第199話
やっぱり、大学の図書館は凄いよ。大きいし、綺麗だし、本がいっぱいある。
それに、一般の人も本を借りれるから人が沢山いる。みんな真剣に本を読んでいて、華やかな場所で働けることにワクワクする。
「高瀬さん、この本お願いね」
「はい」
仕事の研修が終わり、本の入った代車をゆっくり押し、本を一冊づつ本棚に戻していく。
ラフな服にエプロンを付けて動くから、仕事しやすいし1人だから気持ちも楽だ。
見たことのない本ばかりで、つい本の表紙を見してしまう。タイトルや表紙を見ながらどんな話なんだろうって考えるのが楽しいよ。
晴菜さん、いつ来るのかな…もう大学の授業は終わったのかな?
家庭教師の日以来、LINEをしてないから私はドキドキしながらバイトをしている。
今日は前みたいに普通に話すぞ!って意気込んできた。一応、、恭子先輩と話す時より丁寧口調に話すと決めている。
うーん、、晴菜さん、今日は来ないのかな?もうすぐ閉館時間で私はそろそろ帰る準備をしないといけない。
もう殆ど人がいないし、、あっ、閉館時間を知らせる音楽が流れてきた。用事があったのかもしれない。あとで、晴菜さんにバイト初日が終わりましたってLINEをしよう。
「高瀬さん、お疲れ様。来週もよろしくね」
「はい、お疲れ様です」
疲れたー。外は真っ暗だな。いっぱい動いてお腹が空いたから早く帰らなきゃ。
今にもお腹の音が鳴りそうだよ。私は急いで自転車置き場まで歩いていく。その時、後ろから声を掛けられた。
「水希!」
「えっ、芽衣!何でここにいるの?」
「実はこっそり水希のバイト姿を見にきた」
「こらー、教えてよ。それに、こんな遅くまでいるなんて心配するでしょ」
これは恋人として叱らないとね。芽衣の頭をコツンとグーで叩き、頭を撫でた。
初めてのバイトであり初日で頭も体も疲れていた。でも、芽衣に会えて疲れが吹っ飛ぶ。
芽衣に会えたことが嬉しい。本当は抱きしめたいけど、ここは外だから我慢をした。
「芽衣の家まで送るから、一緒に帰ろう」
「うん」
「はぁ、緊張したよー」
「見てたよ。結構、動くね」
「うん、動きっぱなしだよ」
芽衣にニ階でずっと見ていたよって言われ、照れてしまう。まさか、芽衣に見られていたなんて思わないもん。今日は、ニ階フロアしか本の返却をしてないから気づかなかった。
もし、芽衣を見つけていたら、めちゃくちゃ手を振って仕事中!って怒られそうだ。
「水希、帰り遅いから気をつけてね」
「自転車だし、大丈夫だよ」
「心配なのー」
「私の方が心配だよ。図書館でナンパとかされなかった?」
「されるずないよ。水希、ナンパとかしちゃダメだからねー」
「しないよ。私は芽衣に一途だもん」
私と芽衣は図書館のある大学の裏門から話ながら歩いていく。門を出て、ふと図書館が目に入った時…晴菜さんらしき人を見かけた。
気のせいかな?ここは大学だから晴菜さんと同じ歳の人は沢山いる。だから、きっと気のせいだよね…。
明日は芽衣と1日中一緒に過ごせる。芽衣が気を遣ってくれて家デートだけど、今日一緒に過ごせなかった分まで楽しもうね。
それにテストのご褒美+手作りお菓子も貰えるし明日が楽しみだ。頑張った分だけ幸せが貰えるって最高だよ。
私は芽衣を家に送り、今日はお風呂に入る前にちゃんと晴菜さんにバイト初日が無事に終わりましたとLINEを送った。
あっ、すぐに返信が来た。〈お疲れ様〉〈今日、行けなくてごめんね〉っ書いてあり、やっぱり見間違いだと確信した。
うん、今日は普通に晴菜さんとLINEが出来ている。数回やりとりをしたあと最後に可愛いスタンプを送り私は微笑む。やっと、普通にできたことが嬉しい。
よし、お風呂に入ったら待ちに待った夕ご飯だ。今日は無限に食べれる気がするよ。
「水希、バイトどうだった?」
「疲れたよー、でも、楽しかった」
「いいな、私も図書館でバイトしたかった」
「でも、お姉ちゃんは受験生になるから厳しくない?」
「週一ぐらいだったら平気よ。それに行きたい大学の図書館なんて最高だし」
どうしよ、、教えた方がいいかな…?面接をしてくれた人が実はもう1人バイトを探していると言っていた。それぐらい広い図書館だから足りていないらしい。
でもな、お姉ちゃんと一緒にバイト…うーん、悩む。でも、テキパキ動きそうだよね。
「お姉ちゃん…図書館、、まだ土曜日のバイト募集してるみたいだよ」
「本当!!!明日、電話する!」
お姉ちゃんに勢いよく、肩を掴まれ痛い。何度も「良くぞ教えてくれた!」と殿様風に言われ、お姉ちゃんが食べていたプリンを貰った。食べかけ…気にせず食べるけどね!
うん、美味しい〜。食後のデザートで幸せ。
よし、来週も頑張るぞー。私がバイトで一番若いから動いてもらうって言われてるし、筋力トレーニングにもなるから丁度いい。
多分、お姉ちゃんはバイトに受かるだろうし仕事で負けたくないから頑張らないと。
私が図書館でバイトをできているのは晴菜さんとの縁で、お姉ちゃんの家庭教師に晴菜さんがなったのも神社での縁で。
不思議な縁が私と晴菜さんにはある(お姉ちゃんも含む)。あの時、私は後ろに並んでいた晴菜さんにお茶を渡した。あの時の出会いで縁ができた。
でも、縁って実は前からだったりすることもある。お互い忘れていたり、人の記憶は時が経つと忘れてしまう。
記憶って新しい記憶にどんどん押し出されるから古い記憶が奥に入ってしまう。
縁は不思議だ。人は同じことをする。
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