第224話 可愛い
金が悪魔。銀が天使のとなると、分からないことがある。
「これが一緒になっていたんだが、なぜ反発しなかったんだ?」
大和に最初に見せられた写真を見せる。
《どちらも不完全で、半々……奇跡的な一致によるものでしょうか……》
「一般的には銀に見えていたんだが……」
《銀に……これは玻璃のほうが分かるかもしれません》
「
影が出来たと一瞬感じた。しかし、すぐにそれが弾けて消え、ふわりと現れたのは、白い妖精かと見紛うほどのふわふわとした印象の少女。
透けるような長い柔らかそうな白銀の髪がふわりと背中に広がっており、伏し目がちな金の瞳も、長い白銀色のまつ毛で隠されている。
とても人には見えない。お人形さんのような少女だ。服装も、そんな彼女に似合いの淡い黄色いバルーンスカートのワンピースと、ふわふわ印象が更に増している。
病的とまではいかないが、肌も白く、唯一唇の淡い赤だけが生きている色を見せていた。
「っ……反則……ちょっ、こんな美少女は反則じゃね!?」
「なんの反則だよ……」
あまりの美少女っぷりに、俊哉が大混乱していた。だからあまり
《そうです! この可愛さは反則です! これでまた声が可愛らしくてっ》
瑠璃が玻璃を抱き締めて、ここだと褒めまくるのはいつものことだ。高耶相手にはほどほどでやめるが、他の式神相手には五分は続ける。もう慣れてはいるため、珀豪達も適当に『今日も確かに可愛いな』と言ってあとは放置。
愛が強すぎて、それほど同意が得られなくても、瑠璃は一人で暴走するので構わない。
「声って……っ、しゃ、喋ってくれるのか?」
《……こんにち……は……?》
か細い高めの声が響いた途端、俊哉だけでなく勇一や雛柏教授達大人も口を押さえて悶えた。これがあるから、玻璃はあまり声を出さない。
《あ……ご、ごめんなさい……っ》
「っ、い、いい……っ、かわっ、かわいいっ……っ」
「鼻血出すなよ。落ち着け。どうにも、まだ最初の一言は魅了の力が乗るな……」
《ごめんなさい……》
「いや。昔よりはずっと制御できてるから。よく頑張っているな」
これを言ってしまってから、高耶はしまったと思った。嬉しそうに頬を染めてふわりと微笑む玻璃の表情は、それだけで破壊力抜群だった。そこに健気な返事が乗るとどうなるか。
《っ、うん》
「ふぐっ……っ」
「っ……!」
「んっ」
「ぐっ……っ」
「ふうっ……」
大人たちが射抜かれたように胸を押さえた。心臓に負担がかかったかもしれない。
萌えで。
「あ~……玻璃、これ見てくれるか?」
《ん……見る》
高耶は少し離れるべきかと、なるべく端に寄って玻璃を手招いた。一緒に瑠璃がついてくるのはもう当たり前なので気にしない。
玻璃が居ると、途端に瑠璃は残念な美人さんになるので、天使の神秘さが減少してちょうど良くなる。愛娘に一人では何もさせないバカ親か、異常なほどのシスコンにしか見えないのは、本当に残念過ぎる。
とはいえ、高耶は最早慣れたものだ。害はなければ放置で構わない。
画像を見るように、タブレットごと、隣に座らせた玻璃に手渡す。
《……天使と悪魔の鎧……三組……魔術具……守護の鎧》
「守護?」
《そう。天使は悪魔から護り……悪魔は天使を退ける……古いエクソシストの一族の守りだったはず》
玻璃はあちらの、こうした知識が豊富だ。
「一緒に置いてあったのか」
《うん……変わった一族だった……悪魔をも愛していた……だから、他のエクソシスト達から狙われた……その護衛役……だったはず……一部でもあれば、記憶……読み取るよ?》
「そうだな……大和さん。あの時の鎧は、保管をお願いしていましたよね?」
「あ、ああ……す、すぐに持ってこよう」
「ありがとうございます。どれか一つでいいので」
少しフラッとしながらも、いづきは奥の扉の先に消えていった。
いづきが持ってきたのは、腕の部分だ。金色なので、悪魔の方だろう。
「瑠璃が祓ったが、大丈夫そうか?」
《……お姉様が祓ったのは、余分に取り憑いてた分だと……思う》
《余分に?》
《うん……ちゃんと三組揃ってないと……力が拡散して……ダメなの……本来の力が発揮できないから……術式が不完全……だから、逆に呼び寄せちゃう……》
「取り憑かれやすくなる?」
《そう……天使の方も……よくないのを呼んじゃう……》
どちらの鎧も、悪魔に取り憑かれやすくなっているようだった。
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