第2章 ー始まりの恋ー

第64話

みんなの視線が痛い。芽衣の肩を借りて、心配をかけたお姉ちゃん達の元へ来たのはいいけど周りからの視線が痛すぎる。

さわちんと喧嘩をしていきなり倒れた人って思われてるから仕方ないけど、あんまりジロジロと見ないで欲しい。



「水希、もう大丈夫なの?」


「大丈夫。ごめんね、お姉ちゃん」


「急に倒れたからびっくりしたわよ」


「また無理しちゃった」



お姉ちゃんが呆れ顔をしている。でも、芽衣から私が倒れたとき慌てながら私をおんぶして保健室まで運んでくれたのがお姉ちゃんだと聞いて、本気で心配してくれたんだなって知ってるから感謝しなきゃ。



「水希…ごめん」


「さわちん、謝らないでよ」



さわちんは悪くないよ。悪いのはひかるに中途半端な態度を取った私であって、さわちんが怒るのは仕方ない。

それに、怒られたお陰で芽衣と付き合えた。やっと気持ちを伝えることができ、ひかるへの気持ちもはっきり分かった。



「さわちんのお陰で芽衣と付き合えたよ」


「「えっ?」」


「ちょっと!水希、さらっと言ったけど…芽衣ちゃんと付き合ってるの?」


「うん、さっき告白した」


「えぇー!!!」


「お姉ちゃん、声が大きいよ…他の部員に聞こえちゃう」


「水希のせいでしょ!」



だって、改まって芽衣と交際します!って言うのが恥ずかしい。だから、さらっと言いたかった。この方が芽衣も緊張しないと思うし、私も緊張しない。

でも、隣にいる芽衣は私の言葉に目を大きくし驚いている。恥ずかしくなったのか、もじもじしながら私の背中に隠れてしまった。



「水希、良かったね」


「ひかる、ありがとう」



ひかるが笑顔で祝福してくれて嬉しい。でも、ひかるが離れ…時々空を見上げている姿を見たとき胸が痛くなった。

私もよく空を見上げていたから分かるんだ。涙が落ちてこないように、涙が早く乾くように空を見上げ願う。涙が誰にも気づかれませんようにって。


人を好きになるって難しい。両思いになれたら幸せだけど片思いや振られたら、また一から恋をしないといけない。

ただでさえ心の体力を使うのに、また一からなんて息切れを起こし暫くはいいかなって思ってしまう。

体力が回復するまで時間が掛かり、次の恋に行くまでに心を鍛えないといけない。次こそは想いが一つになれたらと願い前に進む。



「芽衣ちゃんを泣かせたら許さないからね」


「お姉ちゃん…分かってるよ」


「芽衣ちゃん、何でも相談してね。水希の姉として恋の先輩として、何かあったら水希を懲らしめるから」


「はい///」



怖すぎる。お姉ちゃんが恭子先輩と見張ってるからね!と息巻いてる。このままだと芽衣が目にゴミが入って泣いたとき誤解されヘッドロックを掛けられそうだ。


ただ…私達の恋を受け入れてくれて感謝をしている。やっぱり同性同士の恋だから偏見の目で見る人もいると思う。

でも、お姉ちゃんはいつもアドバイスをくれ私の背中を押してくれた。


さわちん、、ごめんね。普段クールなさわちんが必死にアシストした恋を花咲かせることは出来なかった。

でも、ひかるだったら大輪の花を咲かせることができると思う。だって、私には勿体ないぐらい優しく可愛くて良い子だ。



「さわちん、ごめんね」


「ちゃんと…芽衣を大切にしてね」


「うん」



ひかるにはさわちんが側に居る。私なんかより最高のナイトだ。ひかると仲良くなるきっかけを作ってくれて感謝してるよ。

だから、頑張るね。未熟な私だけど、芽衣を泣かさないように芽衣とずっと笑えるように努力する。


私さ、鈍感な所があるから気をつけないとすぐにやらかしてしまう。悩みごとがあると無理をしてしまう所も治していかないと芽衣に心配をかけてしまう。



「芽衣、そろそろ帰ろうか」


「うん」


「・・・本当に私と付き合ってくれるの?」


「そんなに心配なの?」


「だって、、」


「水希が好きだよ」


「へへ、私も」



気持ちを言葉にして伝えられるって幸せで、その幸せに対して好きな人の気持ちが返ってくるって最高の幸せだ。

私と芽衣は恋人同士、、やっば…嬉しすぎて気持ちの昂りがやばい。



「芽衣〜」


「ちょっと///」


「何で離れるのー」


「バカ…ここ外だよ」



芽衣を後ろから抱きしめると逃げられてしまった。別に逃げることないのに、外だから恥ずかしいのかな。

でも、いつもやってることだし…恋人同士になると恥ずかしくなるの?


もっと芽衣に触れたかったのに残念。仕方なく手を繋ごうとするとそれも拒否された。

私、、嫌われてる?せっかく付き合えたと思ったのに芽衣との距離が遠い。



「芽衣、何で嫌がるのー?」


「だって…」


「あっ!今度、お泊まりしようね」


「えっ…」



もうすぐ夏休みが終わるから、最後にお泊まりして夜遅くまで一緒いたい。出来れば少しはイチャイチャできたらと思っている。

いっぱいいっぱいハグして、夜は芽衣を抱きしめながら幸せな夢を見たいなって。



「いつかさ、旅行とかも行きたいね〜」


「うん…」


「露天風呂がある部屋に泊まって、のんびりしたいな」


「うん…」


「あっ、でも10月は修学旅行があるから楽しみだね!」


「水希、そろそろ帰ろうよ…」



夢が広がるな、芽衣とこれからやりたい事が沢山ある。沢山遊んでお泊まりして、楽しみすぎてワクワクする。

11月の私の誕生日は芽衣に恋人としてお祝いしてもらえると思うしニヤニヤするよ。


先に歩き出そうとする芽衣の手を握り、ルンルン気分で私も歩く。私は完全に初めての恋に浮かれている。

楽しくて、子供みたいにはしゃぐ私は後で芽衣に怒られた。人前で芽衣に抱きつくの禁止と言われ…悲しすぎる。

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