第201話
今日はお姉ちゃんのバイトの初日。張り切り方が凄い。目をキラキラさせ、一緒に大学の図書館に行くとき何度も急かされた。
自転車漕ぐの早いし、嬉しそうに大学の門を潜り、図書館の裏口ドアから入っていく。
さぁ、私は私の仕事をしなくちゃ。お姉ちゃんは仕事の研修を受けた後、私と同様に本を本棚に返却していく。
今日は晴菜さん来るみたいだけど、いつ来るのかな?ただな、晴菜さんに見られながら仕事するなんて緊張するよ。
あっ、この本面白そう。帰りまでにあったら借りていこうかな。週一でバイトだから、返却も楽だし本を借りるのに丁度いい。
今日はこの後、新しい本を棚卸しするって言われるから忙しくなる。でも、体力を見込まれての採用だから頑張らないと。
黙々と仕事をすると時間が経つのが早い。お姉ちゃんも目をキラキラさせ、楽しそうに仕事をしている。
お姉ちゃんにバイトのこと教えて良かった。モチベーションが上がるって喜んでいたし。
少しは恩返し的なやつできたかな…。
よし、お姉ちゃんに負けないぞ。お金も稼いで、芽衣と美味しい物いっぱい食べたいし。
それにしても、晴菜さん遅いな。今日も、もしかして来れないのかな?
もうすぐ、閉館時間になろうとしている。あっ、館内に音楽が鳴り始めた、、
「はぁ、はぁ、水希ちゃん」
「あっ、晴菜さん」
「ごめん、、遅れちゃった」
「大丈夫ですか?息切れしてる」
「ごめんね、、友達の用事に急に付き合わされて、、遅れちゃった」
用事があったら無理して来なくても良かったのに。申し訳ない気持ちになるよ。
先週、来れなかったの気にして尾を引いているのかな?別に私のバイト姿なんていつでも見れるのに、優しすぎるよ。
「晴菜さん。もう、仕事が終わるので外で待っててくれますか?」
「うん…ごめんね。あっ、友達もやっと追いついたみたい」
「晴菜、走るの早いよー!、、あーっ!」
えっ、何?急に私の顔を見るなり「あーっ!」と言われ驚いてしまう。あっ、お姉ちゃんが声に反応してこっちまで来た。晴菜さんを見つけると嬉しそうにしている。
「ちょっと、晴菜、、ほら!この2人」
「あっ、すみません。晴菜さん、一度戻りますね。終わったら、すぐに行くので」
「うん、待ってる。水希ちゃんのエプロン姿をちゃんと見れたから満足。菜穂ちゃんは今日が初日なんだよね、これから頑張ってね」
「はい、頑張ります!」
私とお姉ちゃんは事務所まで戻り、帰り支度をする。私達が事務所まで戻っていく時、ずっと晴菜さんのお友達が興奮していた。
晴菜さんも驚いていたし、なんだったのかな?どこかで会ったことあるっけ?お姉ちゃんにも反応していたし。
「晴菜さん、お待たせ、、しました」
あれ…晴菜さんが私をジッと見てくる。そして、お姉ちゃんもジッと見て、、ハッとする。
晴菜さんのお友達はずっと「凄いよー」って騒いでるし、私とお姉ちゃんは意味が分からず苦笑いしか出来なかった。
「ねぇ!去年の夏、海に行ったでしょ」
「海ですか…?お姉ちゃん達と行きましたけど、、」
凄い勢いで、私とお姉ちゃんに声を掛けてくる晴菜さんのお友達の圧がすごい。
一体、何なの…?去年は確かに海に行ったけど、何でそんなことを聞いてくるの?
「ほら!やっぱりそうだよ!晴菜、凄いね!まさかこんな偶然があるなんて」
「うん…驚いた」
「あの、、晴菜さんどう言うことですか?」
「水希ちゃん…去年の夏、海で私にお水くれたの覚えてる?」
「水?水、、海、、去年の夏、、あっ!あの時の綺麗なお姉さん!」
「あっ!私も思い出した!あの時の、、大学生って晴菜さんだったんだ」
記憶が蘇ってくる(参照53話)去年の夏にお姉ちゃん達と海に行き、私は晴菜さんにジュースを持ってもらったお礼にミネラルウォーターをあげた。あのとき出会った、黒の水着の綺麗な大学生、、晴菜さんだ。
お姉ちゃんも思い出し驚いている。お互い驚きすぎてポカンとしていると晴菜さんのお友達が「凄い出会いだよ!」って騒いでいる。
私もお姉ちゃんも晴菜さんも忘れていた。結構印象深い出会いだったのに笑っちゃう。
「私ね、菜穂ちゃんが言った私の彼女に手を出すんじゃねぇが印象に凄く残ってて。あの後、晴菜と凄かったねって話したの」
「恥ずかしいです、、///。すみません、あの時は突発的に言ったので」
「菜穂ちゃん、、あの時もナンパから助けてくれたのに忘れてごめんね」
「そんなことないです!私も水希も晴菜さんのこと覚えてなくて、、すみません」
ダメだ、驚きすぎて言葉が出ない。晴菜さんに既視感があったのは当たり前だ。本当に一度、出会っていたんだから。
お姉ちゃんは自分の中で大学生をナンパから助けたのは大したことない事だから忘れていたんだと思う。
私は海水浴に行き、しばらくして芽衣と交際が始まり、それから色々あったから新しい記憶にどんどん奥にやってしまっていた。
凄いな、、あの時の大学生…の晴菜さんとまた出会えるなんて。縁って、、凄いよ。
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