第221話
落ち着いてすれば大丈夫。挨拶をした後、注文を聞きオーダーされた物を持っていけば大丈夫。慌てずゆっくりとやれば、、きっと。
「いっ、、らっしゃいませ」
「水希ちゃん、緊張してるね」
「は、、晴菜さん!」
「制服姿似合ってる」
まさか、接客第一号が晴菜さんだなんて、、めちゃくちゃ嬉しい!不安だった気持ちが落ち着いていく。
「晴菜さん、来てくれて嬉しいです!」
「ふふ、注文してもいい?」
「はい!」
晴菜さんに注文された、ミルクティーをそろりそろりとお盆に乗せ持っていく。
飲み物関係は溢さないようにしないと…これは家で練習したほうがいいかもな。なかなか難しいし、ミルクティーが波を打ち怖い。
「お待たせしました」
「水希ちゃん、ありがとう〜」
「では、ごゆっくり」
一度、接客をこなすと少しだけ自信がつく。次に来たお客さんに対しても普通に対応出来たし、晴菜さんのお陰で気持ちが落ち着いている。あとはミスしないよう心掛けだけだ。
バイトって常に自信のない私が唯一自信が持てるよう頑張れる場所でやりがいがある。
2年生になったら更に部活を頑張るつもりだけど、外で働くっていいなって改めて思えた。
実は最近、無謀な欲が出て来ている。私も晴菜さんが通う東條大学に行きたいなって。
公立の大学で学費が安いし、東條大学に入ってより良い就職先に就きたかった。もちろん、やりたい方面が見つかれば変わるかもしれないけど。
筒井君に負けたくない。良い大学に入って良い就職先に就職したら芽衣の横にいてもいいんだって思うことができそうなんだ。
まだ夢とかはないけど、入りたい大学は見つけたよ。図書館で働いて、東條大学の学生や晴菜さんを見るたび憧れが募る。
「晴菜さん、来てくれてありがとうございます」
「接客、カッコよかったよ」
「へへへ」
「バイト、無理はしないでね」
お会計を済ませ、晴菜さんが帰っていく。バイト代が入ったら今度こそ、晴菜さんに美味しい物を奢りたい。
晴菜さんは私が年下だから気を使ってくれる。でも、お世話になりっぱなしは嫌なんだ。少しは恩返しをしたい。
はぁ、、無我夢中だと時間が過ぎるのが早い。バイトの初日が終わり、充実感に包まれながら帰ろうとすると久しぶりに晴菜さんの友達に出会った。
図書館以来かな?水希ちゃんと声を掛けられ、笑顔で手を振られる。
「お久しぶりです」
「久しぶりだね〜。カフェでもバイトしてるの?」
「はい、春休みの間だけ」
「私も今度、カフェに行くね」
フランクに話し掛けてくれる晴菜さんの友達の岩本さんはとても明るい人でお喋りだ。
共通の話題の晴菜さんのことを話してくれるのはいいけど、元彼の話とか聞いて良いのかなって気持ちになる。
ただ、話を聞けば聞くほどクソ野郎だと改めて思ったよ。マジで最低野郎だ。
誰とも付き合ったことのなかった純粋な晴菜さんと強引に付き合い、浮気してマジで殴りたい。講義サボらせて、、家に何度も呼ぶとかあり得ないから。
めちゃくちゃ体が目的じゃん。くそ、、想像しちゃったよ。あー、イライラする。
晴菜さんが自暴自棄になったの仕方ないよ。出来れば止めたかったけど、まだ出会う前だしあいつに出会わなければ晴菜さんはもっと良い人に出会えていたはずだ。
「最近、晴菜明るくなったんだよー」
「そうなんですか?」
「うん、やっと元彼と縁を切れたし水希ちゃん達に会えたのが大きいかな」
こんな私でも少しは役に立てていたのが分かって嬉しい。晴菜さんは笑顔が可愛い人だから笑っていて欲しい。
アイツが目に入る度に暗い顔をするからよっぽど辛かったんだよ。
「ねぇ、水希ちゃんは晴菜の好きな人って知ってる〜?」
「えっ、知らないです」
「そっか、水希ちゃんも知らないか。晴菜、好きな人がいるってハッキリと言わないんだよね。でも、私は恋してると思う」
晴菜さん、好きな人いるの?良い人だったらいいけど、優しい人だから変な男に引っかからないか心配だよ。またクズ野郎じゃないよね…大丈夫かな。
「水希ちゃん…晴菜にまた元彼みたいな人が近づいて来たら助けてあげてね。もう辛そうな晴菜を見たくないの」
「分かりました。必ず守ります」
「水希ちゃんって晴菜のヒーローだよね。よし、今度の合コンでは私が守らないと」
「えっ!合コンなんてダメですよ!」
「分かってる…でも、今回はどうしても断れなかったの」
ダメだって…前、晴菜さんに聞いた話が頭によぎりまた想像してしまった。ダメだ、、絶対にダメだ!晴菜さん、泣いていたんだよ。
「どうしても参加しないとダメなんですか…」
「ゼミでお世話になってる先輩で、、知り合いに晴菜の写真を見せたみたいなの。そしたら、その人が晴菜と話してみたいって言ったみたいで」
「何で…合コンになったんですか?」
「晴菜、2人っきりは嫌そうだったから私が無理やり合コンにしませんかって話の流れを変えたの」
「そうなんですか、、」
凄く嫌だ。でも、私にはどうすることもできない。悔しいな、晴菜さんを何が守るだよ。
全然守れてないじゃん!こんなんじゃ、ただの傍観者だ。海でも神社でも、、私は何もしていない。
「あの、合コン、、いつするんですか?」
「今週の土曜日」
「一応、場所だけ教えてくれませんか。心配なので」
「うん、いいよ。あっ、だったらLINE交換しよう。連絡取りやすいし」
私は岩本さんに場所を聞き、図書館のバイトが終わったら近くまで行くと決めた。何もなかったらそれでいいし。
私はヒーローじゃないけど、大切な人を守りたい。晴菜さんが泣く姿はもう見たくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます