第249話
黙々と本を本棚に戻していき、やっと二階のフロアの番だ。ウキウキしながら二階に行くと、芽衣が真剣に本を読んでいた。
こっそり後ろから覗くとホラーの小説で、、芽衣はホラー映画が大好きってことを思い出したよ。
「芽衣」
「えっ、あっ水希」
「真剣に読んでるね」
「うん。この本ね、生贄として監禁された人が島から脱出するって内容で面白いよ」
「なかなかの内容の本だね…」
「この作家さんの作品好きなんだ」
芽衣はお姉ちゃんと好きな物が似ている。お姉ちゃんの本棚もホラーとサスペンスの小説が陳列している。
洋楽のロックも好きだし、嬉しくないけど芽衣って晴菜さんよりお姉ちゃんに似てるよ。
「芽衣、ゆっくりしててね」
「うん、水希も頑張って」
芽衣と少し話せたことでバイトを頑張ろうという気力が出てきた。それに、真剣にやっていると時間が過ぎるのが早い。
今日はお姉ちゃんにビデオカメラで撮影されたこと以外は何も起きなくてよかった。私は巻き込まれやすい体質で…今日は楽しみの1日にだからこのまま順調に終わって欲しい。
「水希」
「お姉ちゃん、何?」
「晴菜さん、もう帰ったのかな?」
「えっ、知らないよ。晴菜さん、来てたの?」
「二階のフロアにいたの見えたから本を戻しに行くとき挨拶しようと思ったけど、もういなかったから」
「そうなんだ、忙しかったのかな」
晴菜さんが二階にいたなんて気づかなかった。いつ頃なんだろう?私が二階のフロアに本を戻しに行ったとき気づかなかった。
あっ、二階を見ると芽衣が手を振ってきた。二階からだと下の一面を見渡せる。
「あっ、芽衣ちゃん来てたの?」
「うん、この後一緒にご飯食べに行く」
「そっか…そう言うことか」
「何が?」
「何でもない。ほら、仕事しよ」
お姉ちゃんが何かを解決したみたいに、納得し仕事に戻っていった。取り残された私も仕事に戻るけど、心がモヤモヤする。
晴菜さんってワードのせいかな?春が私の心を掻き乱す。春の嵐が小さな台風みたいに私の心を掻き回すよ。
集中!集中してバイトをしなくっちゃ。もう晴菜さんは帰ってるし、会うことはない。
それにインスタの件はもう終わった。mさんは消え…これからは確実に晴菜さんであろうHさんと前と変わらず楽しく交流出来たらいい。
よし、今日のバイトが終わった。お姉ちゃんと職員の人に挨拶をし、入り口の所まで行くと芽衣が携帯を触りながら待っててくれている。
「芽衣」
「あっ、お疲れ様。先輩もお疲れ様です」
「芽衣ちゃん、偉いね。待ってるなんて」
「いえ、好きでやってるので」
私達はお姉ちゃんと別れ、ファミレスに行くため歩き出した。今日はバスで図書館に来たから、芽衣と手を繋げる。
「芽衣、お腹空いたね」
「うん、お腹空いた」
「あっ、そうだ。明日さ、私のバイトが終わったら桜見に行かない?」
「行きたい!」
「良かった。あと、買い物に行きたいから付き合ってくれる?」
「うん」
今月までは芽衣と日曜日にデートしたり、家でまったり過ごすことが出来ない。
だからずっと申し訳なくて、芽衣と繋がっていられる物が欲しいと思っていた。
やっと図書館のバイト代が入り少しだけお財布がほくほくだ。来月にはカフェのバイト代も入るしデート代を貯めることが出来る。
「明日、何か買うの?」
「秘密」
「教えてよー」
「くすぐらないでー」
「教えろー」
「分かったから。芽衣とお揃いのアクセサリーが欲しいなって」
「えっ…私も欲しい!」
良かった、芽衣が喜んでくれた。でも、アクセサリーのお金は互いに出し合おうねって言って引いてくれない。
お揃いの物だから芽衣からも私にプレゼントしたいそうだ。
「水希、私も払うからね」
「どうしても…?」
「当たり前でしょ」
諦めるしかないか。芽衣の気持ちも分かるし。その分、帰りに美味しいスイーツのお店に行って芽衣の胃袋を満たそう。
「指輪とブレスレット…うーん、何がいいかな?」
「ずっと身につけていたいからネックレスがいいけど…二重につけるの変かな?」
「二重で付ける人もいると思うよ。今、芽衣がつけているネックレスに合うやつだったら大丈夫だと思う」
「じゃ、ネックレスがいい」
芽衣が喜んでいる。やっぱりお金って大事だ。芽衣が喜ぶと物が買えるって幸せで、バイト始めて良かった。芽衣を笑顔にできる。
久しぶりの芽衣との外食を楽しみ、芽衣とまたデートできる喜びを噛み締める。芽衣は世界一可愛い。世界で最高の彼女だ。
私の腕の中で笑う芽衣の顔が大好きで、芽衣に優しく出来たか分からないけど、声を我慢する芽衣がエッチで愛おしくて綺麗だった。
芽衣は花で例えると小さなマーガレットだ。華やかで可愛い春の花のマーガレット。
マーガレットは色んな色があり、私を楽しませてくれる。芽衣はピンクのマーガレットのイメージかな。可愛くて、愛でたくなる。
【真実の愛:マーガレットの花言葉】
私はこう見えてもピンクの花が好きだ。可愛くて、目を奪われる。女子力が低いから憧れているのかもしれない。ピンクに惹かれる。
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