第374話 不審な動き

優希は統二と二葉拓真と共に、俊哉の着せ替えショーを見ているというので、高耶はみなと律音りつとと会う事にした。


別館に向かって歩き出すと、律音がやってくる。


「お疲れ様です師範」

「ああ。今から大丈夫か?」

「はい。では、こちらへ」


律音は高耶に指導を受けるようになったことで、御当主ではなく、師範と呼び変えるようになったのだ。


「歩き方が変わったな」

「師範のご指導のお陰です。以前よりも、気配を容易に変化させることができるので、吹き虫を集めるのも楽になりました」

「役に立っているなら良かった」

「ありがとうございます」


別館、図書室の隣にあるクラブの部屋。


「どうぞ。他のメンバーとはパソコンで繋げています」

「……なるほど。便利な世の中になったな……」


高耶は、どこが現場となっても、日本中どこにでもすぐに足を運び、その場で依頼人や情報提供者と話をする。電話でさえもあまり使わない。直接向き合うのが当然だったのだ。


「テレビ電話やリモートはあまり使われないのですね」

「一度、やった時に逆に余計なものが視えることがあってな」


写真に写ってしまうものというのはある。それと同じで、カメラを通すことで余計に視えてしまう場合があるのだ。それが、依頼人の方にも見えてしまったりするから始末が悪い。結局、現場に即行くことになって、意味がなかったという。


「あ〜……」

『ありますね』

『あります』


同意する声が、開かれていたパソコンから聞こえてきた。


画面の方に回り込むと、すぐに挨拶がくる。


『お疲れ様です。師範』

『画面越しで失礼します。師範』

「ああ。アキとルキだな。三人でやることにしたということか」

「はい。年齢も同じことと、近隣の学校に通っていること。それと、声質の相性で決めました」


律音達の事務所では、音一族の十代から二十代の男女が歌手活動をしている。総勢で三十人。一人一人での活動もあるが、その時々に応じてグループを組み、活動することもある。グループが明確に決められているのではなく、常に人が入れ替わるのだ。


「近い学校なら、二人の学校の生徒も何人か遊びに来るだろう? 大丈夫なのか?」

『寧ろバレたら楽しいなと』

『今ならバレたとしても、師範の指導のお陰で、上手く人を躱せますから』

「うちは、ボディーガードやマネージャーを個々で用意しないので、師範にご指導いただいたことで、その問題もほぼ解決しました」


術者は常人よりも強い。だから、ボディーガードも必要はない。律音達にとって、敵となる相手は妖達だ。


『ところで……最初の師範の話ではありませんが、そちら、多くないですか?』

『リツが来るまでの間に、色々通ったんだけど』

「やっぱり?」


カメラ越しに色々と見えたらしい。律音も分かっていたようだ。


高耶は改めて周りを確認する。


「ん〜……吹き虫を餌に集まっている気はしたが……それだけじゃないな」

「え?」

『多分、師範が来られたことで一気に逃げましたけど、なんだか、様子がおかしかったです』

「どんなふうにだ?」

『こちらに向かって左手の方に、ふらふらっと行ったと思ったら、すごい勢いで戻って来ている? みたいな』

『そうです。逃げる時も、上とか下に逃げていました』

「左……」


そちらにあるのは窓だ。外は校庭。右手側に体育館、左手側に本校舎がある。


「……なにが……っ?」


ゆっくりと見回す。その時、何かが視界に映り込んだ気がした。


「……」


不意にざわりと何かを感じ、校庭のある一点を視る。そこが一瞬だが、歪んで見えた。


「……【黒艶】分かるか?」


呼び出した黒艶にそう問いかけた。黒艶もそこを見て告げる。


《何か封じてあるようだ。術の起点はこの辺りとあちらの建物、それから門の近くと、体育館の辺りだな。だが、力が残っているだけで、本来ならば、社はともかく、石や木くらいはあるはずだが?》

「神木が三本と社があったらしい」

《あった……か。間違いなくそれだな》

「なるほど……感じた違和感はそれか……」

《主が来たことで、多少は時間稼ぎになっているようだ》


高耶の存在によって、封じの力が活性化し、何とか封印が保っているということらしい。


「何が封印されているか……調べる必要があるな」


連盟の方でどこが管理しているものなのか、何を封印しているのかを調べることになった。








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読んでくださりありがとうございます◎

体調の関係もあり少し遅れがちですが

よろしくお願いします!


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