第169話

「未来ちゃん、待って…さわちんと、ちゃんと話し合った方がいいよ」


「だって、分からず屋なんだもん…」


「さわちん!ちゃんと謝れ」


「うるさい…分かってるよ」



私達は近くのコンビニの駐車場に来ている。お婆ちゃんに先に家に帰って貰い、3人で話し合う事になった。

空気の重い2人に挟まれ、私は邪魔者じゃないかとオロオロする。



「何で今日も水希が未来と一緒にいるの…」


「さわちんと喧嘩したって聞いて、気晴らしに外に誘った」


「水希って…軽いよね、、」


「何でよ!」


「人の彼女と遊ぶな…私は我慢してるのに」



あっ、そうか。今日まで未来ちゃんはお婆ちゃん家に泊まるからさわちんは会うのを我慢していたのか。

でも、それは私もだからね!私は芽衣にもっと会えないよ。まだ、先が長くて寂しい…。


さわちんはヤキモチ焼きすぎる。気持ちは分かるけど、ちょっと怒りすぎだし。

私を目の敵にしすぎなように感じる。何で未来ちゃんを信じないのかな?ちゃんとラブラブみたいなのに。



「未来…何で電話に出てくれなかったの」


「電源切ったから…」


「やっぱり…でも、何で?」


「水希ちゃんのこと悪く言うから…」



くそ、やっぱり私のこと悪く言ってたな。人を下げて相手に取り入るのはよくないぞ!意外と悪い印象与えるからね。プンプンだよ!



「それは、ごめん…でも、昨日、、水希と一緒にいることを嬉しそうに言うから」


「そんなことない…」


「いつもそうじゃん!水希のこと、歌が上手いや走ってる姿がカッコいいとか」


「それは…」


「私が傷付かないと思っていたの?ふざけるなよ!それに…最初は水希を見に来てたって知ってるし」



うぇ、、これは…私はどうしたらいいの?さわちんが私のこと睨むし、、でもさ、結果的に未来ちゃんはさわちんのこと好きになったから問題なくない?

私はどうしようもないよ。それに、私には可愛い彼女がいるって知ってるじゃん。



「水希が好きなの…?」


「爽子、何言ってるの…」


「水希への気持ちが0ではないよね」


「憧れだけだよ」


「本当に?クリスマス…私とのキスを拒んだくせに」


「あれは…」



ちょっと待って…私の思考回路が追いつかない。何で私の名前が出てくるの?絶対に違うって分かってるじゃん。

それに、未来ちゃん…さわちんとのキスを拒んでいたなんて知らなかったけど、あの日の次の日だったから、まだ怖かったと思う。


さんちんは女心が分かってないよ。私も散々言われたけど、ここまで酷くないし。

結局、さわちんは不安なのかな?キスを拒まれ、私を意識し(とばっちり!)未来ちゃんと会えない時間が苦しかった。



「さわちん、未来ちゃんはまだあの時のことが不安なんだよ…」


「分かってるよ…」


「恋の進むスピードは人それぞれなんだから、ちゃんと相手のことも考えないと」


「分かってるよ!」



私や芽衣、さわちんと未来ちゃんは初めての恋だ。愛を育むって言葉にすると恥ずかしいから口に出して言えないけど、愛は2人で育てるものだと思う。

片方が水をどんどんやり過ぎたら、その花は枯れてしまう。適量が大事なんだよ。


でも、16歳はまだ幼く大人になりきれてない年齢で頭では分かってるけど心が追いつかない。だから、暴走してしまう。

強引に未来ちゃんの手を取り、私から離れた所に行こうとした時…私の貸したマフラーが地面に落ちてしまった。



「あっ、マフラーが、、爽子、待って!」


「マフラーなんて後で洗えばいいじゃん」


「爽子、手を離して、、」


「そんなの後でもいいでしょ!」



さわちん酷いよ…マフラーにも未来ちゃんにも。自分しか見えてないし、私も悲しい。

私はマフラーを急いで拾い、未来ちゃんを掴んでいる手を握る。余りの行動にムカついたから、、流石に私も怒るよ。



「水希、何?」


「ちゃんと落ち着いて話しなよ」


「水希は帰って!関係ないでしょ」


「私が未来ちゃんを送るから帰らない」


「はぁ?ふざけないで!」



さわちんは頭に血が昇り過ぎて、このままだと未来ちゃんにまた、、暴走しそうで帰るわけにはいかなかった。

それに、さっきから未来ちゃんの手が私の服を掴んでいる。きっと…怖いんだよ。



「さわちん、未来ちゃんの恋人なのに何も感じないの?怖がってるじゃん」


「あっ…ごめん。ごめん、、」


「爽子、今日は帰って…しばらく会いたくない」



えっ?これって結構ヤバくない…しばらく会いたくないって、、さわちん、めちゃくちゃショックを受けた顔をしている。

それに、それに、、未来ちゃんに腕をギュッと抱きしめられ、これ大丈夫かな…?

でも、未来ちゃんを突き放すこと出来ないし…動けない。



「2人とも…あの、、一度ちゃんと話し合った方がいいよ」


「爽子、帰って、、」


「未来…ごめんね」



えぇ、、さわちん帰っちゃダメだって。未来ちゃんとちゃんと話し合わないと。それに、未来ちゃんを家まで送らないの?

怒り任せに言った私も悪いけど、まさか本当になるとは思わなかった。



「未来ちゃん…いいの?」


「疲れちゃって…」


「そっか、、」



今はさわちんの頭を冷やす時間も必要だし、未来ちゃんの心を落ち着かせる時間が必要なのかもしれない。

私も何度も芽衣と喧嘩をした。でも、仲直りした後ちゃんと愛を強くさせることができたからきっと2人も大丈夫だよね。


だけど、、思い通りにいかないのが恋愛だ。早く芽衣に会いたいよ…癒されたい。

未来ちゃんを送った後、家に帰ると玄関の前にさわちんがいた。勝手にゴングが鳴り、第2ラウンドが始まる。

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