第208話
「水希、水希ー、、水希!」
「あっ、はい」
「こら、部活中にボッーとするな」
「恭子先輩、、すみません」
しまった…久しぶりの部活なのに身が入らず、、ずっとボッーとしてしまう。
昨日、部活終わりの芽衣が電話をくれて幸せな気持ちで眠りについた。でも…また、夢に晴菜さんが出てきた。
夢の中で私は晴菜さんと手を繋いでいて、私は晴菜さんと何をしたいのかな、、お陰で夢のことばかり考えてしまう。
「恭子先輩、私が夢に出てきたことありますか?」
「あるよー」
「どんな夢ですか?」
「水希が犬になって、モモと水希を散歩させている夢」
「どれだけ私は犬扱いなんですか!」
聞く相手を間違えた。恭子先輩は私は柴犬だったよって言うし、柴犬は可愛いけど嬉しくないからね。
はぁ、、この悩ましい夢はどうしたらいいの。夢の意味が分からず、私を苦しめる。
「水希、悩み事でもあるの?」
「頭を叩いてくれませんか、、」
「えっ、水希の頭を叩くの…?」
「思いっきりお願いします」
頭に刺激を与えれば、モヤモヤした気持ちと頭を切り替えられるかもしれない。晴菜さんの夢を見なくなるかもしれないと思い、恭子先輩にお願いした。
(ゴツッ)
「あぅ、、痛いーー」
「だって、水希が思いっきりって言うから」
「絶対、たんこぶ出来た、、」
「ごめん、大丈夫…?」
音も凄かったし、頭がズキズキする。強烈な痛みで頭をさすっていると「水希、どうしたの…?」って先輩が心配してくれた。
夢のことは言いたくない、、恭子先輩にどう相談しようか悩んでいると、芽衣がマネージャーの仕事を頑張っている姿が目に映る。
可愛いな、、あんな可愛い子が私の彼女だと思うと私でいいのかなって思うし、絶対泣かしたらダメだと改めて思う。
もう、夢のことは気にしないようにしよう…きっと、慣れないスキンシップを意識してしまい夢に出てきてしまっただけだ。
「恭子先輩、坂ダッシュしたいです」
「いいけど、、」
「早く行きましょう。久々の部活なので今日はとことん走りたいです」
走って、走って、頭を切り替えよう。きっと今日は大丈夫。芽衣の夢を見れるはずだ。
私は走ることでしか、モヤモヤを消し去る事はできないから走りまくる。
今日は沢山走って体がクタクタだ。でも、体を久しぶりに動かせて気持ちよかった。風を浴びながら走るとスッキリする。
帰りは久々に芽衣と帰れて幸せだったし、少しだけ頭を切り替えられたと思う。
今日は晴菜さんが家庭教師として教えに来る日で隣の部屋でお姉ちゃんと勉強している。
まだ晴菜さんと顔を合わせてないけど、心は落ち着いている。きっと大丈夫だ、大丈夫。
「水希、起きて」
「うぅん、、お姉ちゃん…」
「晴菜さん、下にいるから家まで送って」
「あっ、、終わったの?すぐに用意する」
考え事していたら、いつのまにか寝ていた。でも、夢を見ずにぐっすり眠れてやっと体も休んだ気がする。
「水希、、多分大丈夫だと思うけど、晴菜さんと間違い起こしちゃダメだからね」
「起こす訳ないじゃん…」
「まぁ、そうよね。水希は浮気とか出来るタイプじゃないし」
「出来ないよ、、芽衣が大好きだもん」
私は2人と同時に付き合うとか器用な事はできない。それに、私の心は1つしかないし私の心は芽衣で埋まっている。
揺らぐことはあっても、私が芽衣に振られない限り心が空くことはないよ。
「あっ、そうだ。芽衣ちゃんから聞いていると思うけど気にしちゃだめよ」
「えっ、何を?」
「ほら、昨日芽衣ちゃんに声を掛けてきた男の子のこと。バレンタインの事を謝りに来たみたいだし」
「・・・そうなんだ」
「えっ…あっ、、」
突然聞かされた私の知らなかった事。昨日、芽衣と電話したとき普通だった。今日もいつもと変わらず、普通に会話をした。
ただ、1つ気になったのは昨日の電話が遅かった事だ。きっと、帰ってから先にお風呂に入ったのかなって思っていた。
「あっ、早く下に降りなきゃ。晴菜さんが待ってるね」
「あっ、そうだった!」
「お姉ちゃん、、私は大丈夫だよ。大丈夫だから」
私は言い聞かせるように大丈夫と言った。この《大丈夫》には2つの意味がある。
晴菜さんに対しての大丈夫と芽衣への気持ちに対する大丈夫。起きた事を全て話す必要はない。私だって遠藤さんからの手紙やお菓子の事を芽衣に言わなかった。
芽衣も別に大した事ないと思い、私に言わなかっただけだ。それに、私は風邪が治ったばかりだし…きっと気を使ってくれた。
でも、胸が苦しいな。昨日、一緒に帰れたらこんなにモヤモヤすることはなかったのに。
自業自得の風邪だけど、大風邪を引いてから私の心は弱くなる一方で隙間風が酷い。
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