第75話
「芽衣!」
「水希?」
やっぱり、芽衣だった。芽衣のことになると我を忘れ…シャワーを浴びたことを台無しにするほど思いっきり走ってしまう。
額からジワリと汗が流れ、私は心の中でやっちまったー!!!と叫びまくる。
「水希、買い物?」
「うん…」
「どうしたの?」
「何でもないよ…」
家に帰ったら早く顔を洗い、もう一度違う服に着替えたい。汗をかいたままでは芽衣の側に居られない。
大好きな芽衣を見つけ、飼い主を見つけ喜びを爆発させる犬の様にしっぽを振りながら駆け寄ってしまった。
「今日は暑いね、せっかくシャワー浴びたのに汗かいちゃった」
「私の家でシャワー浴びる?」
「えっ…大丈夫///」
「あっ、いや…私も汗をかいたから一緒に」
「あ、、あの///」
「違う!私と交互に…」
ダメだ…言えば言うほど、どんどん言葉の泥沼にはまっていく。言いたいことが上手く言えず、2人して顔を赤くし体温を上昇させる。
暑い…体が熱い。冷たい水を頭からかぶりキンキンに頭を冷やさないと恥ずかしさで死にたくなる。
「夜…お風呂に入っていい?」
「うん!もちろん!」
べ、べ、別に深い意味はないはずだ。汗をかいたからお風呂に入るのは当たり前のことで日常での流れでもある。
私達は【ゆっくり進む】をスローガンにお付き合いをしている。だからノープロブレム。
「アイス!買って来たから食べよう」
「うん」
冷たい物を食べると体が冷え、頭を冷静に出来る。かき氷タイプのアイスキャンディーを買って来てよかった。
早く冷房が効いた部屋でアイスキャンディーを食べ、取り敢えず座禅を組みたい。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「あっ、芽衣ちゃん。いらっしゃい」
「先輩、お邪魔します」
お姉ちゃんが芽衣を見るなり、少しだけ緊張感を醸し出した。
お母さんにアイスを渡し、2人分を持って二階に上がろうとするとお姉ちゃんと目が合い何かを訴えるように睨みつけてくる。
何となくあの目の意味は分かったけど、、奥手の私が進めるはずがない。
だから、問題ないよって心の中で思っていたけど芽衣と横ならびに座りアイスを食べていたら…アイスを持ってない方の手で手を握られドキドキが止まらない。
どうしよう…芽衣からのスキンシップはどうしたらいい?深い意味があるのか、ただのスキンシップなのかが分からない。
一応…握り返したけど、もうすぐアイスキャンディーを食べ終わる。冷たい物を摂取したのに頭と体が冷えず、逆に沸騰しそうだ。
「水希、明日どうする?」
「明日は、、どうしようか…」
「おうちでゆっくりする?」
「そうだね、、」
明日のことを何も考えてなかった…ヤバイ、これじゃ思春期男子丸出しみたいだ。
芽衣に目先のことしか考えてない人間に思われたかもしれない。
家に帰ったら芽衣に甘えたいと思っていたけど、体が石のように固まって動くことすらできない私は本当に仏の石像になっている。
体感では奈良の大仏レベルで、このままだと無の境地まで行けそうだ。
「水希…付き合ってからの初めてのお泊りだから緊張するね」
「うん…」
「私、水希が初めて付き合った人だから・・」
「えっ!!!!!!!!」
「水希?」
いや…違う。芽衣には元彼が居たはずだ。だから、私が初めて付き合った人ではないはず。
キスも、、経験あるって言ってたし、あの時はかなり凹んだ。
「芽衣は、、元彼いたよね?」
「いないよ!」
「だって、、キスの経験あるって」
「あれは…キスというか、、勝手にしたやつだから」
「誰に…?」
相手を知りたくないけど、気になって仕方ない。芽衣からキスした相手は誰なの?
悔しいしくて、羨ましいしくて悲しい気持ちで心がぐちゃぐちゃだ。
「水希…」
「えっ?」
「寝ている水希に…勝手にした」
「嘘!マジで…」
「ごめん…その、、勝手にして」
嬉しすぎて泣きそうだ。それに、芽衣のファーストキスは私だと分かりベッドの上でゴロゴロと悶えたいほど興奮している。
私が寝ている間にキスだなんて可愛い。やる事が可愛すぎて愛おしいを超えて私は棺桶に入り幸せな気持ちのまま永遠の眠りにつきたくなってきた。
「水希…?」
「芽衣!大好き!大事にするから!」
「うん///」
私の中の邪な心が浄化していく。芽衣を絶対に幸せにしなきゃ、大事にしなきゃと芽衣を抱きしめながら私は心に誓った。
《ゆっくり進もう》を必ず実行すると。
「芽衣、キスしていい?」
「うん///」
しばらくはキスまでの関係を楽しもう。急ぐ必要はないし、お互い初めての恋人だ。
キスだけでこんなにドキドキするから、いつかキスに慣れた時に次のステップに進めたらいい。
「眼鏡してるとキスしにくいー」
「バカ…声が大きい」
「だって、本当だもん」
「じゃ、外してあげる…」
これは、芽衣からのもう1回キスしてもいいよって意味だよね。嬉しすぎて今からするキスはさっきより長めのキスになった。
私達は少しずつ進んでいけばいい。焦ってしまうと芽衣を傷つけてしまうかもしれないし私達には丁度いい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます