第40話
足に負担をかけないでするストレッチと筋トレはなかなか難しい。どうしても足に力が入り、その都度心の中でぎゃーと騒いでいる。
でも、ここは我慢してやらないとせっかく付いてきた筋力が落ちてしまう。
とりあえず、さわちんとひかるが来るまでにストレッチを終わらせないと。
(ピーポーン)
えっ、嘘!早くない?まだ、30分前だ。汗をかいているから、一度服を着替えたかったのに早すぎる。
くんくんと体の匂いを嗅ぎ、汗臭くないかチェックする。急いで着替え、髪を整えた。乙女の嗜みまで無くしてはいけない。
「さわちん・ひかる、いらっしゃい」
「お邪魔しますー」
「お邪魔します…あの、これケーキ///」
「マジで!やった!ひかる、ありがとう〜」
「うん///」
ひかるの手作りケーキ!それも、私の好きなチョコレートケーキ!
めちゃくちゃ美味しそうだ。出来れば、ホールごと食べたい。
「ケーキ、切り分けるね!」
「私がしようか?」
「いいの?」
「うん、慣れてるし」
わくわく、わくわく。ひかるが切ったケーキの断面は綺麗で、私は紅茶を入れながら早く食べれる様にお皿を用意する。
ひかるって凄いよ。何で、こんなにお菓子作りが上手なんだろう。
これが女子力の差なのかな。ただ、私が料理が下手なだけなのか。うん、きっと両方だ。私は食べる専門の方が向いている。
「ひかるのケーキ、美味しそうだね」
「水希、ありがとう」
「こら、水希。がっつくな」
「だって〜、早く食べたいもん」
芽衣もこんな感じのケーキを私の誕生日に作ってくれるのかな。もし、そうだったら今から楽しみすぎてよだれが出そうだ。
芽衣の作るお菓子も美味しいし、私はお菓子運が強い。貰えるお菓子は全て美味しいし、こればっかりは女子校に入って良かった。
「では!いただきまーす」
「・・・水希、どう?」
「美味しいー!」
「良かった///」
大好きなチョコレートが口の中に溶けていき、もうね笑顔になっちゃう。
さわちんもケーキを気に入ったらしく、食べるペースが早い。
「ひかるはいい奥さんになりそうだね〜」
「そうかな///?」
「うん、お嫁さんに欲しいー」
「えっ…ありがとう///」
えっ、痛い。何で、さわちんに腕を叩かれたの?さわちんが何か言いたげだったけど黙々とケーキを食べ始めたから分からなかった。
せめて、叩いた理由を説明してほしい。地味に腕がジンジンとする。
一応、これでも怪我人だ。怪我は自分のせいだけど、少しは労ってほしい。
さわちんは怪我人の私に全然優しくない。ひかるはこんなにも優しいのに。
ちょっと照れ臭いけど、ひかるが私の口に付いていたチョコをティッシュで拭いてくれた。
ひかるって…うん、可愛いよね。芽衣と一緒で可愛い女の子って感じで、守りたくなるタイプだ。
髪がロングで、私服もガーリーな感じの服でひかるに似合っている。ひかるって私がなりたかった理想的な女の子かもしれない。
「水希///…そんなに見つめないで」
「ひかるが可愛いなって」
「えっ///」
「水希!紅茶をお代わり!」
「もう飲んだの?じゃ、注いでくるね」
「私が行くよ。水希は足を怪我してるから」
「じゃ、一緒に行こう」
さわちんは横暴だ。私を怪我人として扱ってくれない。ひかるが私に気を使って手伝ってくれて涙が出そうだ。多分出ないけど、、それぐらい嬉しい。
足を怪我していると階段は登りはいいけど下りがキツい。無駄に怪我をしてない足に力を入れてしまい歩きにくい。
手すりに捕まり一歩づつ階段を降り、やっと台所まで着いた。
早く足が治ってほしい。全てにおいて面倒くさくて仕方ない。包帯を巻いていると床が滑りやすいし、スリッパは面倒だし常に足に集中して歩かないといけないから嫌だ。
「私が紅茶入れるね」
「ひかる、ありがとう〜」
ひかるって親に大事に育てられた娘って感じがする。後ろ姿に気品があって、変な感想だけど紅茶を入れる姿がよく似合う。
そういえば、ひかるに誕生日を聞きたかったんだ。いつもお菓子貰っているから、誕生日に何かをあげたいなって思っていた。
「ひかるって誕生日いつ?」
「誕生日?8月だよ」
「えっ、何日?」
「15日」
「もうすぐじゃん!」
「まだ、8月に入ったばかりだからすぐではないよ」
お金ないよ!どうしよう、ひかるにプレゼントを何も買えない。せめて、来月だったらお小遣いの範囲で買えたのに…今の所持金、530円。
お祭りはお金かかる。たこ焼き500円、チョコバナナ300円×2などなど他にも色々買ったし私のお財布の中にあるお金が底ついている。
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