第90話 発生源の正体は――
ヤンがクロウリー率いる
メンバーは遺失叡智の中でも精鋭である陣、頼、凛だ。
「……これは」
フェイは死屍累々といった様相を見せる森の惨状に愕然としていた。
数多くの絡繰兵が融解し、そのまま放置されているのだ。機密保持のために自身を消失させる絡繰兵なのだが、そのいとますら与えられなかったらしい。
絡繰兵ですらこの有様なのだから、
「むう。この惨状……、相手はどのような妖怪変化なのでありましょうな」
融解した絡繰兵を見て陣は気持ち悪いものがこみ上げるのを感じた。陣の武勇は相当な物なのだが、この惨状には耐えられなかったようだ。
「陣隊長、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。隊長の私がこの様ではフェイに申し訳が立たん」
凛が薬を差し出すのだが、陣は手で遮る。
「陣、無理はするな」
「そうですよ。帝と陣隊長あっての遺失叡智部隊です」
フェイと凛が励ます。実験部隊の遺失叡智だが、エリートやベテランを集めた部隊だ。ベテランである陣の存在は大きい。
屋台骨があってこその部隊なのだ。
「しかし、さらに霧が濃くなってきますな……。足元に注意して進みましょう」
哨戒に当たっていた頼がぼやく、小型の宝貝銃と機械式の新型の槌を背に背負っている。近接用の炎剣が通用しなかった時の保険だ。
とはいえ摂氏にして二千度以上をも出せる炎剣をもってしても斬れない金属が存在するのかどうかも疑わしいところだが。
「頼の言う通り、足元にも注意して進むぞ」
フェイが注意を促すと遺失叡智部隊全員が頷いて答える。
「しかし、かなり植物が生い茂っていますな」
「恐らく、龍脈が豊富なのだろうな。シロアリ共は良い選択をしたというわけだ」
頼が森の植物がかなり生い茂っているを見て呟いたのを聞き、フェイが出した結論だ。龍脈は大地のエネルギーであるという定説に沿えば、納得ではある。
「――ッ!」
奥に進むと急に霧が晴れた。フェイ一行の目に見えたのは、燃え盛る拳を持ち、霧が吹き出す妙な衣を纏い、足に車輪を付けたドレッドヘアの紅き絡繰兵だった。
その紅き絡繰兵の前は絡繰兵の残骸が積み重なっている。
「火を噴く拳……。まさか、伝説の仙人、
フェイも知っていた太古の仙人だ。哪吒と呼ばれる仙人は火の宝貝を使い、最終的には周軍に合流したという。
「しかし、哪吒は封印されたはず。確かに超越した仙人ではありましたは、絡繰兵ではありません!」
頼が違うと指摘した。ナタクはどうやら由来不明の仙人であり、妲己や太公望すら超越した仙人なのだという。
殷周戦争の時代にはオートマトンないし
とはいえ、この絡繰兵が身に着けている宝貝は全て哪吒が所有していたもの。
「標的確認――哪吒、起動開始」
絡繰兵――哪吒が拳を構える。
「問答無用というわけか! 散会し、ナタクを迎え撃て!」
哪吒が襲い掛かってくるのを見て、フェイが号令を掛けた。
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