛び跳ねてるうさぎが可愛い。
私は一度じっくり面と向かって優香ちゃんと話をしたいと思っている。
芽衣は嫌がるかもしれないけど、見えてなかった部分をちゃんと見たかった。
バイト終わり携帯を確認すると、優香ちゃんから家に着いたよとLINEが来ており、私は可愛いスタンプと返事を送る。
芽衣は優香ちゃんのこと良い子だと言っていた。私も優香ちゃんは良い子だと思う。
だけど、良い子だってことを霞ませてしまう部分を持ち合わせている。そして、どんなに良い子でも一度でも相手に嫌悪感を持たれてしまうと良い部分が見えづらくなる。
優香ちゃんに誰か指摘してあげる人はいなかったのかな。友達とか…。
相談できる友達、怒ってくれる友達、優しくしてくれる友達、支えてくれる友達。
私は友達に対してそんな友達になりたい。私自身が友達に沢山助けられたから。
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